2018 Fiscal Year Research-status Report
生体情報計測に基づく空間周波数特性が潜在的な感覚に与える影響評価
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17K00385
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 和夫 東北学院大学, 工学部, 教授 (60416609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒木 友裕 株式会社竹中工務店 技術研究所, その他部局等, その他 (70537414)
門倉 博之 東北学院大学, 工学部, 講師 (50805497)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 空間周波数 / 潜在的連合タスク(IAT) / IAT得点 / 脳波パワー変動 / 事象関連電位 / 視線応答 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,空間周波数特性が,観察者の大脳神経活動や視線応答にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としている. 平成29年度は,空間周波数特性を有するターゲット画像と「良い/悪い」の特性語との連合を測る潜在的連合タスク(IAT)を実施し,脳波パワー変動に基づく大脳神経活動の知見が得られた.この実験では,空間周波数画像と「良い/悪い」の特性語との直接的な連合を測定したが,潜在的意識に与える影響が少ない可能性があると判断できた.そこで平成30年度は,空間周波数画像を,四角形,および菱形のターゲット画像の背景にした場合のIATを実施した.その結果,前頭前野において潜時約500~600msに連合の強弱で事象関連電位の振幅に差異が見られ,ターゲットの背景に設置した空間周波数特性が間接的に潜在的意識に関わる大脳神経活動に影響を与えることが分かった. また,平成29~30年度には,空間周波数特性を有する画像に対する視線応答の実験も実施した.まず空間周波数特性値βを有するターゲット画像を作成した.次に,これをβ=0.0とした横6×縦5箇所,あるいは横5×縦5箇所の背景領域の1か所に挿入した.被験者には,背景に挿入したターゲット画像を探索するように指示し,その際の視線軌跡を測定した.視線軌跡の解析方法として,平成29年度は機械学習の一つであるサポートベクターマシーンを用いたが,実験者が特徴量を決める必要があった.そこで,平成30年度は自ら特徴量を決めることができるニューラルネットワークによる深層学習を用い,口頭での回答と比較しながら視線探索の検討を行った.その結果,口頭での回答に基づく空間周波数特性に対する判別の可否を決める主観的な閾値は,β=0.5付近であった.一方,深層学習ではβ=0.5より低い閾値が示され,無意識的な視覚探索の存在が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで2年間(平成29~30年度)研究を実施してきたが,交付申請書に記載した研究実施計画に従い,順調に進展していると判断できる. 平成29年度計画として「任意の空間周波数を有する抽象的な模擬画像の作成」,および「IATの実施による空間周波数特性に対する心的活動の評価」の2項目を挙げている.これらについては計画通り,平成29年度内に格子状模様を高密度,および低密度に配置した画像,すなわち高空間周波数,および低空間周波数を有する模擬画像を作成した.続いて,同年度内にこれらの画像を用いたIATを実施し,反応時間測定に基づくIAT得点から空間周波数と潜在的な心的活動との関連について評価できた.この際,平成30年度計画に記載のある「脳波測定による人間感覚に関わる高次脳機能部位の推定」の項目の一部前倒しとして脳波測定を行い,空間周波数と大脳神経活動との関連についても評価できた.平成30年度は,平成29年度の実験方法を再検討して,模擬画像とIATの改良を行った.これによるIATと脳波測定の実施を優先したため,高次脳機能部位の推定については,平成30年度には実施できておらず,次年度の実施項目となる. また平成31年度計画である「空間周波数特性を有する模擬画像に対する視線応答の評価」についても,計画を前倒して平成29年度から実施計画に沿って,画像の作成と視線測定を行った.特に視線軌跡データの解析には,平成29年度は機械学習の一つであるサポートベクターマシーンを用い,さらに平成30年度はニューラルネットワークに基づく深層学習を用い,無意的な視覚探索の評価を進めた. 以上の研究成果は,平成29年度,および平成30年度に開催された国内学会で発表済み,令和元年度に開催予定の国内学会で発表予定,または平成30年度に開催された国際学会で発表済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究実績より本研究はおおむね順調に進展している.そのため最終年度になる令和元年度は交付申請書に記載した研究計画に沿って研究を推進する予定である.本研究は,空間周波数特性が,観察者の大脳神経活動や視線応答に基づいた行動生理指標へどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的としており,本年度は以下のように研究を推進する予定である. 大脳神経活動の評価については,これまでIATの実施によりIAT得点に基づく心的活動の評価と脳波測定に基づく大脳神経活動の評価を行ってきた.一方,平成30年度計画に記載のある「脳波測定による人間感覚に関わる高次脳機能部位の推定」の一部項目が,実施されていないため,本年度は脳波信号に基づく信号源推定の解析を優先して実施し,空間周波数に対する潜在的意識に関わる高次脳機能部位の同定を行う予定である.最終的に,心的(主観的),および大脳神経活動に基づいた空間周波数特性に対する潜在的な人間感覚に関する基礎的な知見やエビデンスについてまとめる予定である. また,視線応答を用いた評価についても,平成29年度から前倒しで研究計画の一部を実施できたため,継続して本年度も実施する予定である.特に,平成30年度から取り組んでいるニューラルネットワークに基づく深層学習を用いた結果は,学習精度が69.0 %とやや低い値を示しているため,本年度は精度向上に向けたニューラルネットワークの最適な層構造,パラメータ値の検討等を行う予定である.最終的に,空間周波数特に対する視線応答に基づいた潜在的な行動指標についてまとめる予定である. 研究の総括として,実際の行動として潜在的(無意識的)に視線が誘導されるような空間周波数特性についての検討を行い,その行動のメカニズムを空間周波数特性が与える心理的な影響や大脳神経活動に関するエビデンスに基づき考察を行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定をしていた脳波電極の購入,および国内学会,国際学会の参加を,平成30年度は研究の進捗に合わせて適宜取り止めたため,次年度使用額が生じた.これら物品の購入や学会への参加については,本年度の研究の進展に応じて予算の実施を予定している.
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Research Products
(4 results)