2017 Fiscal Year Annual Research Report
鉄依存性のネクローシス様細胞死の実行経路を解明する
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17J40226
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久保田 知里 群馬大学, 生体調節研究所 附属生体情報シグナル研究センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2017-04-26 – 2020-03-31
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Keywords | フェロトーシス / 脂質過酸化 / リポキシゲナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
フェロトーシスは、活性酸素種(ROS)の増加に付随した膜脂質の過酸化(Lipid-ROS)の増大によってもたらされる新規細胞死である。我々は、フェロトーシスに関わるROSの一部がオートファジーおよびリソソーム機能に由来することを明らかにしたが、Lipid-ROSの由来や局在は不明である。本研究ではLipid-ROSの動態を解析し、細胞死を起こす直接的な実行機序を明らかにする。 平成29年度は、ヒトがん細胞を使用して薬剤誘導フェロトーシスにおけるLipid-ROSの発現と動態を解析した。まず脂質膜の酸化を検出する蛍光プローブを使用し、Lipid-ROSの動態を経時的に解析した。またLipid-ROS の局在を特定するため、蛍光蛋白質と各オルガネラのマーカー蛋白質の融合蛋白を作製し、フェロトーシス誘導細胞において共局在解析を行った。その結果、Lipid-ROSは初期にゴルジ・エンドソーム領域で発現したのち、周囲のオルガネラへと広がっていく様子が観察された。フェロトーシスを阻害する脂溶性抗酸化剤や鉄キレート剤は脂質過酸化以後では細胞死抑制効果がなく、遊離鉄が引き起こす不飽和脂質のラジカル連鎖反応が全体に拡大することで細胞死に至ることが示唆された。 一方、多価不飽和脂肪酸を酸化する鉄含有酵素リポキシゲナーゼ(LOX)のフェロトーシスへの関与も検討した。LOX阻害剤やsiRNAによるノックダウンは細胞死を阻害し、反対に過剰発現により細胞死が促進した。これらの結果から、がん細胞で発現する一部のLOXが膜中の不飽和脂質の酸化を亢進し、フェロトーシス感受性に寄与していることなどが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脂質過酸化の発現・動態解析、リポキシゲナーゼの解析では、各実験の条件設定や融合蛋白の作成がスムーズに進み、当初予定していた計画に沿って,ほぼ予定通りに研究を進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
フェロトーシスの実行に伴う新たな関連蛋白質の探索と、新しいフェロトーシス誘導薬の開発を進める。当初の研究計画に変更はない。
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