2020 Fiscal Year Research-status Report
A neuro-cognitive study on the effects of resource allocation on thinking in second-language processing
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17K00210
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
森島 泰則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20365521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 陽太郎 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (20197122)
直井 望 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (20566400)
ローランド ダグラス 早稲田大学, 理工学術院, 准教授(任期付) (60749290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 第二言語処理 / 認知的負荷 / 認知資源の配分 / 推論 / 文章理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国語(第二言語、以下L2)を理解する際に、その言語処理が思考作業に及ぼす影響に関する認知的プロセスとメカニズムを検討することである。具体的には、L2言語処理における認知負荷によって、他者理解や価値判断など高次の思考作業への干渉があるのか。つまり思考が低下するのか。この干渉効果はL2習熟度によって差があるのか、という疑問を探求する。また、L2処理における認知負荷による思考作業への干渉を脳機能的にも検証することを目的としている。研究対象は日本語を母語とする中級英語学習者である。 2020年度の研究実績を以下に要約する。 2019年度末までに、近赤外線光トポグラフィー脳機能測定装置(fNIRS)を用いてL2文章理解における推論の認知的負荷を検証する実験を行い、その結果を国内外の学会で発表した。そこで得られた指摘や疑問をもとに、結果の再分析を行った結果、さらなる検証が必要であるという結論に至り、検証実験を予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染が発生、拡大したため、実験を実施することが不可能となった。そこで、本研究の主題である認知資源の配分の観点から第二言語処理過程と機序に関する理論的考察を深めるため、文献調査に研究の重点を置くことにした。この成果は、今年度の日本心理学会年次大会のシンポジウム(オンライン開催)での研究発表に生かすことができた。 感染状況が収束の方向に向かわず、むしろ長期化する状況の下、インターネットを介したオンライン心理学実験が国内外で行われるようになり、注目されつつある。そこで、オンライン実験の可能性を探るため、その有効性に関する論文を含め関連情報の評価を行い、一つのオンラインシステムを採用し、試行することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、進捗に遅れが出ている。当初計画した実験の実施が困難な状況が続いている。特に、脳機能計測を用いた実験は、装置装着のため身体接触を伴うため、当面実施は不可能である。しかしながら、オンライン・ツールを用いた時間計測などの行動指標計測実験は、論文発表のできるレベルで実施できる可能性があるので、新たな実験課題を考案し、プロジェクトを進めている。現在よく使われている複数のオンライン心理学実験システムの評価を行った結果、GORILLAという実験ビルダーを採用した。実験課題として、価値判断を求めるL2文章課題において、ビジュアル・イメージが判断に及ぼす影響を検証することとした。先行研究によれば、よく知られた道徳ジレンマ問題をL2で課した場合、行動判断はL1の場合と異なる傾向を示すが、これはL2言語処理に認知資源を割かれるため十分なビジュアル・イメージが行われないからだとされている。この点に着目し、イメージのしやすさを操作し、その効果を検証する。現在、システムの実効性の検証を兼ねた予備実験を実施している。また、感染状況を睨みながら、実験室での実験実施に向けた対策を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、新型コロナウイルス感染が収束あるいは収束方向に進み、大学が通常の体制に戻れば、当初計画していたfNIRSによる脳機能計測実験を行う。ただし、現下の感染状況を鑑みるとその可能性は高くないと見ている。オンライン実験の実効性を予備実験で確認した上で、オンライン実験を実施する予定である。また、外国語副作用に関連する認知脳科学的研究、認知心理学的研究のレビューをより精緻に行う。それを踏まえ、これまでの我々の実験成果をレビューし、論文執筆へとつなげる予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下の通りである。2020年度は新型コロナウイルス感染のため実験実施、国内外の学会出張が不可能となったため、実験実施、出張計画を延期し、研究期間の再延長を行なった。そのため、次年度使用額が生じた。 使用計画だが、感染状況の長期化に備えて、対面での実験ではなく、インターネットを介したオンライン実験を実施して行く予定でいる。また、これまでに得られた成果の発表をオンライン開催の学会を中心に行う予定である。残額はこれらの研究活動を行うために使用する。具体的には、オンライン心理学実験システムのライセンス契約、コンピュータの購入、実験参加者・補助者の謝金、国内の学会等への参加に係る経費、図書、文献購入費、消耗品費である。
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Research Products
(1 results)