2020 Fiscal Year Research-status Report
左右反転立体音響を用いた人間の環境適応性の脳機能解析
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17K00209
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
青山 敦 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (40508371)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳・神経 / 脳情報学 / 脳機能計測 / 多感覚統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,人間の環境適応性に関する脳機能に迫るため,左側(右側)から届く音が右耳(左耳)で聞こえる左右反転聴空間をウェアラブルシステムによって創出し,実験参加者がその聴空間へ適応する過程における脳活動を検討してきた.2019年度までに,この左右反転聴空間への接触・解離に伴う新たな視聴覚統合モデルの獲得・定着・消失・再獲得等に関する知見を得てきたが,更なる知見獲得や統合モデルの感覚特異性の検証,最終的な取り纏めについては,コロナ禍で滞ってしまっていた.そのため2020年度においては,計測済みの脳計測・脳刺激・行動計測実験のデータを対象として,左右反転聴空間から解離して通常の聴空間へと戻った際の視聴覚統合モデルの検討,通常の聴空間から左右反転聴空間へと再接触した際の視聴覚統合モデルの検討,視聴覚情報の空間的な誤差検出に関わる脳活動の検討等を更に進めた.これらにより,人間は複数の視聴覚統合モデルを脳内に保持でき,併存している視聴覚統合モデルの中から,視聴覚情報の誤差が最小となる統合モデルを最適なモデルとして排他的に選択していることが分かった.一方で,コロナ禍のために,手指に関する特殊触空間を用いた統合モデルの感覚特異性の実験的な検証が難しく,取り纏めに向けた意見交換と今後の共同研究の模索を目的とした海外出張も実現できなかった.今後もコロナ禍が続くことが予想されるため,これらの問題を可能な範囲で解決し,最終的な取り纏めを進めていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のために,新たな脳計測・脳刺激・行動計測実験によるデータ取得や国内外の出張が年間を通じて困難になり,当初予定していた統合モデルの感覚特異性の実験的な検証や最終的な取り纏めに向けた他研究者との密な意見交換ができなかった.また,大学における種々のコロナ対策に多くの時間が費やされ,当研究課題遂行に充てられる時間が当初の予定よりも極端に減ってしまった.一方でこのような状況下においても,これまでに蓄積してきたデータを更に解析することで,本研究課題の核となる新たな視聴覚統合モデルの獲得・定着・消失・再獲得に関する一連の知見を強化することができ,最終的な取り纏めに向けて,統合モデルの観点から人間の環境適応機能のメカニズムに迫ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度もコロナ禍は世界的に続くことが予想され,海外出張は実現しない可能性が高い.一方で,手指に関する特殊触空間を用いた統合モデルの感覚特異性の実験的な検証については,状況次第で実施できる可能性がある.そのため,海外出張については,オンラインでの意見交換や学会参加によって代替し,実験的検証については,タイミングを見計らった上で2020年度の経験を活かして可能な範囲で実施する.実験的検証が可能な場合には,視聴覚統合モデルと視触覚統合モデルの比較を行い,不可能な場合には,左右反転聴空間の実験で得られた知見をベースに,特殊空間への接触に関する他の先行研究を参照しながら議論する.これにより,人間の環境適応機能のメカニズムに関する最終的な取り纏めを行う予定である.
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Causes of Carryover |
2020年度には,本研究課題の取り纏めに向けた海外出張,ないしは成果発表に関する使用を予定していた.しかし,コロナ禍のために海外出張はできず,コロナ対策に多くの時間が費やされてしまった.そのため,これらの使用が計画通りにはできず,次年度使用額が生じた.次年度使用額については,最終的な取り纏めに向けた物品費,成果発表に関する諸費用等に使用することを計画している.
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Research Products
(2 results)