2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K00169
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
坂本 尚久 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (20402745)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 可視化 / 並列可視化 / ソフトウェアレンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スパコン上で計算される大規模データを手元の可視化用端末に移動させることなく、Webブラウザを通して手軽に探索的な可視化が行えるデータ分析環境を構築することである。本年度は、本研究の基盤となる粒子ベースレンダリング(PBR)のソフトウェア実行基盤の開発を行った。具体的には、GPU (Graphics Processing Unit)を搭載していないスパコン上でのPBRを実施するために必要となる次の2つの基盤技術を開発した。 (1) 並列ソフトウェアレンダリング基盤技術:OpenGLコマンドを利用して実装されているPBR基盤向けにOSMesaを利用したラスタライズ処理機能を実装し、連携研究者の野中氏が開発する並列画像重畳技術を組み込むことで、複数プロセス間で共有可能な仮想フレームバッファ機構を開発した。本機構を従来のPBR技術に適用し、並列環境下で性能評価実験を行ったところ、プロセス数の増加に対してほぼ一定の割合で速度向上(強スケーリング)が確認できた。 (2) 並列アンサンブル平均処理基盤技術:1で述べた基盤技術をもとにして、並列画像重畳技術を使った並列アンサンブル平均処理技術を開発した。本技術では、アンサンブル毎に画像重畳技術を使って画像化を行うことにより、中間データを格納することなく平均化処理を実施することで、メモリコストを大幅に削減できることを確認した。また、並列環境下での性能評価実験の結果、アンサンブル平均数と画像転送コストの関係が明らかになり、次年度以降の開発のための重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、粒子ベースレンダリング(PBR)向けのソフトウェア実行基盤を開発することであったが、上述のように計画通りの成果が達成できた。特に、想定していた計画よりも早く並列環境上での評価実験を実施することができ、初年度から多くの国際会議等で成果を発表することができた。その結果として、PBRの並列化に向けた数多くの知見が得られたことは、次年度以降の研究開発を加速させる上で重要な成果であった。また、研究開始当初、ソフトウェア環境下でOpenGLコマンドを実行するための基盤であるOSMesaが、京コンピュータ(SPARK64 CPU環境)上で最適化が適用されない問題があったが、本研究における評価実験結果をもとに、原因が明らかとなり、SPARK環境向けのOSMesaの実行環境が提供されたことは大きな成果の一つである。以上の結果より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度開発した並列粒子レンダリング向けソフトウェア実行基盤をもとにして、並列環境下で効率良くアンサンブル平均処理を実施するための基盤技術を開発し、粒子径調整技術を拡張することによって対話的な可視化パラメータの変更を可能とする適応的粒子径調整技術を開発し、粒子数と画質による関係を明らかにする。さらに、すでに開発を進めているWebベース可視化システムへのモジュール化を進め、京コンピュータおよび神戸大学が所有するスパコン(ΠコンピュータおよびΠVizStudio)での検証実験を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初想定していた研究計画に対して、実環境での性能評価実験をより多く実施することができ、その知見によって次年度以降の成果発表の増加を想定して、本年度執行予定額を抑制し、その分を2018年度へ繰り越した。
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