2017 Fiscal Year Research-status Report
Evolving Artificial Intelligence for Swarm Robotics on Cloud Computing
Project/Area Number |
17K00302
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松村 嘉之 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (50362108)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | クラウド計算環境 / スワームロボティクス / マルチエージェントシミュレーション / 創発的群挙動 / 社会システムデザインへの応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
AWSと連携したハイブリッドクラウド計算環境を整えている。そして、このハイブリッドクラウド計算環境で、現在までに開発してきたcloudstackでの進化計算用のグリッドシステムを、クラウド上での進化計算専用グリッドサービスとして提供していく準備を進めた。特に、アマゾンウェブサービス(AWS)に代表されるパブリッククラウドも利用し、いくつかのマルチエージェントシミュレーションによる計算機実験結果が得られた。以下に、スワームロボティクス研究課題について、群れの創発を狙った自律分散型機械学習方式の確立を目指した基礎計算機実験を通じて得られた今後の指針と考えられる知見を一部記述する。 複数のモデル実験を多元的モデルと単純モデルの場合において実行した結果、多元的モデルの場合は各エージェントの利得総和において非決定論的カオス挙動が生じたのに対して、単純モデルの場合は線形的な挙動を示した。また、両モデルにおいて利得が安定的に生じたのは、大域的なゲーム相手探索よりは局所的なゲーム相手探索によるゲームの繰り返しの場合であった。以上により、内部状態の変動は外的な状態の変動に影響を与え、外部状態の変動は内部状態の変動ともなり、内部状態の多元性は複雑な挙動を招きうることが示された。 さらに、社会システムへの応用を指向し、ヘテロな環境をエージェント間の相互作用における多元的な利得獲得のゲーム理論として利得ゲームを構成し、学習・記憶・模倣をエージェントの判断に構成し、そのモデル挙動も観察した。これらのモデル挙動は、繊維業界のデータ分析の結果として得られた事実と類似していることを確認した。なお、繊維業界のデータと、フラクラル性が確認されている料飲関係の関係性のネットワーク分析結果に関連して、定性的な事例研究をプラットフォーム研究論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究室のプライベートクラウド環境を安価に構築するため、徹底してオープンソース技術を採用している。特に、AWSの様なパブリッククラウド環境と連携させたハイブリッドクラウド環境を整備することにより、AWSパブリッククラウド環境との連携を鑑みた計算機実験環境は、安価ではあるがそのスケールアウトな拡張性が期待できる。以上より、インターネット経由で、いつでも、必要なだけの計算資源を容易に迅速に揃える事ができる環境を整えた。 スワームロボットシステム(SRS)において、従来の自己組織化原理に基づく行動制御方式では、「定点に集合する」「互いに離れる」などの非常に限定的な単純タスクしか達成できないのが現状である。そこで、SRSを可塑的群知能システムとして構築するための新規設計論を構築することを目標にして、難易度レベルの異なるいくつかのマルチエージェントシミュレーション問題を取り扱い、群挙動の創発を試みた。社会システムデザインにつながる様、ゲーム理論の枠組みをシミュレーションに取り入れ、繊維業界の実データ分析を実施し、その比較検証についても言及した。特に、シミュレーション結果に対して、複雑ネットワーク理論の視点から分析することを想定し、研究課題初年度は、繊維業界の実データ分析について、今後のマルチエージェントシミュレーション問題での結果との比較を意識して、重点的に分析を進めた。エージェントシミュレーションにつながる具体的な繊維業界の分析結果に関連する今年度に判明した知見について、以下に一部記述する。 為替変動に起因するネットワークの構造変動として、マクロ的指標であるネットワーク直径に関して負の相関、ミクロ的指標であるハブ企業の次数中心性に関して正の相関が確認された。コミュニティ構造の変遷から、ネットワーク構造を粗視化することで、有機的なリンク関係の結合性が失われつつあることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後のマルチエージェントシミュレーション問題での取扱いを意識して、重点的に現在までの繊維業界のデータ分析を進める中で、ハブ企業の変遷を分析することで、非ハブ企業が近年中心に移動してきたことが明らかになり、定性的分析を併用するとSCMシステムの導入に関わる企業であることが明らかになり、中心化した時期も一致するため、情報産業化への変遷として新たなハブが生じたことが解釈上明らかになった。 これらの分析によって、為替変動に連動して衰退した事実を、ネットワーク指標として解釈することが可能であるため、為替変動に対するネットワーク挙動の異なりは、ゲーム理論からは相補ゲーム的に相互作用が生じていると解釈可能である。また産業の変遷という視点によって、衰退のみではなく経済的な効率性が向上したと解釈も可能であることが確認されたことから、今後のエージェントシミュレーションの設定を、社会システムの進化という観点からも、一見異質な二群は共通した性質,中心化≒集中化,分離≒分散化の機能を有することを想定して実験を進める。特に、これらの社会システムは、ヘテロな環境をエージェント間の相互作用における多元的な利得獲得のゲーム理論として利得ゲームを構成し、学習・記憶・模倣をエージェントの判断に構成し、そのモデル挙動を観察していく。 なお、個別エージェントの人工知能に関して、CMAの中立型進化計算手法への拡張と複数の進化計算手法をハイブリッド化させ、超並列分散性に対応する。特に、いくつかの動的スケジューリングを進化計算用に連携させることにより、エネルギー消費を見積もって計算機実験を行える様にも進めていく。複数拠点での計算機環境を整備すると共に、計算機実験結果より得られた人工知能の構造と機能の関係も複雑系ネットワーク分析により明らかにできるよう進めていく。
|