2017 Fiscal Year Research-status Report
形式意味論的アプローチに基づく同時的言語解析システムの開発
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17K00303
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 芳秀 名古屋大学, 情報連携統括本部, 准教授 (20362220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 漸進的解釈 / 意味解析 / 談話表示構造 / モデル理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,形式意味論的アプローチに基づき,自然言語文の同時的理解を実現するための意味解析技術を開発する.平成29年度は,「同時的な言語理解の観点からの形式意味論的意味解釈モデルの設計」を実施した.具体的には以下の項目を実施した. (1)談話表示理論における談話表示構造をベースに,文の断片に対する意味構造を設計した.自然言語文を同時的に意味解析するためには,文を途中まで読んだ段階で,読み込んだ文の断片に対してその意味構造を与える必要がある.本研究では,文の断片において欠けている部分を変項として表現することにより,文の断片に対する部分談話表示構造を定義した.また,文の入力と同時進行的に部分談話表示構造を構成する方法を開発した. (2)同時的な言語理解の観点から,文の断片に対する部分談話表示構造のモデル理論的な意味解釈を設計した.談話表示構造のモデル理論的な意味解釈がこれまでに提案されているが,本研究はこれを拡張したものとして位置づけられる.発話が進行し,文の内容が段階的に確定していくにつれて,それが持つ意味情報は原則,単調に増加すると考えられるが,本研究において開発した意味解釈は,このような性質,すなわち単調性をもつ意味解釈となっている.また,文の断片に対する部分談話表示構造は,一文を読み終えた時点で文の談話表示構造となるが,開発した意味解釈は,最終的に得られる文に対する談話表示構造の従来の意味解釈との整合性を保ったものとなっている.開発したモデル理論的意味解釈は,このような同時的な言語理解に適した性質を有している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,プロジェクトの初年度として,同時的な言語理解の観点を考慮したモデル理論的意味解釈を設計した.研究の目標として設定した,「意味解釈の単調性」,並びに「一文単位の意味解釈との整合性」といった同時的意味解釈が持つべき性質を,開発した意味解釈は有している.今年度の研究成果は,本研究の理論的背景を支えるものであり,研究は順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,(1)意味解析を指向した同時的構文解析システムの開発,(2)同時的意味解析のための言語資源の整備を進める.当初の予定では,構造化パーセプトロンに基づく同時的構文解析システムを想定していたが,加えてニューラルネットワークに基づくアプローチについても検討する予定である.なお,これは研究の骨子を変えるものではなく,研究計画を大きく変えるものではない.
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Causes of Carryover |
今年度に実施を予定していた意味解析を指向した同時的構文解析システムの開発について,同時的意味解釈モデルを考慮する必要があるとの判断に至った.そのため,次年度に実施予定であった同時的意味解釈モデルの設計を,同時的構文解析システムの開発と並行して進めるように研究計画を変更したが,その結果,同時的構文解析システムの開発については今年度に続いて次年度も検討することとなり,次年度使用額が生じた.
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