2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative cognitive studies in the zoo
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17K00204
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Research Institution | Kyoto City Zoo |
Principal Investigator |
田中 正之 京都市動物園, 生き物・学び・研究センター, 生き物・学び・研究センター長 (80280775)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ニシゴリラ / 比較認知科学 / 系列学習 / 作業記憶 / アラビア数 / チンパンジー / マンドリル / 知性の展示 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度も、前年に引き続き、京都市動物園で飼育されているニシゴリラ3個体をはじめとして、同園飼育のチンパンジー5個体、テナガザル1個体、マンドリル2個体を対象として、アラビア数系列の学習課題を実施した。すでに1から9までの系列の習得した6歳のオスゴリラ、30歳と25歳のオスチンパンジーは、1から9までの任意の個数の数字を提示し、最初の(最小の)数に触れたときに残りの数を市松模様でマスクする「作業記憶課題」を実施した。大人のチンパンジー2個体については、数字3個の条件では70%程度の正答率であったが、数字4個の条件では30%以下まで低下した。一方、6歳のゴリラでは数字5個の条件でも約5割の正答率を示した。数字6個の条件で30%台に下がったが、その後も訓練を続け、年度末までに50%を超えるまでに成績が向上している。また、6歳のチンパンジーが1から9までの系列の学習をほぼ完了しており、次年度には作業記憶課題を開始する予定である。 京都市動物園では、平成30年6月にチンパンジー、12月にニシゴリラの赤ん坊が誕生しており、それぞれの赤ん坊についても、年長個体と同様に、認知課題への参加を期待しており、今後、動物園の最大の課題である被験者数が増加する見込みが立った。さらに、野生由来で現在推定42歳のメスチンパンジーも、1から8までの系列の学習を達成し、年齢による認知・学習能力の低下はまだ見られていない。本人も意欲的に課題に取り組んでいることから、今後も被験者として成績の推移を見守りたい。 同課題を実施している様子は来園者に公開されており、「知性の展示」として実感を伴って霊長類の知性の高さについての理解を促すことに貢献している。この他の成果として、動物園水族館雑誌、応用動物行動学会機関誌等に論文発表した他、新聞等の媒体に研究成果の一部を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度末に所属機関を京都大学から京都市動物園に移した。2017年1月31日に学術研究機関として京都市動物園が認められたことによるものだが、機関として必要な制度の整備のためにとくに経理処理が京都大学と比べて時間がかかるようになり、研究計画の執行にもやや遅れが出ている。実質的に2年目となる最終年度は、処理に係る時間を見込んで早めの処理を進め、計画年度内の実現を目指す。 研究計画についても、主たるターゲットとなるニシゴリラが2018年度内に妊娠・出産をした。ゴリラの健康面への配慮を優先して実験の進行なども調整した。2019年度には従来の実験計画に沿って計画年度内の完了を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度となる2019年度は、もっとも課題習得の進んでいるニシゴリラ男児(7歳)とチンパンジー男児(6歳)、さらに成体のチンパンジー男性(30歳)を対象として、アラビア数系列の習得を進め、作業記憶課題に訓練による改善効果を測る。ニシゴリラ男児については、一度に6数字の提示条件で大きく落ち込んでいた課題成績が向上しつつある。チンパンジー男児については、2018年度末に1から9までのアラビア数字の順序を習得したので、2019年度に1つめの数字に触れたときに後続する数字をマスクする作業記憶を開始する。これまでに作業記憶課題には年齢効果(成年個体よりも若年個体が明らかに成績が優れる)が見られているので、チンパンジー男児でも優れた成績が予想される。 2018年度6月に生まれたチンパンジー乳児はすでにタッチモニターへの反応を自発しており、2019年度内に課題を開始できる見込みである。2018年12月に生まれたゴリラ乳児はまだ母親から離れられていないが、生後1年以内には独立して動き出すことが予想されるので、今後の被験者として期待できる。 本計画で目指した、動物園の大型類人猿認知研究拠点化については、国内の他園館での研究推進に結び付けることが困難な状況だが、京都市動物園での施設整備も含めて先行した拠点化を目指したい。
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Remarks |
研究の概要および成果については、研究代表者が所属する京都市動物園のホームページにおいて随時更新している。
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Research Products
(12 results)