2018 Fiscal Year Research-status Report
格子問題を解く量子アルゴリズムの耐量子暗号と量子人工知能への応用
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17K00027
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
河野 泰人 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, メディア情報研究部, 主任研究員 (40396180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関川 浩 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00396178)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 量子コンピュータ / 量子アルゴリズム / 量子人工知能 / ニューラルネットワーク / 深層学習 / 耐量子暗号 / 格子暗号 / LWE暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題1「格子暗号の解読方法の研究」、および研究課題2「DNNの学習に関する研究」それぞれについて、2018年度(平成30年度)の研究進捗は以下の通りだった。 研究課題1に関しては、2017年度に発表した格子問題を解く量子アルゴリズムとは別の、量子コンピュータ上で実行しやすい量子アルゴリズムを新たに開発し、2019年3月15日に国内で特許出願した。また、この特許と、2017年度に出願済みの国内特許を合わせて、2018年10月23日にアメリカに国際特許出願した。並行して、格子暗号に関するベンチマーク問題(TU Darmstadt Lattice Challenge, https://www.latticechallenge.org/)の解決済み問題に対して、上記量子アルゴリズムのシミュレーション実験を行い、正しい答えが得られることを確認した。この研究成果を、2019年3月18-20日に内閣府、科学技術振興機構(JST)、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)、およびNTTが主催してNTT厚木研究開発センタで開催された国際会議Coherent Network Computing(CNC2019)で発表した。 研究課題2に関しては、研究課題1で開発した量子アルゴリズムの深層ニューラルネットワークの教師あり学習に応用するアルゴリズムを開発し、2018年11月に東京大学駒場リサーチキャンパスで開催された第39回量子情報技術研究会(QIT39)で発表した。また、本学習アルゴリズムを、前述の国内特許と国際特許の一部として出願した。さらに、研究課題1で開発した量子アルゴリズムを、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で開発されたQNN(量子ニューラルネットワーク)上に実装し、簡単な格子問題を解くことに成功した(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度(平成29年度)に提出した実施状況報告書の項目8「今後の研究の推進方策」において、研究課題1に関する2018年度(平成30年度)の目標として「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムの国際特許出願」「特定条件下での格子暗号の解読アルゴリズムに関する論文の国際会議への投稿」の2点を掲げ、TU Darmstadt Lattice Challengeの未解決問題への挑戦を、目標を達成するための方策としていた。一方、研究課題1に関する2018年度(平成30年度)の主な研究成果は、「解読アルゴリズムに関する国内特許および国際特許の出願」、および「解読アルゴリズムの古典コンピュータ上でのシミュレーション実験の国際会議での発表」である。目標として掲げた2項目を両方とも達成しており、研究進捗はおおむね順調だったと判断できる。 また、2017年度(平成29年度)に提出した実施状況報告書の同項目における、研究課題2に関する2018年度(平成30年度)の目標は、「研究課題1で提案した量子アルゴリズムのQNN(量子ニューラルネットワーク)上での実装準備」だった。一方、研究課題2に関する2018年度(平成30年度)の主な研究成果は、「学習アルゴリズムに関する国内特許および国際特許の出願」、「学習アルゴリズムの国内研究会での発表」、「量子アルゴリズムのQNN上での実装」の3点である。未発表ではあるが、簡単な格子問題を解くことにも成功しており、研究課題2に関しても本年度の目標をほぼ達成したと考えてよい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題1に関する2019年度(令和元年度)の目標を、「開発した量子アルゴリズムを用いたTU Darmstadt Lattice Challengeの未解決問題の解決」および「同成果をまとめた論文の海外雑誌への投稿」とする。目標達成の方策として、2018年度(平成30年度)に実施した、QNN上で実装した量子アルゴリズムを利用する。TU Darmstadt Lattice Challengeの未解決問題は、これまでどんな古典アルゴリズムを用いても古典コンピュータで解けなかった問題である。解決に成功すればQNNの古典コンピュータに対する超越性が主張でき、学術的な意義は非常に大きい。 研究課題2に関する2019年度(令和元年度)の目標を、「開発した量子アルゴリズムを用いた深層ニューラルネットワークの学習システムの構築」とする。目標達成の方策として、QNN上で実装した量子アルゴリズムを深層ニューラルネットワークの学習システムに拡張し、簡単な学習実験を行うことにより、学習システムの有効性を実証する。
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Causes of Carryover |
次年度に購入予定の製品価格が次年度の予算額を超えていたため、本年度の支出額を計画的に抑制した。繰り越した額は、次年度においてすべて使い切る予定である。
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