2018 Fiscal Year Research-status Report
Basic research on Air Media Thechnology
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17K00387
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Research Institution | Institute of Technologists |
Principal Investigator |
三井 実 ものつくり大学, 技能工芸学部, 准教授 (70535377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 昭雄 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70348465)
石川 智治 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (90343186)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 空気覚 / 空気流発生装置 / 圧電振動素子 / 主観評価実験 / 感応評価実験 / 冷感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,空気を媒体とした全く新しい感覚「空気覚(air-sensation)」の創造と開発を目的とし,具体的には,空気流発生装置の機能を改善し,空気覚誘発物理場を測定する.次に,構築した物理場の特性と心理・生理的特性との関係を明らかにする.更に得られた心理-生理-物理の相互関係から,新感覚の空気覚を考慮した新感性モデルを構築する.最後に新感覚の空気覚を応用した情報伝達技術(新メディア,新コンテンツ,新医療など)の検討を行う. 2017年度では,空気流発生装置の機能を改善した.電圧素子である圧電振動素子を用いて,先行研究で開発した装置を省エネ化し,電気音響変換ができないか検討した.さらに1振動当たりのストローク量を増加させるため圧電素子の組み込み方を工夫し,圧電素子への入力電圧をより高くするための増幅回路を開発し,改善前に比べて約2倍のストローク量を達成した.しかしながら,先行研究と同等のストロークまでは達していないため,今後も開発を進めていく. 空気流発生装置を用いた感応評価実験では,空気流発生装置に2種類の信号を入力したときの空気流刺激と,一般的な扇風機による風を被験者に与え,感応評価を行った.同一の圧力エネルギーで比較をすると,空気流発生装置による空気流刺激は冷感を伴うことがわかった. 2018年度では3次元空間の空気流の場を測定するため,超音波センサを用いた簡単なシステムの試作を行った.超音波センサの動作は確認できたが,空気場の精密な計測までは到達していないため,引き続き開発を続ける. また,空気流発生装置を用いた感応評価実験では,触覚刺激に対して敏感な被験者が空気覚刺激に対しても敏感であることが示された.このことより空気覚の応用研究への発展が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
空気流発生装置の開発について以下に示す.2017年7月に圧電素子を用いたスピーカについて特許を取得.圧電素子の固定方法を工夫し,ストローク量を増加させることに成功.電圧が高いほど圧電素子はよく曲がるため,先行研究プロジェクトでは60[Vpp]程であった入力電圧を150[Vpp]とするための増幅回路を開発した.これらの改善により先行研究で開発した電スピーカ方式に比べて約2倍のストローク量である±2㎜を達成した.しかしながら,ダイナミックスピーカと同等のストローク(±5㎜)までは達しておらず,使用する圧電素子サイズや形,増幅回路出力の大電圧化などを検討する. 次に3次元空間空気場測定について次にまとめる.超音波センサを用いたシステムの試作を行った.送信用超音波センサから正弦波信号を出力し,受信用超音波センサでそれを受信する.この時,1対の超音波センサ間に空気の流れがあると,送信信号と受信信号の間に差分信号が作成できる.これを3対の送受信超音波センサを水平―鉛直―奥行方向の軸から45度回転させた軸上に設置した.センサの入出力が確認できたが空気場の精密測定には至っていない. 最後に空気流発生装置を用いた感応評価実験について以下にまとめる.空気流発生装置に正弦波とステップ状の2種類の信号を入力したときの空気流と,一般的な扇風機による風を被験者に与え感応評価を行った.刺激した部位は,手の甲,手のひら,頬,背中で,同条件で風速計および楽器用のマイクで測定を行った.同一の圧力エネルギーベースで比較すると,どの部位でも与えた空気流発生装置による空気流刺激は扇風機に比べて冷感を伴うことがわかった.また,空気流刺激の絶対閾評価実験と触圧覚の絶対閾評価実験を行ったところ,手の平における空気流刺激の絶対閾値が広い被験者ほど触圧覚閾値が小さい傾向を示した.
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Strategy for Future Research Activity |
空気流刺激装置の改善に関しては,圧電素子自体を,銀入りの導電性インクを用いることにより自作し,フレームと屈曲部を一体成型し,スピーカフレームに接着を必要としない方法を試みる.さらに増幅回路を見直し,200[Vpp]の電圧を与えられるように改善する.また,先行研究によるダイナミックスピーカを用いた空気流発生装置をさらに空気流発生装置の発射角度(ロール,ピッチ,ヨー),発射位置(x,y,z軸)などを制御できるような位置決め機構を導入する.そして入力信号の任意波形化(波形,振幅,タイミング)を制御する手法を検討し,筐体や振動体の物理要素に合わせた信号を入力する.これらの改善により,空気流の強さや質,発生位置などを自由に制御しの機能改善を達成する. 空気場測定器の開発に関しては,送受信用超音波センサ対の数や軸を増やし,空気場の変動を測定可能な空間範囲を広げていく.今後1m立方空間の空気場変動を測るシステムを検討する.この計測評価システムを使って多機能化した空気流発生装置の物理特性を測定する. これらの事項を達成し空気覚の応用を検討する.具体的にはゲームや映画などのコンテンツに空気覚を応用した実験を行ったり,冷感を伴う空気流発生装置をエアコンディショナーの送風部に用いる応用を行ったり,省エネ化した空気流発生装置を植物工場に使用したり,アロマオイルなどの匂い刺激と複合したりと,多数の応用例を検討中である. また,五感(触覚,嗅覚,聴覚,視覚,味覚)を複合的に使った感応評価実験を検討し,エンターテイメントなどに空気覚刺激を用いる際の指標としたい.
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Causes of Carryover |
圧電素子を用いた空気流発生装置の改善,3次元空気場測定システムの開発に時間がかかっているため.2019年度にはこれらの開発に費用をかける.
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Research Products
(5 results)