2017 Fiscal Year Research-status Report
二重対角行列正則化を用いた大規模悪条件問題に対する数値計算法の開発
Project/Area Number |
17K00166
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
細田 陽介 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (80264951)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大規模線形方程式 / 悪条件 / LSQR法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、データに観測誤差などの分離不可能なノイズを含む大規模な悪条件線形方程式に対して有効な数値計算法を開発することにある。 このような問題に対しては反復解法の一つであるLSQR法が有効である。しかし、我々の想定するような問題にLSQR法を適用したとき、反復の初期段階では誤差は順調に減少するが、ある段階を境に、誤差は増加に転ずる。その誤差が減少から増加に転ずる点が反復の最適な打ち切り回数を表す。通常、LSQR法などの反復解法は残差を反復停止のための基準とするが、残差は誤差と違って反復回数に対して単調に減少するため、我々が想定するような問題では反復停止のための基準として用いることはできない。 LSQR法は反復により二重対角行列を生成し、各反復において、その二重対角行列を係数行列に持つ最小二乗問題を解くことにより近似解の列を生成する。我々は、その二重対角行列の条件数を容易に、かつ正確に評価する方法を開発した。しかし、この二重対角行列の条件数も、反復回数に対して単調に増加するため、条件数単体では反復停止則として用いることはできない。 それに対して我々は、条件数と残差を用いた新たな反復停止条件であるLCRグラフを用いた反復停止則を提案し、その有効性を数値実験を用いて確認した。その結果を6月の数値解析シンポジウムと9月の日本応用数理学会年会で研究発表し、さらに、電子情報通信学会論文誌に投稿し、1月号に採録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の想定するデータにノイズを含んだ大規模悪条件線形方程式に対して、LSQR法の適用を試み、新たな反復停止則を導入し、その有効性を比較的小規模なテスト方程式に対する数値実験を用いて検証した。そして、その結果を研究集会ならびに学会で発表し、有識者からさまざまな提言を頂いた。さらに、研究速報という形ではあるが、査読付きの論文誌に投稿し、掲載されるに至った。これらは第一年度の結果としては、おおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に述べたように、我々の提案する方法の有効性を比較的小規模なテスト方程式を用いて数値実験で検証した。さらに、研究速報として論文誌に投稿したが、今後は我々の方法の理論的な解析を行い、英文誌にフルペーパーとして投稿する予定である。また、より大規模かつ実際的な悪条件方程式に対しての有効性を検証する。大規模悪条件方程式としては3次元電子顕微鏡CT像再構成問題を想定している。この問題への適用のための計算機環境の整備を行う予定である。この環境整備には電子顕微鏡CT像再構成問題を取り扱っている研究機関への出張を含み、そこでさまざまな研究打ち合わせ、ならびに情報交換を行う予定である。
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Research Products
(3 results)