2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00024
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
朝廣 雄一 九州産業大学, 理工学部, 教授 (40304761)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 組合せ最適化 / アルゴリズム / 計算複雑さ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,無向グラフの辺を有向化する問題の一種について主に研究した.具体的には,有向化した際の目標とする出次数の範囲が各頂点ごとに与えられ,その範囲を逸脱した場合にはペナルティが課されるという問題設定において,ペナルティを最小化することを目的とした.課されるペナルティは関数の形で指定されるものとし,凸関数,凹関数,ステップ関数を扱った. 得られた成果の概略について述べる.ペナルティが凸関数で指定される場合には,重み無し一般グラフに対して多項式時間で最適解を得られるようなアルゴリズムを設計できた.一方で,ペナルティが凹関数やステップ関数の場合には,重み無し一般グラフに対してAPX-困難,すなわち多項式時間では最適解を得られないばかりか,かなり良い近似解を得ることも困難であることを示した.ただし,グラフの構造を例えば木や木幅限定グラフに制限した場合には,多項式時間アルゴリズムと固定パラメータアルゴリズムをそれぞれ設計できることも示した.また,重み付きグラフについても同じ問題を検討し,計算困難さとアルゴリズム設計の両面において成果を得た. 以上の研究成果は,査読付き国際学術雑誌 Theoretical Computer Science 誌において公表した.他にもハッピー集合問題に対する研究も行い,査読付き国際学術雑誌 Discrete Applied Mathematics 誌と,同じく査読付き国際学術雑誌 Theoretical Computer Science 誌において,成果を公表した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,研究期間の最終年度(5年目)であり.4年目までの研究活動を引き継ぎ研究を行い,様々な研究成果を順調に得ることができた.研究実績の概要欄に記載の通り,国際学術雑誌への研究成果の公表を順調に行うことができたので,成果としては十分なものを得られたと考えている. しかしながら,新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,研究活動において種々の制限を受けている.例えば出張を制限されているために,共同研究者との議論はオンラインミーティングに頼らざるを得ず,対面での議論よりも不便さを感じている.この要因により,新しい研究課題に取り組みにくい状況にあったと認識している.さらに,学会・研究集会などがオンラインで開催され,部分的に参加することが容易な場合もあるのだが,一方ではオンラインの研究集会に参加することを理由に授業を休講にはしにくいところがあり,特に時差の存在する国際的な研究集会への参加がしにくい.このため最新の研究動向を理解し,それを踏まえた研究活動を行うという点,ならびに初期段階の研究成果を当該分野の研究者に公表し意見を聴取することで,研究の進展を図るという点が若干不十分であったと考えている. 以上のように,国際学術雑誌への研究成果の公表は順調に行えたが,新型コロナウィルスの感染拡大に伴う研究環境の変化にうまく対応できていないと考えている.研究活動の最期のまとめとして,研究集会への(対面またはオンラインでの)参加を今後は積極的に行い,上記の問題点に対して少しでも改善したいと考えており,研究期間の延長を願い出たものである.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,本書類の執筆時点では,新型コロナウィルスの感染拡大が収まったとは言えず,研究活動において色々な制限がかかっている.しかしながら,社会全体の雰囲気として,ウィズコロナへ進んでいるように感じられる.ウィズコロナを踏まえて,いかにして研究活動を進めるべきかは,まだ試行錯誤の段階である.特に,急速に進んだオンライン上での活動において,機器の使い方などのリテラシー的な知識・技術については,ある程度のことを身に付けられたとは思うが,まだスムーズにいかないところもあり,今後も努力が必要であろう.また,機器の使い方などとは別に,オンラインで共同研究を進めるためのうまい方策については,まだ確立できておらず,その点が今後の課題かと思われる.鋭意,努力したい. 新型コロナウィルスの感染拡大への対応とは別に,研究の内容としては, マスコミに取り上げられるようなインパクトがありセンセーショナルな研究成果を目指すのではなく,研究活動に対して真摯に取り組み,学術の発展に微力ながら貢献するという意識でいることを心掛けたい.最終的には国際会議や国際学術雑誌で公表できるような質の高い研究成果をあげることが目標ではある.しかしながら,そう一足飛びにはいかないので,その前段階として国内の研究発表の場での,本研究課題による初期段階の成果の公表を心掛けたい.それにより他者からの意見や評価を取り入れることが出来ると思われるので,それらを踏まえて研究内容の質の向上を図りたい.具体的には,LAシンポジウム,情報処理学会アルゴリズム研究会,電子情報通信学会コンピューテーション研究会をターゲットとして研究成果の公表を行いたいのであるが,新型コロナウィルスの感染拡大状況を考慮する必要がある.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,研究成果を公表するための学会等へ参加するための出張と,共同研究者との打ち合わせのための出張など,主に移動を伴う活動が制限されている.そのため,それらのために支出する予定だった分の額が残った.新型コロナウィルスの感染状況が好転したら,研究成果の公表や研究動向の調査,共同研究者との打ち合わせを実施するために,次年度使用額として残すこととした.
|