2019 Fiscal Year Research-status Report
A neuro-cognitive study on the effects of resource allocation on thinking in second-language processing
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17K00210
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
森島 泰則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20365521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 陽太郎 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20197122)
直井 望 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20566400)
ローランド ダグラス 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (60749290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 第二言語処理 / 認知的負荷 / 認知資源の配分 / 推論 / 言語理解 / 言語処理の脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外国語(第二言語、以下L2)処理が思考作業に及ぼす影響に関する認知的、脳機能的過程と機序に関する研究である。2019年度の研究実績を以下に要約する。 実験対象のL2英語学習者は習熟度の個人差が大きいため、一定数(最低15名)の中級、上級レベルの参加者を確保するため、実験を継続した。また、島津製作所の計測装置を借り、その装置でも実験を行った。実験参加者は、約300語からなる英文を読解後、音声提示の内容に関する真偽判定問題(英語)に回答した。設問は、文章に書かれた 内容に関するもの(直接的質問)と推論を要するもの(間接的質問)に別れている。近赤外線光トポグラフィー脳機能測定装置(fNIRS)を用いて回答中の脳活動を測定した。中級L2参加者のデータをL1英語話者のデータ(前年度収集)と比較したところ、L1グループは、右半球前頭部で間接的質問の方が直接的質問より有意に回答中の脳活動が増大したが、L2グループではそのような増大はなかった。 今年度、日本認知心理学会(5月)、日本光脳機能イメージング学会(7月)、スイス・チューリッヒで開催された学会Crosslinguistic Perspectives on Processing and Learning (X-PPL)(11月)で成果発表を行った。 学会発表の際に出た質問やコメントを参考に、再度データ分析を行った。中級L2グループで、間接的質問条件の脳活動が、増大しないのは、そもそも実験文を十分理解していないので回答できないからだという解釈も成り立つ。そこで、課題成績の良いL2話者を抽出し、L1グループと比較した。結果は、中級L2グループの場合と基本的に同じであった。結果を総合すると、L2話者が間接的質問で脳活動が増大しないのは、推論するための認知資源を配分できないからだと解釈することができるが、さらに詳細な検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度末にドイツの国際学校の日本人生徒を対象に追加実験を予定したが、先方の都合と装置の技術的問題により充分な成果が出ない可能性があるため、実験実施を延期し、研究期間延長を行なった。しかし、その後、コロナウイルス感染が発生し、その後パンデミックに拡大したため、渡航が不可能になり、実現の見込みが立たなくなっている。代替措置として実験計画を変更し、国内で実験することを検討しているが、現状、緊急事態下で大学も閉鎖状態のため、8月末までは実施は不可能である。9月以降に実施できればと考えているが、感染状況次第である。現在、この実験計画を作成中である。また、これまでに得られた成果の論文発表をすべく執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
9月以降、大学内で実験ができる状態になることを前提として、検証実験を行い、年度内にその成果を集約し、発表に向けて執筆を行う。9月以降も実験ができる状況にない場合、これまでの成果をもとに、本研究の主題である認知資源の配分の観点から第二言語処理過程と機序に関する理論的考察を深める。近年、外国語副作用に関連する認知脳科学的研究が盛んになりつつあるので、認知心理学的研究とともに、それらの研究のレビューをより精緻に行う。その成果を論文にまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2019年度末にドイツの国際学校の日本人生徒を対象に追加実験を予定したが、先方の都合と装置の技術的問題により充分な成果が出ない可能性があるため、実験実施を延期し、研究期間延長を行なった。そのため、次年度使用額が生じた。 今後のコロナウイルス感染・収束に関する専門家の予測を鑑みると、上記のドイツでの実験を今年度中に実施することは不可能と考えている。そこで、今後感染が沈静化し、大学の閉鎖が終了するという前提の下、代表者、分担者の大学で実験を行う予定でいる。また、これまでに得られた成果の発表を行う予定である。残額はこれらの研究活動を行うために使用する。具体的には、追加の実験装置、コンピュータの購入、実験参加者、補助者への謝金、国内の学会等への参加に係る経費、図書、文献購入費、消耗品費である。
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Research Products
(3 results)