2018 Fiscal Year Research-status Report
大規模定型発達群を対象とした自閉症傾向に特異的な感覚処理特性の心理物理学的検討
Project/Area Number |
17K00214
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
日高 聡太 立教大学, 現代心理学部, 准教授 (40581161)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 視聴覚相互作用 / 視触覚相互作用 / 自閉症傾向 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,物体の視覚的な運動方向(左右)と音の高さの変化(高低)の関係性を学習すると,静止した視覚刺激を提示した際にも,例えば音の高さの変化が高低と提示された場合に右方向の視覚的な動きが知覚される,という視聴覚相互作用における知覚学習効果と自閉症傾向との間の関係性について67名を対象とした研究結果をとりまとめた。日本版AQ score質問紙を用いて自閉症傾向の高低を測定した。全体的な自閉症傾向に加え,5つの下位項目(社会的スキル・注意の切り替え・細部への注意・コミュニケーション・想像力)のスコアを算出した。そして,注意の切り替えが不得手,即ち注意が過度に集中するという特性と学習効果との間に正の関係性が見られた。この結果は,注意は知覚学習を下支えするという知見と一致し,また別の視聴覚相互作用における知覚学習効果を扱った他の研究グループからも同様の報告がなされた。 さらに,視触覚相互作用において,画面上に提示された視覚物体の縞模様の傾きを判断する課題を行っている最中に手に振動が提示されると,視覚物体の見えが阻害されるという視触覚間の知覚的抑制効果と自閉症傾向との間の関係性についても55名を対称に検討した結果をとりまとめ,自閉症傾向が強い参加者ほど抑制効果が強くなることが示された。この結果は自閉症の診断を受けた方はより強い触覚や自己受容感覚を持つという知見と合致するものであった。 また,触覚情報処理において第一人者(Prof. Matthew R. Longo教授)の研究室(Birkbeck, University of London)において在外研究を行い,今後更に自閉症傾向に特有の触覚における特異性を検討するため理解とノウハウを獲得することが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,これまでの研究成果を着実に実施,公表することができ,2本の国際査読誌論文を発表するに至った。また,1件の学会発表も行った。当初の研究計画で予定した研究内容は概ね実施済みであり,他の知見についても随時公表する準備を整えている。以上のように,当初の研究計画以上の成果があがったといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から,触覚情報処理と自閉症傾向との間に強い結びつきがあることが分かった。そこで,平成31年度は,在外研究で培った知識とノウハウを活かし,触覚情報処理と自閉症傾向との間の関係性を調べる研究を実施したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
理由:平成30年度は在外研究を行ったため,旅費の支出が執行額の大半を占めた一方,滞在先での物品の購入などは不要であった。また,研究の実施成果を公表に務めたが,予想よりも少ない査読回数で論文の採録が決定したこともあり,「人件費・謝金」の使用が当初の見積もりよりも少なくなった。その結果として次年度使用額が生じた。 使用計画:平成31年度は,触覚情報処理と自閉症傾向との間の関係性を調べるために必要な設備を「物品費」から導入し,学会等で成果公表するための「旅費」から,論文として成果公表するために必要な英文校閲費等の支出を「人件費・謝金」から行う予定である。他の区分についても当初の計画を考慮に入れながら慎重に使用を行う予定である。
|
Research Products
(4 results)