2018 Fiscal Year Research-status Report
目の調節機能計測技術を応用したぼんやり状態可視化技術の開発
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17K00382
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早見 武人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (60364113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋口 公章 九州大学, 大学病院, 講師 (80448422) [Withdrawn]
鬼塚 俊明 九州大学, 医学研究院, 准教授 (00398059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 垂直眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,日常生活の中で見られる何となくぼんやりしているという主観的な感覚を目の動きから客観的に得られる数値に変換することにより,人間の注意のメカニズムを解明することを目指している.本年度は,ぼんやり感に関連が深いと考えられる垂直眼球運動を解析し,その性質に関して基礎的な検討を行った. 瞬目に同期してしばしば観察される眼球の上転はBell現象と呼ばれている.眼瞼の動きは注意の状態を反映することが知られており,居眠りやその前段階である覚醒水準低下の検出でも用いられる.従って垂直眼球運動も覚醒水準低下を反映する成分を有していると考えられる.しかし垂直眼球運動は計測が難しいこともあり水平眼球運動に比べて研究例が少なく,覚醒水準との関係は不明確である.本年度は垂直眼球運動の基本的な性質を明らかにするため眼球のビデオ映像から瞳孔角膜反射法により垂直眼球運動の様子を計測し,水平眼球運動と比較した.画像計測により得られた眼位の時間変化に粘弾性モデルを当てはめ,粘性と弾性のバランスと眼球の回転方向の関係を調べたところ,眼球の上転では粘性と弾性のバランスが水平回転と同程度であったが下転ではやや粘性優位であった.このことより眼球の下転は他の方向の回転とは異なる性質を持つことが示唆された.原因としては眼瞼裏面と眼球表面の間の摩擦の異方性や垂直眼球運動を実現させる外眼筋の構造が上転と下転で異なること,さらにそれらの筋の制御信号の相違が考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視覚に対してぼんやりした感覚が生じているときには眼筋の制御機能が弱まっている可能性がある.当初は眼筋の働きの変化を客観的に捉えるためには眼球に備わる運動機能である瞳孔運動,水晶体調節,眼球運動の全てを同時に計測する必要があると考え,統合的な計測技術の確立に重点を置いて研究を進めていた.しかしこれまでの研究過程で瞳孔の動きと水晶体調節や瞳孔の動きと眼球運動の相互作用についての理解を深める知見が得られ定式化できる見込みとなったため,今後の研究において計測対象を比較的容易に計測可能な目の外観である瞳孔の動きに絞ってぼんやり感を定量化するという方針を得ることができた.但しぼんやり感に付随して起きる瞳孔の動きには水晶体の厚さや眼球の回転方向の影響があり,ぼんやり感の定量化を進める際にはこれらを考慮する必要があると考えられた.前記相互作用の原因が機械的要因,神経学的要因のいずれに起因するものであるかは現時点では明らかでない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は瞳孔の動きと他の眼筋活動の間の相互作用を表す制御モデルの精度を高めながら,実験的研究を通して瞳孔の動きに含まれるぼんやり感成分の抽出を進めることでぼんやり感の定量化を実現したいと考えている.
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Causes of Carryover |
購入する計画であった脳波計を借用で代替することにした為次年度使用額が生じた.次年度の脳波計測消耗品に充当する計画である.
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Research Products
(1 results)