2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00263
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
崔 正烈 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (60398097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 渉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (30509089)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / 音空間知覚 / 臨場感 / 自己運動 / ヒューマンインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
高臨場感バーチャルリアリティシステムを構築するためには,情報の担い手となる人間の聴知覚特性を考慮した情報提示が有効と考えられる。本研究の目的は,自己運動知覚時に見られる物理空間と知覚空間との音像定位の「誤差」,及び,「音空間知覚における空間非対称性」といった聴知覚特性の様相と高次感性との関連を明らかにし,3次元聴覚ディスプレイの高度化を目指すものである。 平成30年度は,自己運動時における聴空間の変容及び聴空間の非対称性について,空間参照枠,聴知覚の近方と遠方空間を中心に検討を行った。聴知覚の近方と遠方空間における研究では,オブジェクトへの接近と遠離では異なる聴知覚メカニズムが働く可能性のある知見を明らかにした。また,空間参照枠における検討では,聴空間非対称性の時空間特性を感覚モダリティによる影響のみならず,空間参照枠面からその違いを調べるために実験を実施した。従来,空間対象の脳内表現には,自己身体軸を基準とする表現と,空間内の対象を基準とする表現の2 通りがあると言われており,どちらの表現を用いるかで異なる空間定位が行われる可能性がある。ここでは,環境中心座標系においての自己運動時の音空間知覚特性を調べ,環境中心座標系では自己中心座標系で見られる座標軸不同による「負荷」は生じず,音像定位の精度が比較的高く,音像を自己運動方向とは反対側にシフトして定位する知見を示した。 これらの知見は,自己運動を知覚する場合に,対象物の位置を本来の位置より自己の近くに定位することで衝突回避準備時間を設けるという,危険回避予測のメカニズムが働く可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画に記載した「音空間知覚における空間非対称性」という聴知覚特性の生起要因とその特徴を明らかにすることに関して,「空間参照枠の違いに基づく検討」という文脈で実験を実施し,詳細に分析を行った。その結果,環境中心座標系では自己中心座標系で見られる座標軸不同による「負荷」は生じず,音像を自己運動方向とは反対側にシフトして定位するという知見を示した。これは,自己運動時には対象物の位置を本来の位置より自己の近くに定位することで,危険回避予測のメカニズムが働く可能性を示唆するものである。また,聴知覚の近方と遠方空間について運動速度の違いを中心に検討を行い,オブジェクトの接近と遠離では異なる聴知覚メカニズムが働く可能性のある知見を明らかにした。 これの研究成果をまとめ,日本バーチャルリアリティ学会と日本基礎心理学会にて発表を行った。これらのことを総合し,概ね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,能動運動と受動運動の差異に着目し,能動的自己運動と受動的自己運動の両側面から自己運動の性質による違いの有無,及び特性の差異について検討を行う。また,各感覚刺激の種類と強度,時間特性等のパラメータを与えた場合の,自己運動知覚時における聴知覚特性の予測手法を検討する。次に,予測結果を3次元聴覚ディスプレイに組み込み主観評価実験を行い,予測の高精度化のための再検証を行う。更に,自己運動速度の違いにおける身体近傍空間への影響について,ヘッドマウントディスプレイと自転車というバーチャルとリアルの組合せ実験環境を構築し,詳細な検討を進める予定である。これらに加えて,前年度までに行った実験結果の分析を進め,国内外の研究会にて積極的に公表を進める計画である。
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Causes of Carryover |
平成30年度は,2つの実験を実施しており,その成果は主に国内学会にて公表したため,当初計画していた英文校閲費と国際会議参加費等が若干残っており,翌年度に繰り越すこととなった。ただし,繰り越す金額は何れも10万未満と少額であり,ほぼ当初計画通りに使用したと考えられる。 平成31年度は,国際会議への参加も含め,実験結果の対外発表を積極的に行う予定であるため,当初の計画より,実験参加者謝金に加えて,国内外での成果発表等に有効に活用する予定である。
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