2018 Fiscal Year Research-status Report
大規模並列計算環境に適した新しい部分特異対計算法の開発
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17K00167
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
木村 欣司 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10447899)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 単独非線形方程式 / セカント法 / 挟み撃ち法 / 分割統治法 / ヤコビ法 / 特異ベクトル / 直交性 / OQDS法 |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模並列計算環境に適した新しい部分特異対計算法の開発という目標に対して、平成30年度は、分割統治法の改良のための数値計算法について詳しく調べた。分割統治法の基本原理は、単独非線形方程式の求解の方法の一つであるニュートン法にある。しかし、単独非線形方程式の求解の方法には、ニュートン法以外にも、たくさんの方法が存在する。平成30年度は、その事実に着目した。特に、セカント法と挟み撃ち法は、双対の関係にあり、両者を併用することで、信頼性の高い単独非線形方程式の求解の方法を実現できることが判明した。その知見は、分割統治法の改良に止まらず、さまざまな固有値分解・特異値分解計算法の改良にも生かすことができる。具体的には、OQDS法の左特異ベクトルの直交性の改善に利用することができる。さらに、固有値分解のためのヤコビ法における固有ベクトルの直交性の改善や、特異値分解のための片側ヤコビ法・両側ヤコビ法における特異ベクトルの直交性の改善にも、活用することが可能である。より詳細に述べると、OQDS法におけるギブンズ回転や固有値分解のためのヤコビ回転をsin,cosの数値を用いて決定するとき、cos側の数値の精度が低い場合がある。そのとき、sinの数値を活用して、cosの数値をセカント法と挟み撃ち法を用いて修正する。逆に、sin側の数値の精度が低い場合、cosの数値を活用して、sinの数値をセカント法と挟み撃ち法を用いて修正する。正確には、単に修正するのではなく、恒等写像からのずれとして定式化する。平成30年度は、分割統治法以外の上記のすべての解法について、信頼性の高い単独非線形方程式の求解の方法を利用した実装を実現し、ソースコードを公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、応募書類に列挙した2つの方法のうちの櫻井・杉浦法の改良を目的として、コレスキーQR分解法、DQDS法とOQDS法を併用した方法を提案した。コレスキーQR分解法は、特異値分解の前処理にも活用できるため、研究が順調に進展しているといえる。平成30年度は、応募書類に列挙した2つの方法のうちの分割統治法の改良を目的として、単独非線形方程式の求解の方法について詳しく調べた。そこで得られた知見を利用して、OQDS法の左特異ベクトルの直交性の改善、固有値分解のためのヤコビ法における固有ベクトルの直交性の改善、特異値分解のための片側ヤコビ法・両側ヤコビ法における特異ベクトルの直交性の改善を達成し、ソースコードを公開した。平成30年度の上記の研究成果より、単独非線形方程式の求解の方法であるセカント法と挟み撃ち法の有用性について、検証できた。それは、平成31年度におこなう分割統治法の改良についての有益な指針が得られたことでもある。以上より、研究が順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
分割統治法の基本原理は、単独非線形方程式の求解の方法の一つであるニュートン法にある。しかし、単独非線形方程式の求解の方法には、ニュートン法以外にも、たくさんの方法が存在する。平成30年度は、その事実に着目し、信頼性の高い単独非線形方程式の求解の方法を実現するための有益な指針を得られた。平成31年度は、その指針に従って、残された分割統治法の改良について行う。その実装を公開することで、本研究の全体を完成させる。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、スーパーコンピュータの存在しない職場に着任したため、研究環境の整備を最優先とし、交付額のほぼ全額を物品費として、高性能な計算機の購入に使用した。平成31年度は、国際的な研究の動向を調査する目的で、平成30年度分の未使用額を旅費として有効に活用する計画である。
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Research Products
(4 results)