2018 Fiscal Year Research-status Report
Structure and computing efficiency of number-conserving cellular automata
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17K00015
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今井 勝喜 広島大学, 工学研究科, 助教 (20253106)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セルオートマトン / 保存性 / モーション表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物理的な質量保存に対応する性質をモデル化した数-保存的セルオートマトン(NCCA)の粒子移動モデルとしての性質を、その計算能力や計算量的側面から明らかにすることが目的である。1次元の場合にはモーション表現と呼ばれる粒子の移動を元にしたモデルと対応づけられることが知られているが、NCCAの近傍サイズとモーション表現の関係を明らかにするため、階層的モーション表現と呼ぶ新しいモーション表現を定義した。これは、それぞれの粒子の移動を決定するために参照する必要のあるセルの数に関して、適用順序を規定したモーションで表したもので、NCCAの性質をより大局的な粒子移動とより微細で複雑な粒子移動とを階層的に分離して理解することができる。例えば、単純な平行移動はたった一つのセルのみを参照するだけで可能であるが、複雑な粒子移動は多数のセルの粒子の配置に依存する。 今年度はモーション表現と実際の遷移規則の引数パターンとの関係を調べるために、NCCAの遷移関数で値が1になる引数のパターンの集合を詳細に調べた。可能なパターン集合のうちNCCAに対応するものだけに着目すると、パターン集合が、われわれがquadとpairとよぶ、パターンの4つ組みまたは2つ組の集合として表現できることがわかった。さらに近傍サイズnとn-2のNCCAのquadとpairは密接に関係しており、quadのみまたはpairのみで構成されるNCCAに関しては、近傍サイズnとn-2の場合には相互にNCCAを導き出すことができる。この関係を用いて、quadとpairの組合せのみに探索範囲を限定した、新たなNCCA列挙手法を提案した。quadとpairによるNCCAの表現をさらに分析することにより、NCCA自体の性質をより深く調べることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究で、すべての階層的モーション表現を包含するような木構造で表現すると、NCCAの規則を適切に圧縮表現する方法として用いることができることがわかり、逆にその木を構成することでNCCAの規則を列挙することが可能ではないかと予想されいた。また、近傍サイズ n の階層的モーション表現は n-1の場合を包含した再帰的な構造を持っており、その性質を利用することで、 すべてのn-1 までのNCCAの階層的モーション表現が分かっている場合にnの場合を効率的に求められる可能性があることが示唆されていた。 そこで今年度は、値が1のパターン集合の要素間の性質を詳細に調べた。その結果、値が1のパターンをノードとするグラフ表現として、われわれがquadとpairと呼ぶ二種類の部分グラフの集合として表現できることがわかった。すなわち、すべてのパターンの組合わせを考えなくてもquadとpairを構成しうる組合わせのみを調べることで列挙できる可能性がある。これは非常に興味深い知見であり、当初予定を変更しこの表現に関する研究を優先することにした。その結果、われわれは近傍サイズn-2のNCCAのうちquadのみ、またはpairのみで構成されるNCCAから近傍サイズnのNCCAでquadのみ、またはpairのみで構成される場合を求める方法を示し、さらに一般の近傍半径の場合にquadのみ、またはpairのみのNCCAの数を求められることを示した。われわれはこの異なる近傍サイズに関する関係を用いてquadとpairのみを順次探索することでNCCAを列挙する方法を提案した。もしquadと pairとが混在するNCCAの場合の数を求めることができれば、任意の近傍サイズのNCCAを列挙せずにインデクシングできる可能性がある。以上のように当初予定とは異なる方針で研究を遂行したため、「やや遅れている」を選択している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、quadとpairの両方が含まれている場合の組み合わせに対応するNCCAの性質について調べている。まだ、それらの場合に対応するNCCAを重複なく数える方法は見いだせていないが、さらに興味深い知見がこの方針から得られる可能性が高い。そこで、2018年度に引き続いて2019年度も継続し、NCCAを列挙することなくインデクシングする方法を提案したい。さらに当初の方針に準拠した階層的モーション表現と、この新たな表現方式の関係をも明らかにしたい。また、同じく当初の研究目的である2次元NCCAの場合にも階層的モーション表現を考えることができるが、まだその性質は明らかではない。そのとき、1次元におけるquadとpairの考え方を拡張して、2次元NCCAの粒子移動の特徴づ付けを行なえる可能性がある。2019年度はその観点から2次元NCCAも考察したい。
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Causes of Carryover |
1次元保存的セルオートマトンの研究を優先して行うようになり、2次元の保存的セルオートマトンの研究のためのシミュレーションツールの作成に必要なハードウェアを一部2019年度に購入することになったため。
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Research Products
(3 results)