2018 Fiscal Year Research-status Report
Sense of agency after exposure to delayed sensory feedback: How does it covary with the change in perception of synchrony?
Project/Area Number |
17K00218
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
菅野 禎盛 九州産業大学, 商学部, 教授 (90352103)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 感覚運動協調 / 順応 / 行為主体感 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
人と機械の相互作用においては感覚フィードバックの遅延が行為主体感(sense of agency: SoA)を大きく阻害する。一方、遅延をしばらく経験すると順応により遅延が実際より小さく感じられることが知られている(同時性知覚の再較正、temporal recalibration: TR)。本研究では、TRによってSoAがどのように変化するのかを心理物理実験により明らかにすることを目的とした。本研究のポイントは、SoAを従来の主観報告だけでなくタッピング課題を利用した実験手法により暗黙的に測定して多面的なデータを得る点にある。平成30年度は遅延聴覚フィードバックへの順応によって生じるTRがSoAをどのように変化させるかを実験的に検証した。実験参加者は遅延聴覚フィードバックに順応した後、呈示された聴覚フィードバックが自分の動作によるものか、それとも自分の動作とは無関係にコンピューターが呈示したものかを判断した。判断データに対して信号検出理論に基づく分析を行い識別感度と判断基準という2つの指標を得た。実験は学生ボランティア18名を募り4月から10月にかけて実施し、実験の結果を9月から12月にかけて随時国内学会で発表した。実験の結果、遅延聴覚フィードバックへの順応により先行研究と同様に動作とフィードバックの同時性知覚の再較正が生じた。また、呈示される聴覚フィードバックが自己によるものかそれともコンピューターによるものかを区別する際に、動作のタイミングとフィードバックのタイミングのずれ、およびずれの変動が知覚的手がかりとして用いられることが分かった。さらに新しい知見として、同時性知覚の再較正は自己と他者の行為を区別する知覚的な手がかりに対する感度ではなく、どこまでのタイミングのずれおよびその変動を自己の行為に伴うものとして許容するかという判断基準に影響を及ぼすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自身が代表を務めた前の科研費課題が研究終了予定年度までに完了せず、一年間延長して本研究課題と同時並行的に実施した。それにより本研究課題の遂行に振り分けるはずであったエフォートが減少し、研究課題の開始が遅れたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は学術論文としてまとめつつある研究結果を国際学術雑誌に投稿する一方で、遅延視覚フィードバックへの順応に関しても同様の知見が得られるかを実験的に検証する予定である。遅延視覚フィードバックとしてフラッシュ光の点滅を使った予備的な実験はすでに実施しており、実験手続きの改善点をある程度洗い出すことができている。具体的には、聴覚フィードバックと比べて視覚フィードバックの実験は課題難易度が高く、自分が光を呈示したのか、他者(コンピューター)が光を呈示したのかを識別することが難しい。そのため、遅延条件と統制条件との条件差が現れにくくなっている。今後、視覚刺激を動きのあるものにすることで課題の難易度を下げて再度実験を行う予定である。なお、研究の進捗状況が前述のように遅れていることから、研究期間の延長を申請する見込みである。
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Causes of Carryover |
研究の進捗遅れから、当初計画していた学術論文の投稿と出版のための費用が発生しなかったため。また、学生ボランティアが実験に参加したために謝金の発生がなかったため。この次年度使用額は研究期間の延長申請をすることで使用する計画である。
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