2017 Fiscal Year Research-status Report
喉頭全摘出者の代替発声を対象とした声質改善装置の研究開発
Project/Area Number |
17K00258
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐宗 晃 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (50318169)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 音声分析 / 声質改善 / AR-HMM / 食道発声音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
音声は最も重要なコミュニケーション手段であり、高齢者のみならず人が充実した社会生活を送るために欠かせない要素である。しかし、喉頭がんの進行により喉頭全摘手術を余儀なくされ、自分の声を失う高齢者は少なくない。不幸にして喉頭全摘出となった場合、電気式喉頭や、ゲップを音源とする食道発声法などの代替発声法が利用されるが、習得が困難で、明瞭性や自然性が大幅に劣化する。本研究課題では、食道発声音声から直接観測できないゲップ音源と声道特性とを高精度に分離し、喉頭全摘出前に収録した自分の音声から推定した声帯音源と入れ替えて音声を再合成することで、もとの声質に近い発声を可能にする声質改善装置の研究開発を目的とする。 研究代表者は、声道フィルタをAuto-Regressive(AR)フィルタで、声帯振動による駆動源をHidden Markov Model(HMM)で表現するAR-HMMに基づいた音声分析法を提案し、高基本周波数音声の分析において著しく分析精度が劣化するという従来法の問題点を大幅に改善できることを示している。H29年度はこのAR-HMM音声分析法を食道発声音声に適用し、声道特性とゲップ音源のより高精度な分離の実現を試みた。具体的には、食道発声音声から推定した声道特性に音源の特徴が残留する場合が生じることを実験的に確認した。更に詳細な解析を行った結果、音源の残留特徴は声道フィルタの実軸上の極として現れることを明らかにした。この結果を踏まえて、そのような極の発生を抑制する制約条件を導出し、それを組み込んだ新しいAR-HMM分析法を構築した。そして、最も精度が良いとされる従来法と比較して、提案法の精度が良くなることを実験的に確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、食道発声音声から直接観測できないゲップ音源と声道特性とを高精度に分離し、喉頭全摘出前に収録した自分の音声から推定した声帯音源と入れ替えて音声を再合成することで、もとの声質に近い発声を可能にする声質改善装置の研究開発を目的とする。このアプローチにおいて、食道発声音声の声質を劣化させている主原因のゲップ音源を除去するために、音声分析において如何に高精度に声道特性とゲップ音源を分離できるかが重要となる。H29年度はこの点に関して、AR-HMM音声分析法の分析精度を着実に改善できたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
食道発声音声をゲップ音源と声道特性とに分離し、喉頭全摘出前に収録した自分の音声から抽出した声帯音源に入れ替えて、リアルタイムで音声を再合成することで、もとの自分の声質に近い発声を可能にする声質改善装置の研究開発を行う。HMMパラメータを繰返し推定するAR-HMM音声分析法が、リアルタイムで声質改善を行う装置の分析法として適切でない場合、予めユーザーの少量サンプルからゲップ音源のHMMパラメータをオフラインで学習しておき、リアルタイムでの声質改善処理では、その学習済みHMM に基づきAR 係数と利得を適応的に推定する分析法の使用を検討する。
|
Causes of Carryover |
H29年度に国際ジャーナル論文誌に掲載予定であった論文の査読がH30年度まで持ち越しとなったため、その論文掲載料などが次年度使用額として生じた。現時点で論文の査読内容が実質的には採択判定となっているため、持ち越した予算はH30年度の論文掲載料に充てる。
|
Research Products
(3 results)