2018 Fiscal Year Research-status Report
慣性アシスト付き2足ロボットおよび人の歩行のスムーズな補助
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17K00369
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
米田 完 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70221679)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 2足歩行 / 歩行アシスト |
Outline of Annual Research Achievements |
2足歩行ロボットにおいて、おもりの加速やホイールの角加速により、前方振り出し運動の誘発および足上げ運動の補助を行うためのさまざまな手法について有効性を検討した。これらの慣性アシストの効果を実験的に検証する等身大の2足歩行ロボットを試作した。全高1650mmで、歩行の周期はほぼ人間と同じにできる。すねに相当する位置でほぼ水平におもりを加減速させるアシスト、腰部で円板に角加速度を与えるアシストを行う。このほかに脚先で床面を下方に蹴る機構、ほぼフリーな腰関節を非常に弱いトルクで駆動する機構、支持脚時にかかと部分で床面をごく弱い力で蹴って支持脚を前方に傾ける運動を誘発する機構を補助的に装備し、アシスト前の歩幅の非常に小さい歩行の状態を作り出すようにしている。 また、実際の人間に対する慣性アシストについて、もっとも基本的と思われる前後方向へのおもりの加減速による脚振り出し補助の試行を行った。脚の慣性や筋肉の発生力に比較してアシスト力が小さかったため、歩幅の増大量はわずかであるが、実験データとして取得することができた。 一方で、慣性アシストによって歩行運動を安定化し、長周期でも倒れにくくする手法について、模索を開始した。等身大ロボットの腰部の円板を利用して、高速回転するホイールによるジャイロ効果を生成する手法を試みたが、慣性モーメントと角速度がロボット全体に対して小さいため、効果はほとんど見られなかった。そこで、小型2足歩行ロボットの腰部にホイールを付け、高速な定常回転によって角度変化を抑制することを試みた。これにより抑制なしの場合に比較して周期の長い歩行でも安定性が増した。ただし、2周期ごとに変化する揺動運動が生じるなど、解明できていない課題が存在することもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
等身大ロボットによる実験では、1ステップすなわち片脚を上げている時間を0.5秒程度にした場合に運動が定常的に連続しやすかった。しかし、0.8秒程度に長くすることにより、脚の振り出し距離が大きく、すなわち歩幅が増えてアシストの効果が大きく見られた。長周期の左右揺動をしやすくしながら遊脚振り出しの慣性モーメントを増やさないようにするため、腰部を左右に延長させ、アシスト用の2つの円板および駆動装置を左右に広げて配置しなおしたところ、長周期歩行の安定性が増した。 また、おもりの水平加減速装置を前が上がる方向に傾け、遊脚を前方に振り出すアシスト時に上向きのアシスト力も発生するようにしたところ、脚を上げる高さが増し、これにともなって歩行周期が長くなり、良好な効果が実現できた。ただし、おもりの移動による重心位置変動は好ましくないため、おもりのストロークを制限した。また、おもりを加速する際の反力をアシスト力として活用するのに対し、減速時の反力については有益でないため急激にならないように徐々に減速する運動パターンとしたところ、遊脚振り出し運動が着地直前まで続くようになって歩幅の増大が見られた。 腰部の円板の反トルクによるアシストは、当初は脚上げを行うための左右揺動を補助する向きと考え、ステップの前半で遊脚を上げる方向に作用させていた。これを逆にステップの後半の脚上げ時間が一定値を超えた時点から遊脚側を下げる方向のトルクを発生させるようにしたところ、遊脚着地速度が増し、床との衝突後の逆方向への左右揺動運動が大きくなる効果を生み、結果として歩行周期を長くすることが明らかになった。さらに上記の定時間遅延方式のアシストは歩行周期が変動した場合に収束させる安定化の効果があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
歩行周期を比較的長くし、ゆっくりとした歩調で歩幅を大きくする歩行を目標として、それを実現するように、各種慣性アシストを総合して制御する手法を試みる。具体的には、おもりの並進加減速反力によるアシストと、円板の角加速の反力によるアシストを適切に同調させて行うことにより、左右揺動を伴う脚上げ動作と、遊脚振り出し動作のタイミングを調整する。脚の振り出しが最も前になった地点よりわずかに後の、後方への振り戻し運動が生じ始めて床との相対速度がほぼゼロになったタイミングで着地させ、効率よく歩幅の大きい歩行ができるようにする。この際に1ステップ分の動作だけでなく、次の動作につながる効果も考慮して、定常状態の歩行の効率を上げることを検討する。 また、慣性アシストによる歩行の安定化について、すでに試行した単純円板回転のジャイロモーメントを利用するほかにも、偏差の生じた運動を適正値に収束させるため、アシストのタイミングを制御する手法や、運動の角度を計測してアシスト量を増減させる手法を試みる。これらについて実験を行いながら定量的な検討も加えていき、安定化と歩行速度の増大とエネルギーの減少という、相反する目標の適切な実現をめざしていく。
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Causes of Carryover |
残りが少額であるため、適切な使途がなく、次年度繰り越しとした。
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Research Products
(1 results)