2017 Fiscal Year Research-status Report
大規模イベントデータの俯瞰のための可視化手法の研究
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17K00264
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
三末 和男 筑波大学, システム情報系, 教授 (50375424)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 情報可視化 / 時刻データ / 2.5次元表現 / 次元圧縮 / グリフ設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では大規模イベントデータを対象とした可視化手法の高性能化を追求している。イベントの集合(すなわち時刻の列)を2次元平面上の位置で表現する手法ChronoViewは、大規模データへの有効性が認められる一方で、読み取れる情報に関して弱点も見つかっている。そこで、ChronoViewの拡張に関して、(課題A)周期への依存度の低い表現形式への拡張、(課題B)表現空間の局所的な集中の回避、(課題C)分布を把握できる表現の付加という三つの課題に取り組んでいる。 [課題A] ChronoViewの配置規則では指定された表現周期に基づいて平面上の位置を決定する。表現周期に依存して読み取れる情報が大きく変化するため、適切な表現周期の探索が課題となる。探索を容易にするために、2次元上の円によって表現されるChronoViewに第3の次元を導入した。具体的には、2.5次元表現を採用し、2次元+周期軸データの可視化手法を設計した。 [課題B] ChronoViewではデータによっては、多くのイベント集合が表現平面の中心部に集中し、解像度が不足することがある。このような問題に対して、表現平面を円座標で表現し、動径座標と角度座標それぞれに関する二つの写像によって座標変換することを考えた。具体的には混雑度の評価関数を用意するとともに、写像 f(r)=1-(1-r)^a を前提として対象データに合ったパラメータaを探索する手法を試みた。 [課題C] ChronoViewは円標系において時刻の平均と分散を表現したものと捉えることができる。ただし、データの分布を把握するためには必ずしも表現力が十分ではない。そのため、分布をイメージしやすい視覚的表現を設計し付加することが課題である。そのような課題に対して、グリフの試作とChronoViewによる配置と多次元尺度構成法(MDS)による配置の統合を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
[課題A] ChronoViewを2.5次元表現に拡張した。表現平面に直交する第3の軸で表現周期を表すこととし、複数の表現周期によるChronoViewを同時に表現できるようにした。さらに、表現周期の探索を支援するために、二つの表現平面をつなぐリンクなどの視覚的表現を導入した。そのように設計した視覚的表現を視覚的ツールとして実装するとともに、周期性に関するスペクトルの表示機能も組み込んだ。ここまでの成果に関して、情報処理学会第177回HCI研究会(2018年3月)で発表した。 [課題B] ChronoViewの表現平面を円座標で表現し、動径座標と角度座標それぞれに関する二つの写像によって座標変換することを考えた。一般的な写像として f(r)=1-(1-r)^a を考え、対象データに合ったパラメータaを探索する手法を検討した。対象データに合うということは、写像により局所的な集中を避けることができるということから、まず視覚的混雑度の評価関数を用意し、その評価関数を最適化するような探索を試みた。素朴な手法を試作できたが、改善の余地がまだ多いと考えている。 [課題C] 課題Cについては平成30年度以降の実施を予定していたが、学生の協力が得られたため平成29年度に先行して実施した。時刻データの分布の把握を助けるために、ChronoViewにおいてイベント群を表す点をグリフに置き換えることを考えたが、その後発想を転換した。うまく設計されたグリフはそれだけでも時刻データの分布を表現できるため、むしろ、イベント群間の特徴を表現することが課題であると考えた。そこでグリフの配置手法としてChronoViewとMDSを統合することを試みた。まず2次元平面上での統合に挑戦し、平面を歪ませて統合する手法を考案した。この成果に関して、情報処理学会インタラクション2018(2018年3月)で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
[課題A] 2.5Dに拡張したChronoViewに関して、表現手法およびインタラクションの基本的な妥当性を検討する。また第3の次元の表現手法として、スモールマルチプルやアニメーションなどの利用を検討し、表現手法として妥当と判断したものについてプログラムを実装する。さらに、データの特徴発見に対する有効性を、実装したプログラムを用いて評価する。実装したプログラムで具体的なデータを可視化する。 [課題B] これまでは、写像の一般形を定めておいて、データに関して適当なパラメータを探索することを検討してきた。しかしながら、その方式は、(1)局所集中の改善が一般形の表現力に限定される、(2)パラメータの効率的な探索が容易でない、という難しさを抱えていることを認識した。そのためその方式は一旦棚上げとして、データの分布を見ながら表現空間を直接歪ませる手法を検討することにする。密な部分は空間を広げ、逆に素な部分は空間を狭めるということを、再帰的に繰り返すような手法を試みることを考えている。 [課題C] グリフの配置手法として、ChronoViewとMDSの統合手法を引き続き検討する。これまでに試みた2次元平面上での統合は、平面を歪ませる必要があり、ChronoViewの特徴とMDSの特徴を十分に活かせていなかった。そのため、次の試みとしては3次元空間上での統合を検討する。ChronoViewによるxy座標を決め、イベント群間の類似性を3次元空間内のユークリッド距離で表現できるようにz座標を決めることを考えている。MDSによって3次元空間を自由に利用できないため、通常のMDSとは異なる手法を検討する必要がある。古典的なグラフレイアウト手法であるKamada-Kawai方式を参考に、擬似的はMDSを試みる。
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Research Products
(2 results)