2020 Fiscal Year Research-status Report
時空間統計モデルによる世界森林面積減少がもたらす社会経済的影響
Project/Area Number |
17K00064
|
Research Institution | Hiroshima University of Economics |
Principal Investigator |
田中 章司郎 広島経済大学, メディアビジネス学部, 教授 (00197427)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 龍映 長崎大学, 情報データ科学部, 教授 (40127684)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 時空間統計モデル / 空間パネルデータ分析 / 空間ダービン誤差モデル / 隣接行列 / 変数選択 / 疑似最尤法 |
Outline of Annual Research Achievements |
計量経済学において使用される空間パネルデータ分析 Spatial Durbin Errorモデルは、誤差の構造上、説明変数に社会経済指標を事前に予め指定する必要がある。しかし、目的変数に対して、どの指標(説明変数)が主要な寄与をしているかを予め指定することは困難である。このため、研究協力者のインドネシア・ガジャマダ大学から留学の博士後期課程学生と我々は、Spatial Durbin Errorモデルを線形に変換して変数選択する手法を開発した(Variable Selection in Spatial Regression: VSSR)。
一方、ヤシ油採取量・住民の貧困度などの社会経済データに関して、スマトラ島を中心に行政区画単位のデータを整備したが、政府統計による適切な自然指標が全期間においてなかったため、行政区画中の人工衛星数十万画素を集約して平均値、中央値、標準偏差などを求めるアルゴリズムを新たに開発し、標高値について、行政区画ごとの指標を求めることができた。スマトラ島のデータセットに、この行政区画ごとの平均標高値、標高の標準偏差を追加して、VSSR法により解析を行ったところ、ヤシ油生産量が住民の収入に関して近隣行政区画と正の有意な相互作用を示したのに対して、15歳以下の若年人口には有意な傾向は見られなかった一方、平地の多い州が有意に地域所得が高いことが判明した。これはパーム油プランテーションの適地が平地であることとの関係が示唆された。
グリッドセルベースの巨大空間隣接行列を用いた2段階疑似最尤法(Pseudo-Maximum Likelihood Method: PML)にも進展があり、空間隣接性について改良を行い、高精度の日本のメッシュデータを用いて有効性を確認できた。このことで、空間隣接に関わる数百万回の繰返し計算部分が不要となり全世界への適用が視野に入った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
解析のための技術開発は一応完成したといえるが、試験地域に設定したインドネシア・スマトラ島のデータは、対象とした州の数(N=9)、時期(T=7)、変数の数(p=9)であり、確定的な結論を出すのにはデータサイズが十分ではない。
解析結果の正当性を示すためには、大きなデータサイスを有する時空間に関するベンチマークデータなどをもちいて、手法を検証することが必要である。しかし、適切なデータが見つかっていない。また、計量経済学で問題となる固定効果<-->ランダム効果についてさらに検証していく必要がある。研究協力者の博士論文は完成したが、その内容は共著論文として学術論文誌に投稿できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
社会経済データの行政区画毎の時空間に関するベンチマークデータを体系的に調査し、存在しない場合には、率先して作成する。その際には、クラウト上ですでに多数の人工衛星データを有するGoogle Earth Enginepプラットフォームを活用して、shapefileと呼ばれる行政区画座標データにより区画内部の画素を集約(aggregate)してゆく。また、固定効果<-->ランダム効果について検証する。
2段階疑似最尤法(Pseudo-Maximum Likelihood Method: PML)についても、日本だけではなく、試験領域をスマトラ島としてさらに検証を進める。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍のため、参加を予定していた国際会議(IEEE IGARSS 2020)がオンライン開催となり、海外渡航費が不要となった。2021年度においては、査読論文誌への投稿を予定しているため、投稿費を確保し、また、直感的・発見的な知見を得るため、3次元標高モデルに各変数の値を着色して印刷できる3Dプリンタの購入活用も検討したい。
|
Research Products
(6 results)