2017 Fiscal Year Research-status Report
時間周波数平面を自在に操るハイパーミキサーの研究と研究者用音源データベースの構築
Project/Area Number |
17K00229
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
高橋 弘太 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10188005)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 音声音響データベース / リアルタイム信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,レコーディング・スタジオなど音響信号処理現場で応用可能であるだけでなく,高齢者にとっても聴き取り易い音響システムの実現に役立つスマートミキサーを実現することであった.この目的の達成のためには,専用の音源データベースが必要なだけでなく,時間周波数平面でのリアルタイム処理を多チャネルで行う必要上,FPGAによる専用処理系を構築する必要がある. そこで本年度は,FPGA処理の構成要素であるIP(intellectual property core)を設計・製作することからはじめた.手順として,最も基本となる処理要素はハードウエア記述言語Verilogで記述し,それをIPインテグレータ上で組み合わせてより上位のIPを作っていく手法をとった.成果としては,120個以上のIPを準備することができ,今後の本研究に役立てる準備が整った.また,時間軸を自在に操るためには,信号を一時的にバッファリングする必要があり,そのための時間合わせのIPも製作した. なお,時間周波数平面の信号を何ビットの数値で処理すれば十分であるかのシミュレーションはC言語ベースでの専用評価系を作って調査した.その結論として得られたビット長でFPGAを設計したところ,実装可能であることがわかり,今後の計画の遂行に支障がないことが示されている.また,本研究で用いる音源データベースについては,収録とモニタリングの環境の整備をするとともに,収録ずみの音源については,リップノイズを除去するなどの処理を行っており,今後の提供への準備が進んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が概ね順調に進展していると判断した理由は以下の3つに分けて説明することができる.まず第一に,FPGAの設計が滞り無く行うことができるかということが重要な観点だったが,今後研究で利用可能な実用的IPの設計を具体的に手がけてみて問題のないことが判断できた.第二に,必要な精度を保てるような処理系をFPGA上に実装して,リソースやクロック速度の点で現実性があるかということも要チェックであった.C言語による専用シミュレーション系を構築して得られた実験で,フーリエ変換の結果の実部と虚部を何ビットで表現すればよいかが判定でき,またパワーや対数パワーを何ビットで表現すれば良いかも判定でき,それらの結果を反映したIPをFPGA設計ツールで設計したところ,実装可能であったので,この第二の問題もクリアできたことがわかった.第三の観点は音源である.すでに録音ずみの音源についてチェックを行い,再録音が必要になるなどの大きな問題は生じていないので,この観点からも研究が概ね順調に進展していると判断できた.これら3つの項目を勘案して上記の判断をした. なお,今後起こりうる可能性のある障害としては,以下のことがあげられる.第一は,FPGAの開発ツールをバージョンアップしたとき,古いバージョンのIPの動作に不具合が出る場合である.この場合は,若干時間の遅れはとるが,IPを設計しなおして対処する.しかし,大きく時間の遅れが出そうな場合には,FPGA開発ツールはバージョンアップせず,古いバージョンを利用して研究が大きく滞ることは避ける予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
以上で説明したように研究は概ね順調に進展していると自己評価しているので,今後の研究についても予定どおり行う.まず,FPGA上のハイパーミキサーについて,IPを蓄積していく作業をさらに続ける.個々のIPに問題があると研究の終盤で足元をすくわれてしまうので,今のうちにしっかりしたテストベンチを作って,IPの動作確認も着実に行っていく.そして,完成度の高いIPが揃ったら最上位ユニットを設計する.まずは時間軸の成分移動を最初に手がけ,そのあとで周波数軸の成分移動も手がける.同時に,同じ目的を達成する複数のIPを作成し,その機能や性能を比較することで,最も良いIPに交換していく.また,ハイパーミキサーを複数台用意して,その機能を同時に比較できるようにする.さらに,時間周波数平面における信号処理技術の体系化にも挑み,様々な用途に最も適した時間周波数平面信号処理を理論的必然性を持って選べるようなフレームワークを構築することを試みる.これによって,ミキシング分野にとらわれすに,信号処理分野全体への波及効果を狙う.一方,音源データベースについては,新しいタイプの音源の収録い編集して公開する.
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Causes of Carryover |
購入を予定していた書籍が廃刊となったため残額が生じた.しかし,この書籍から得る必要があったのは補助的情報であったので,研究の遂行上には支障はない.翌年度の研究は計画どおりとして,残額の655円は代わりの書籍購入にあてる予定である.
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Research Products
(1 results)