2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exploring the origin of the nervous systems : Experimental and theoretical study of evolution from epithelium systems to epithelium-nervous systems
Project/Area Number |
17K00330
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Research Institution | Aomori University |
Principal Investigator |
黒田 茂 青森大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (90431303)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 初期神経系 / 生物運動 / 数理モデル / 画像解析 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物は上皮細胞シートのみからなる無神経生物から、上皮ー神経系からなる体制へ進化したと言われている。このような進化はなぜ・何の為に起こったのか? 本申請研究では、実験的方法と数理モデリングの両面から、運動の評価を通じた上皮系および上皮ー神経系の間の差異を明らかにすることによって、初期神経系の起源問題に、個体における動く仕組みの進化の観点からアプローチした。生物材料として、神経系を有する最も原始的な現生の生物の一つであるヒドラを用いた。ヒドラは薬品処理を施すことで、神経細胞を取り除いた形で培養することができる(上皮ヒドラと呼ばれる)。この上皮ヒドラとヒドラを神経系の誕生という進化上の分岐点の直前直後に位置する生物モデルと見立てて研究を行った。 まず、グリーンヒドラ(Hydra viridissima)に神経細胞を除く薬品処理を行った推定上皮ヒドラにおいて、既存研究で報告されている上皮ヒドラ(hydra vulgaris)と同様の形態学的特徴および行動が確認された。推定上皮ヒドラにおける特徴として、これらに加えて、移動運動性の激減した。総じて、推定上皮ヒドラでは大きくゆっくりとした動きは保たれているが、(触手を除く)体の部位の局所的な動きが欠如することが確認された。 上皮モデルに前神経細胞を突然異変的に導入したモデルのシミュレーションによって、比較的少数の変異体の存在によって、局所的な収縮→局所的変形、屈曲が生じることが明らかになった。 以上のことから、移動能力の向上が生存可能性を向上させる環境において、小数の前神経細胞が突然変異的に出現した個体は子孫を増やした、とする初期神経系の進化の起源についての一つのピクチャを得ることができた。
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