2018 Fiscal Year Research-status Report
Novel mapping method of musical chords and investigation of its psychoacoustic and neurophysiological basis.
Project/Area Number |
17K00389
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
根本 幾 東京電機大学, システムデザイン工学部, 研究員 (40105672)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和音 / 周波数比 / 周期比 / MEG |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の基本的な考えは極めて簡単で,和音を構築する音の周波数比のみでなく,周期比も考慮するということである.ピッチ知覚が,周波数知覚のみでなく,周期知覚にも基づいていることは現在では論を待たないにもかかわらず,周期比が論ぜられないのはいかにも不自然な感を否めない.2音の場合周期比と周波数比は当然等しいが,3音以上になると異なる.たとえば長三和音の周波数比は4:5:6であるが,その周期比は1/4 : 1/5: 1/6 = 15:12 10となる.長三和音とならんで重要な短三和音の周波数比は10:12:15であるので,その周期比は6:5:4となる.つまりこれら二つの和音はある意味対称である.これは知られている事実であるが,十分に検討されてきていない. 比はそのままでは数字の列なので多少扱いずらいので,比の簡単さを表す値として規約な比を表す数字の最大のものの逆数を比の簡単さと定義し,周波数比に対するそれをSf, 周期比に対するそれをSpと定義した.すると(Sf, Sp)という平面が定義されるので,この上に和音をその展開形も含めてプロットする.当然長三和音と短三和音は対称な位置にある. この方法ですべての三和音(長三,短三,減三,増三)をプロッとすると,対称な関係にあるのは長三と短三だけである.この方法を4つの音からなる7度和音に適用してみると,対称関係にあるのはhalf-diminished-seventhとmajor-minor-seventh と呼ばれる2和音のペアのみである.これは大変興味深い.というのは,これら二つの和音は19世紀後半R.WagnerがTristan und Isode でこの組み合わせを頻繁に用い,それが新しい和声の時代を導いたと考えられているからである.これは16-17世紀に長三,短三和音を中心に調性が確立したことと考え合わせても興味深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた内容で論文を執筆して投稿したが,なかなか理解が得られず,現在のところまだ未受理である.そのたびに改良を重ね,反応が少し得られた段階であるので,さらに改良してどうにか出版にもって行きたいと考えている.そのための努力に時間がかかったことが第一の理由である.さらに,前の研究課題の多義的旋律についての補充実験などをくり返し,そのデータ処理にまだ時間がかかっていることもある.データ処理法の研究そのものも行なっている.この研究は本研究とも多くの点で関連があるので,平行して行なっている.これが第二の理由である.
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Strategy for Future Research Activity |
まず過去1年以上にわたって投稿し直し続けてきた論文をどうにか出版にもってゆく.それが認められないと本研究自体の基盤が確固としないからである.しかしその成否に関わらず本研究,すなわち和声の2次元プロットと対応する神経生理学的基盤の探求を,MEGを用いて続けて行く.特に和声の開始語0.3 sあたりから1 sにかけて磁界がゆっくり大きく変動する人がかなり多いので,ここでの変動の信号源を調べることに時間をかけたい.刺激としては,2次元平面内の特に対称の位置にある組みを用いて,その変動を調べたい. 最近,ピッチ感覚についての研究がまた盛んになってきている.特にfMRIを用いた研究や,高磁場MRIを用いた研究が盛んで,従来なかった知見,特にトノトピーや,絶対音感に関連する脳部位に関連する研究が多い.ただし,ピッチと言ったときに,周波数をもとにしたピッチ感覚なのか,周期をもとにしたものなのかを明確にした研究は少ない.ピッチ知覚はまた和音知覚とも密接な関連があるので,これらの新しい知見と本研究の関連が見通せるように考察を進めたい. また同様の刺激を用いて行動学的実験を行い,協和・不協和,明暗,寒暖など対称な感覚を表す言葉に関して,和音の分類を試み,2次元表示に類似の対称性,直交性などがないか調べたい.
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