2019 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation and improvement of the inference based on the ML method for nonregular models
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17K00051
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
若木 宏文 広島大学, 理学研究科, 教授 (90210856)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一般化線形混合モデル / ラプラス近似 / ガウス-エルミート法 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般化線形モデルの線形予測子の切片項をクラスターごとに異なる確率変数ととらえた,ランダム係数モデルについて研究している。ランダム係数の分布を正規分布と仮定する。その分散が 0 に近い場合には,推定値が母数空間の境界に現れる確率が無視できなくなり,いわゆる「正則条件」が成立しない。 生存時間解析におけるコックスの比例ハザードモデルと関係の深い,指数分布を基にした一般化線形モデルにおいて,ラプラス近似による近似尤度方程式の解として得られる推定量の漸近性質を調べている。 ラプラス近似による推定量と最尤推定量との比較は重要な問題の一つである。最尤推定量を数値的に得る代表的な方法に,尤度方程式に含まれる数値積分をガウス-エルミート法で近似する方法がある。ラプラス近似による近似尤度方程式の近似誤差は標本数 を n として n の平方根の逆数のオーダーであるから,与えれらたデータセットに対しては近似誤差のオーダーは固定されたままである。一方,ガウス-エルミート法では,近似誤差は,ガウス-エルミート法で用いられる区分点の個数で決まるので,計算時間と引き換えに幾らでも小さくすることができる。モンテカルロシミュレーションによって,両者の近似法による最尤推定量の平均2乗誤差を比較した結果,予想通りであるが,計算時間ではラプラス近似に軍配があがるものの,推定精度の点ではガウス-エルミート法が優れていることがわかる。数値実験の過程で,尤度方程式を近似する場合には単に積分にガウス-エルミート法を適用すると,標本数が大きいときオーバーフローが起こりやすいことがわかった。積分計算にラプラス近似を適用するときの式変形を途中まで用いて,マクローリン展開の剰余項を残した上でガウス-エルミート法を適用するという工夫をすると,オーバーフローが回避できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
線形混合モデルにおいてランダム係数が複数ある場合の,AICによるリスクの漸近バイアスの導出が予想以上に難解で,期待していた結果が出ていない。 一般化線形混合モデルにおける回帰係数ベクトルの漸近性質や,最尤推定量との比較については,ガウス-エルミート法による推定アルゴリズムの問題点を発見でき,さらに克服できたので期待通りと言える。 一般化線形混合モデルの回帰係数ベクトルの推定量の,クラスター数が大きくなる場合の漸近性質については,まだ十分な結果が出ていない。 以上から,やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
指数分布を基にした一般化線形混合モデルにおいて,ガウス-エルミート法による最尤推定量の数値計算上の問題点とその回避法が得られたので,他の指数型分布族においても同様の現象がおこるかを確認する。 ラプラス近似による回帰係数の推定量の漸近性質が得られているが,これはランダム係数の分散を固定した場合の結果である。ランダム係数の分散の値を誤特定しても回帰係数の推定量は一致性も持つことが分かったので,ランダム係数の分散の推定については,ラプラス近似による最尤法ではなく,残差を利用したモーメント法の適用を考える。モンテカルロシミュレーションにより,数値的に分散の推定量の性能を調べ,次に,理論的な漸近性質を調べる。この場合,問題となるのはクラスター数も大きくなる場合の回帰係数の推定量の一致性の保証である。一般化推定方程式(GEE)による回帰係数の推定量の大標本・高次元漸近枠組みでの漸近正規性に関する論文があるので,これを参考に理論研究を進める。 ラプラス近似による偏回帰係数の漸近性質が確認できたので,Cp 型の変数選択規準の構築を目指す。 ランダム係数が複数ある場合の AIC の漸近リスクの導出はひとまず置いておいて,漸近バイアスの修正方法を検討する。漸近リスクの陽な表現方法は難解であるが,ランダム係数がひとつの場合に,分散の最尤推定量に現れる定義関数の閾値をずらすことで,うまくバイアスが修正できたことをヒントに,ランダム係数が複数の場合にも,複数場合にも最尤推定量に現れる定義関数の閾値をずらした修正項を利用したバイアス補正法を考える。,バイアスが陽に表せなくても,修正項の主要項と対応がとれる可能性がある。
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Causes of Carryover |
使用額が生じた大きな理由は,旅費を使えなかったことである。指導大学院生とともに研究課題に取り組んでいるが,予想していたより難解な部分があったため9月を想定していた成果発表を見送って,2020年3月の学会と研究集会での発表を予定した。コロナ感染リスク回避のため,出席を予定していた研究集会や学会がすべて開催されなかったため,旅費が使用できなかった。 発表できる成果がいくつかできており,関連する学会等が開催されるのを待って,研究代表者および指導大学院生による成果発表のための旅費に使用する。学術誌に投稿するときに必要な諸費用に充てることも予定している。
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Research Products
(1 results)