2017 Fiscal Year Research-status Report
格子問題を解く量子アルゴリズムの耐量子暗号と量子人工知能への応用
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17K00027
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
河野 泰人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, 主任研究員 (40396180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関川 浩 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00396178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 耐量子暗号 / 量子人工知能 / 量子アルゴリズム / 量子ニューラルネットワーク / LWE暗号 / 格子暗号 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題1「格子暗号の解読方法の研究」、および研究課題2「DNN の学習に関する研究」それぞれについて、2017年度(平成29年度)の研究進捗は以下のとおりだった。 研究課題1に関しては、2017年5月29日に立命館大学朱雀キャンパスで開催された第36回量子情報技術研究会(電子情報通信学会)にて、「格子問題を解く量子アルゴリズムについて」とのタイトルで発表を行い、特定の条件下で格子問題を効率的に解く量子アルゴリズムを示した上で、量子コンピュータを用いても解読不可能とされる格子暗号の安全性は、実際には疑わしいと結論した。2017年10月6日に開催された量子ICTフォーラムでも、同様の内容を発表した。この量子アルゴリズムを代表的な格子暗号として知られるLWE暗号の解読に応用し、特定の条件下でLWE暗号を解読する量子アルゴリズムを開発した。この結果を、2017年11月16日に埼玉大学で開催された第37回量子情報技術研究会(電子情報通信学会)にて、「格子暗号の安全性について」というタイトルで発表した。また、開発した量子アルゴリズムを、2017年10月23日に国内で特許出願した。その後、国際特許出願のため、国内特許の拡充と古典コンピュータを用いた実験データの取得を行った。 研究課題2に関して、研究課題1で提案した量子アルゴリズムを、科研費を用いて購入したGPU計算機(DELL PowerEdge R730)上に実装し、実験データを取得した。また、この量子アルゴリズムを、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で開発されたQNN上(量子ニューラルネットワーク)上で実装するための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、研究課題1に関して、2017年度(平成29年度)と2018年度(平成30年度)に特定条件下での格子暗号の解読を目標としていた。2017年度の主な研究実績は「特定条件下での格子問題を解く量子アルゴリズムの発表」、「その量子アルゴリズムのLWE暗号解読への応用」、および「解読アルゴリズムに関する特許の出願」の3点であり、おおむね目標を達成したと考えられる。 研究計画では、研究課題2に関して、2017年度後半から研究を開始し、2018年度末までに量子コンピュータを用いたDNN学習の高速化に関する理論提案を行うことを目標としていた。2017年度の主な研究実績は「古典コンピュータ上での量子アルゴリズムのシミュレーション実装」である。研究計画で目標としていた理論提案とは異なるが、理論提案後に行う予定だったシミュレーションの実装を、着想を得るために前倒しで実施したと考えれば、おおむね目標どおりに進捗したと思ってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1に関して、2018年度(平成30年度)の目標は「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムの国際特許出願」「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムに関する論文の国際会議への投稿」の2点である。「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムの国際特許出願」に関しては、すでに出願済みの国内特許を拡充し、2018年10月23日までに出願を終えるよう準備中である。また、「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムに関する論文の国際会議への投稿」に関しては、2018年度後半に投稿する予定で準備をしている。これらの目標を達成するため、2018年度前半に、提案量子アルゴリズムを利用して、TU Darmstadt Lattice Challenge(https://www.latticechallenge.org/)の未解決問題に挑戦する。TU Darmstadt Lattice Challengeは格子暗号の安全性評価のために問題群を提供しており、このサイトで公表されている未解決問題が解けることは、解読の新手法として認められる近道となるからである。 研究課題2に関して、2018年度の目標は「研究課題1で提案した量子アルゴリズムのQNN(量子ニューラルネットワーク)上での実装準備」である。研究課題2に関して、研究計画では理論研究後に実装を行う予定だったが、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で開発されたQNNが使える環境が整ってきたため、研究計画で2019年度(平成31年度)に予定していた実装を前倒しで実施する。ただし、2018年度はあくまで実装のための準備とし、基礎データの取得を目標とする。これは、QNNの特性に関して不明な点が多く、どの程度の性能が出るのかわからないからである。
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Research Products
(4 results)