2018 Fiscal Year Research-status Report
欠測値をもつ多次元データに対する統計的手法の開発とその応用
Project/Area Number |
17K00058
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
瀬尾 隆 東京理科大学, 理学部第一部応用数学科, 教授 (00266909)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 欠測値データ / 漸近展開 / 尤度比検定統計量 / 成長曲線モデル / プロフィール分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,平成29年度に引き続き,多次元データにおいてデータベクトルの成分が一部分欠測している下で,以下の内容について研究成果を得た. 1.平均ベクトルの検定については,平成29年度は主に尤度比検定統計量について議論したが,平成30年度は,2標本問題を中心にT^2型検定統計量について,検定統計量の分解を利用した分布関数とその上側パーセント点の近似を導出することに成功している.この結果は漸近展開法によるもので,非常に良い近似となっている.関連して,一般欠測データの下での2標本問題における多変量正規母集団の同等性検定や2ステップ単調欠測データの下での部分平均ベクトルの検定問題についても研究し,いくつかの成果をあげている. 2.プロフィール分析については,平成29年度,平行性仮説検定問題に注目し,単調欠測データの下で,一様共分散構造をもつ多変量正規分布に従う場合の尤度比検定統計量とその正確な帰無分布を導出することに成功したが,平成30年度はそれを受けて,水準差の信頼区間について議論し,精度の良い近似信頼区間の導出に成功している.この水準差の推定は,平行性仮説が採択された場合,すなわち,プロフィール間で平行性が認められた場合に問題となるもので,本研究では,単調欠測データの下で2群の場合に対する近似信頼区間を与えている. 3.単調欠測データの下での成長曲線モデルに関する研究については,平成29年度に引き続いて研究を進め,成長曲線モデルに関するパラメータの推定やその性質及びAIC型選択規準について考え,いくつかの理論的結果を得ている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,欠測値をもつ多次元データに関する統計的推測や仮説検定問題についてであり,最尤推定量や尤度比ベースの検定統計量などの開発とその帰無分布の導出などを試みることであるが,これまでの研究成果をもとに,上記の「研究実績の概要」で述べた単調欠測データの下での2標本問題におけるT^2検定については,成果をまとめることができ,現在論文投稿中である.また,同様に,プロフィール分析の平行性仮説検定についての検定法の成果を受けて,その続きである水準差の信頼区間についても,近似信頼区間ではあるが,順調に成果を上げることができ,現在まとめているところであり,論文作成中である.しかしながら,当初考えていた平均ベクトルに関する検定統計量分布の高次の項まで漸近展開についてはかなりの計算量があるため滞っている.このような理由から全体的にはおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
一般欠測データの下での2標本問題における多変量正規母集団の同等性検定を多標本問題に拡張することや多変量正規性検定の研究についても引き続き進めていく予定である.さらに,平均ベクトルの検定問題については,これまでのものよりも精度の良い近似帰無分布をもつ新たな検定統計量も一部導出できており,研究を進め,まとめていく予定である.また,部分平均ベクトルの検定問題や成長曲線モデルの下での推定とAIC型情報量規準についてはこれまでの結果を論文としてまとめ投稿する予定である. これらの研究を円滑かつ発展性のある研究にするために,本研究分野の第一人者でもある国内外の交流のある研究者らのレビューを受けるとともに,情報交換及び討論を行う.そして研究成果については,随時,国内外の学会や国際会議で積極的に口頭発表することによって,多くの研究者の助言も得ながら実りあるものにしていく.さらに助教・大学院生の研究協力も得ながら,最終年度である本研究の研究成果のまとめを行う予定である.
|
Causes of Carryover |
学会出張のための旅費,研究補助として学生アルバイト代,そして,その他として英文校正の費用を計上していたが,予想以上に支出がなく,次年度使用額が生じた.次年度は,研究成果の発表のためにいくつかの国内外の学会や研究打合せを計画しており,そのための旅費,そして,論文作成も予定しており,そのための英文校正のための費用に使用する計画である.また,アルバイトについても統計計算等のチェック補助を予定しており,そのための費用に次年度の研究費とあわせて使用する予定である.
|
Research Products
(17 results)