2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Subjective (or Subject-Object Merger Type of) Construal as the Japanese Speaker's Fashion of Speaking
Project/Area Number |
17K00201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池上 嘉彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (90012327)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | なる / 日本語 / 出来(しゅったい) / 推移 / 非動作主 / 万葉集 / 出現と変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
海外出張による<通言語的(crosslinguistic)>な観点からの諸言語における「ナル」相当動詞の研究は、2023年3月末まではコロナ禍の状況に十分な改善が得られず、見送らざるを得なかった。その代わり、<学際的(interdisciplinary)>な観点から以前から想定していた政治学者丸山真男の著名な論考{歴史思想の古層}(1972)とのつき合せでは、そこで論じられている2つの概念系列――<なる> - <つぎつぎ> - <いきほひ(勢)>と<なる> - <うむ> - <つくる>――との関連で予想以上の興味深い知見が得られた。 まず、後者は丸山論文では世界の<国造り>神話における語りの類型として提示されているのであるが、実は人間言語において<創成>(丸山自身の用語)の営み一般が語られる場合の類型としても十分有効であるということ― 特に、3つの概念を<自然生起的>/<主客合一的>と<人為関与的>/<主客対立的>という対立軸に沿って並置した場合、<なる>の占める意味領域が、伝統的な日本語文法で定義が定まらないでいる<自発>の概念の(丸山の用語を使うと)「原イメージ」であると位置づけ得ること; そして、この概念系列には「なる」という自動詞と「つくる」という他動詞とが合理的に共在しうることから、伝統的に採られる動詞の意味論的処理で、まず形態論/統語論的な特徴に基いて<他動詞>と<自動詞>が区分され、前者が基本形、後者が派生形として扱われるというやり方は明らかに不当という興味深い示唆が得られた。 上記研究実績については2023年6月刊行予定の『認知言語学研究』8、及び科研費20K00537の成果の一部として2023年夏に刊行予定の『「ナル的表現」をめぐる通言語学的研究』(ひつじ書房)に取り込まれている。残された課題については継続して研究を行う予定である。
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Research Products
(6 results)