2017 Fiscal Year Research-status Report
ソフトウェアモデルの有用性優先モデリング手法の研究
Project/Area Number |
17K00112
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岸 知二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30422661)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ソフトウェア / ソフトウェア工学 / ソフトウェアモデリング / プロダクトライン開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ソフトウェアモデルの有用性に関わる特性を評価し,有用性に見合ったそれなりの完成度を目指す有用性優先のモデリング手法を提案することである.ソフトウェアの大規模・複雑化,変化の常態化の中,過度な完成度を求めず,それなりに有用なソフトウェアを適時提供する有用性優先の考え方が提案されている.本研究ではそうした有用性優先の考え方をソフトウェアモデリングに適用し,モデルの有用性に関わる特性に基づき,過度な完成度を求めない有用性優先のモデリング手法を提案する.
今年度は,ソフトウェアプロダクトライン開発などの可変性管理に用いられるフィーチャモデルを例題に,有用性優先の観点からその妥当性を検討する手法について提案した.本手法では,まずフィーチャモデルを可変性管理を行う対象となる成果物(群)のモデル(群)と関連付ける.次に有用性に関わる要因として構造的な側面からモデル要素の数,意味的な側面から可変性モデルが表現する導出可能構成数に注目し,対象とする成果物の可変性解決という目的に照らして,それらの要因から過不足を検討する.公開されているモデル事例などに対して手法を適用し,過不足部分を特定できることを確認するとともに,手法の課題の整理を行った.
また,定義されているモデルのすべてのモデル要素を活用すると高コストになる場合,ある程度モデルを近似的に扱うことで,低コストでかつ一定の有用性を確保したモデルの活用を行う手法の検討も進めた.具体的にはフィーチャモデルに基づくフィーチャ構成導出において,より小さなフィーチャ構成を近似的に低コストで行う方法を提案し,シミュレーションによって手法が有効であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有用性優先のモデリング手法について,以下に示すようにほぼ予定通りに研究を進めている. ・応用分野として,ソフトウェアプロダクトライン開発などで重要な可変性管理で利用されるフィーチャモデルを取り上げ,フィーチャ構成導出や成果物の可変性解決といった具体的な利用を想定して検討を進めた. ・有用性に関わる要因に関し,フィーチャモデルを対応する成果物の可変性解決に利用するというコンテキストを考えた場合には,対象成果物と関連づけられるモデル要素数や,導出可能構成数などが有用性議論の要因となりうる.これら要因に照らしてフィーチャモデルの記述の妥当性を有用性の観点から定性的に判断する手法を定義し.事例に適用して評価した.まだ手法としての改善や洗練の余地は多いが,有用性議論のためにモデル利用の目的やコンテキストを明確化し,定義された要因に照らして分析的にモデルの妥当性を検討するという基本的な枠組みは一定の妥当性を持つと考える. ・提案する手法は,モデル作成中であっても適用できる.本手法はモデルの特定の部分(フィーチャモデルの場合は特定の可変性を表現している部分)ごとに適用できるため,どの部分が有用性が高く,どの部分が低いかの判断の指標を与える.それに基づいて限られたモデル構築時間をどの部分の記述に費やすべきかのガイドとすることが考えられる. ・当初計画時には考慮していなかったが,有用性優先の考えはモデル利用時にも適用できることがわかった.モデルの形式的な解析などを考えた場合,モデルの複雑化は計算コストの増大につながる.モデルを近似的に処理することで計算コストが低下し,かつ利用目的に照らしてそれなりの有用性が得られるのであれば,複雑なモデルをそのまま処理することは妥当でないと考えられる.こうした処理の観点からの有用性の検討も進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は前年度の検討のフィードバックを踏まえ,引き続き適用例題の拡大や手法のリファインをすると同時に,特に定量的な有用性判断手法について検討を拡大する. ・応用分野として引き続き可変性管理の分野を扱うと同時に,モデルの検証など,他の応用分野に関しても例題を拡大する.有用性判断のための要因や指標についても,拡大した応用分野ごとに検討を進めるとともに,それら要因を観点に応じて整理することを試みる.それらに基づき,提案手法の改善や洗練を行う. ・定量化に関しては,確率的な指標を設定することが妥当でないかという仮説を立てている.ひとつのアナロジーとしては,テストにおける運用プロファイルが,利用確率の高いシナリオからテストをするというための判断に使われるように,なんらかの確率的なモデルに基づく有用性判断の手法を検討する.この場合,運用プロファイル構築と同様に,有用性に関わる確率をどのように設定するのかという課題を考える必要がある.例えば可変性管理であれば,いくつかの設定のシナリオがあると考えており,事例ベースで,どのような観点でどのような有用性の確率を設定できるのか,そのモデルの構築方法を含めて検討を行う. ・有用性優先の観点からのモデルの近似的活用に関する検討も引き続き進める.
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Causes of Carryover |
旅費を当初予定より若干少なくすることができたため2万円弱の差額が生じた.海外旅費は円レートで変動があるため,次年度の旅費予算に合算して利用する計画である.
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Research Products
(5 results)