2021 Fiscal Year Research-status Report
Probability Distribution Approach to Image Dictionaries for Compressed Sensing
Project/Area Number |
17K00340
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
相田 敏明 岡山大学, ヘルスシステム統合科学学域, 講師 (60290722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 圧縮センシング / 画像処理 / 統計物理 / 辞書 / スケーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たるテーマは,圧縮センシングである.これは,対象について多数の特徴を事前に用意することにより,少数のデータからの推測を可能にするもので,原理的に最も高性能な統計的推測手法である.しかし,圧縮センシングを実問題へ応用するに当たり本質的役割を果たす,辞書行列については不明な点が多い.例えば,情報内の相関の強さと縦横比の最適な関係等について,定性的にはその性質を理解できるものの,定量的にはそれらが明らかにされていない.そこで本研究では,辞書行列内の基底ベクトルが従う確率分布関数の解明を通して,様々な性質の定量的解明へアプローチするものである. 具体的には,画像処理への応用に必要な画像辞書を例に,次の3つの課題の解明を計画している.(1)画像辞書の従う確率分布関数の解析的導出,(2)画像辞書サイズの従うスケーリング則の解析的評価,(3)確率分布関数からの画像辞書の高速生成.これらの内,課題(1)については,既に解明済みである.課題(2)の解明には,統計物理学のレプリカ法を応用して,「劣化画像の復元問題」の解の,大自由度極限における典型的な振る舞いを解析的に評価することが適切である.そこで,上記問題の解の典型的な振る舞いを記述する非線形連立方程式を導出し,2次までの摂動近似により解析することを試みた.しかし,摂動展開の基点となる解が複数存在することや,また,展開パラメータが不明瞭だという困難さのため,なかなか適切な解を得ることが出来なかった.昨年度までの研究成果である,適切な摂動展開の基点となる解と展開パラメータの同定に引き続き,今年度は,システムを記述するパラメータが従う,非線形連立方程式の解をより詳細に解析した.それにより,(1)パラメータ間の最適な関係,(2)情報内に相関が存在するとき,ある最大値以下の疎性を課さなければならない,といった性質が定量的に明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在までに,本課題が有する困難さは,次の3点であった.(1) 情報内の相関やノイズの強さに対するシステムの応答を調べるには,それらのパラメータについて2次までの摂動解析が必要.(2) システムを記述するパラメータが従う非線形連立方程式を摂動的に解析するに当たり,摂動展開の基点となる解が複数存在することや,また,どのパラメータの組合せを展開パラメータとすべきか不明瞭.(3) 非線形連立方程式を摂動展開しても,依然として,各摂動レベルの方程式の解を得ることが容易でない. これらの困難に対して,(1)は数式処理ソフトウェアの援用により解決が可能となった.(2)は,昨年度までに解決済みである.(3)について今年度は,昨年度までに得た解を改良し,摂動展開後の方程式の解をほぼ完全に得ることが可能になった. 残りの課題として「解の安定性の為の条件」の導出が最も重要である.また,(3)確率分布関数からの画像辞書の高速生成,という課題も残されているが,これについては理論的な困難さは存在しない.
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り,本研究課題の数々の困難な点は解決に至ったが,「解の安定性の為の条件」の導出という,必ず明らかにすべき課題が残されている.しかしこれは,純粋に理論的な課題であるため,ソフトウェアの援用等が可能ではない. そこで今後は,新型コロナウィルス感染症の感染拡大の状況を踏まえた,学内での教育・研究環境変更の必要への対処を効率的に行い,研究時間を確保する.
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Causes of Carryover |
今年度も,世界及び日本国内での新型コロナウィルス感染症の感染拡大の状況を踏まえ,学内での教育・研究環境の変更の必要に対処するため,本研究のための研究活動が十分に実施できなかった.また,研究成果発表の機会も非常に限られた状況にあった.次年度使用額は,得られた研究成果を発表する際に必要な,学会参加費や旅費等に充当する.
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