2017 Fiscal Year Research-status Report
クラウドサービス利用者の安心感を高めるセキュアマルチパーティ簡易計算
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17K00170
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
宮島 洋文 岡山理科大学, 総合情報学部, 講師 (60781995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白鳥 則郎 中央大学, 研究開発機構, 機構教授 (60111316)
重井 徳貴 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (90294363)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 機械学習 / 簡易秘密計算法 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 簡易秘密計算と組み合わせた機械学習システムの構築 (1)分散表現法:機械学習を行う上で必要な情報を複数のサーバに分散して記憶する。(2)基本演算処理:加法的または乗法的分散表現を用いて、各サーバにおける並列計算により機械学習に必要な計算を行う、という特徴をもつ、簡易秘密計算法と組み合わせた機械学習のアルゴリズムの提案を行った。提案手法においては、各サーバは計算結果のみを出力し、内部に記憶された情報そのものは外部に出力されない計算アルゴリズムが行われる。これにより、各サーバに分散して記憶された情報に対する安全性が高められると考えられる。具体的な手法としては、広く用いられている階層型ニューラルネットワーク、簡略型ファジィ推論法、k-means、ニューラルガスについて、(1)、(2)により学習用データの安全性を高めた学習アルゴリズムの提案を行った。また、強化学習手法であるQ-learningおよびProfit Sharingについて、(1)、(2)によりQ値などの状態行動価値の安全性を高めたアルゴリズムの提案を行った。 2. 提案手法に対する能力評価 (1)提案手法の能力について、数値実験により、データの安全性を考慮しない従来の機械学習方法と同等の能力を持つことを確かめた。(2)提案手法において、サーバに分散させて記憶させた情報が元の情報の特徴を有していないことを、数値実験により確かめた。(1)、(2)により、提案手法が能力の高さと情報の安全性を両立する手法であることを確かめた。 3. 研究成果を、国内学会および国際学会の場において発表した。 4. 研究成果を論文としてまとめた。また、それらの論文が論文誌において掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、クラウドコンピューティングにおいてデータを安全かつ安心して利用するシステムの提案を目的としている。平成29年度においては、基礎的な機械学習手法を簡易秘密計算法と組み合わせることで、データの安全性を確保する手法のアルゴリズムの提案を行った。 (1)ニューラルネットワークやファジィ推論法などの教師あり学習においては、学習が進むとシステムの出力が学習用として与えられているデータの出力に近づいてく。そのため、教師あり学習と簡易秘密計算法を組み合わせた提案手法においては、学習用データとともにシステムの出力についても安全性を高めた学習アルゴリズムの提案を行った。 (2)k-meansやニューラルガスなどの教師なし学習においては、学習用データは参照ベクトルにより近似される。そこで、学習用データの情報の秘匿を目的として、本研究では学習用データとともに参照ベクトルの安全性についても高めるアルゴリズムの提案を行った。 (3)強化学習の目的は、与えられた環境における最適な行動選択を行うことである。行動選択の際には、状態行動価値と呼ばれる値が用いられる。強化学習においては教師あり学習や教師なし学習のように学習用データは与えられていないが、本研究においては行動選択の重要な指針である状態行動価値が重要な情報であるとみなし、これの安全性を高めた学習アルゴリズムの提案を行った。 各提案手法については、数値実験により能力の高さと情報の安全性についての検証を行った。また、それらの成果を学会発表および論文として発表した。以上のように、基礎的な技術の提案および成果の発表を行い、成果を次年度の研究に役立てることができると考えられるため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.簡易秘密計算システムの高度化 平成29年度の基礎研究を踏まえて、それぞれの分散表現法を用いた学習システムを構築し、各種のアプリケーションへ以下の手順に従って応用する。(1)クラウド上での秘匿データに対する機械学習1の実現:ファジィシステムやGA、PSO、EM法等の進化的計算法による学習 、ディープラーニング等の実現 (2)クラウド上での秘匿データに対する機械学習(ビッグデータ処理)の実現: K-means、NG、SOMやカーネル法などのベクトル量子化による学習の実現 (3)クラウド上での秘匿データに対する強化学習の実現: Q-学習やPS-学習などの強化学習法を実現する (4)医療や市場分析などのデータ処理、ビッグデータ、画像認識やIoTなどの人工知能応用、ロボットや車の自動運転などの新しい知識処理へ簡易秘密計算法を導入する。 2.簡易秘密計算APIの高度化 上記3つの設計を統合して、階層構造をもつ簡易秘密計算APIを実装する。 3.安心・安全性理論の高度化 (1)安心・安全性理論の高度化:外部からの攻撃に対する安心・安全性の評価や k-out-of-n 秘密分散法を含む一般化された理論の構築 (2)システム評価への応用 (i)k-out-of-n 秘密分散法を用いたシステムの安全性評価 (ii)分散表現のデータを非一様に分散したシステムの安全性評価 (iii)ダイナミックシステムの安全性評価 ・機能別の学習方法による安全度の違いを明らかにする。 4.基盤技術の確立とまとめ 平成29年度の成果を各班で相互に共有し連携を進めると共に、共同研究者と連携しながらプロトタイプシステムとその評価を進め、実証実験等を行い、簡易秘密計算システムの基盤技術を確立する。
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Causes of Carryover |
当初は新規の物品を購入して実験を実施する予定であったが、研究を進めていった際に、平成29年度に実施する必要のある実験においては新規の物品の購入を必要としなかった。そのため、当初の予定よりも物品購入の費用を抑えることができた。 次年度使用額については、研究成果を国際学会の場において発表する際や、論文投稿の際等に使用することを予定している。
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Research Products
(12 results)