2019 Fiscal Year Research-status Report
情動可塑性の機能とメカニズムを明らかにするシナプス統合モデリング
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17K00404
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浦久保 秀俊 京都大学, 情報学研究科, 特定研究員 (40512140)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計算論的神経科学 / 中型有棘細胞 / ドーパミン / シナプス可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、情動可塑性のメカニズムを明らかにするシグナル伝達モデルの開発において大きな進展があった。研究代表者は、すでに側坐核におけるD1中型有棘細胞(SPN)のタイミング依存シナプス可塑性のシグナル伝達モデルの開発に成功しているが、さらにD2 SPNの可塑性のモデル化に成功した。D2可塑性モデルにおいて、定常状態ではDAシグナルがD2Rを活性化し、生じたGiシグナルがAC1を持続的に抑圧するが、一過的なDAシグナルの減衰(DA-dip)が生じると、AC1はGi抑圧から解放されて活性が生じた。一方、GluシグナルはCa2+を介してAC1を一過的に活性化した。これらDA-dipとGluシグナルは協調してAC1を活性化するため、DA-dipとGluの入力タイミングに依存するシナプス可塑性が観測された。このタイミング依存シナプス可塑性は共同研究者の東京大学・河西春郎教授らがスライス実験において観測しているものに対応する。DA-dipとGluのタイミング時間窓は 1 s 程度と短いが、それはシグナル伝達が生じる樹状突起~スパインの比表面積が大きく、Ca2+シグナルの増減が素早いためであることも分かった。D1/D2可塑性モデルをまとめて論文投稿を行ったところ、査読者より側坐核以外の脳領野において観測されている情動可塑性と比較するように指示を受けた。そこで、簡易モデルを開発して検討を行ったところ、タイミング検知を行うAC1のパラメータを変更することにより、背側線条体および新皮質の情動可塑性も説明できることが分かった。現在、改定原稿を投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画当初は、D1可塑性モデルのみに着目して可塑性の空間的性質を調べる予定であった。しかし、D2可塑性モデルの開発に成功したため、モデルの検討から動物の多様な学習や神経疾患について説明する道が見いだされた。
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Strategy for Future Research Activity |
D2可塑性モデルが成立するパラメータ(分子濃度など)条件を検討から、ジスキネジアなどの精神疾患のメカニズムを説明できる可能性を示唆する結果が得られている。そこで、D2可塑性モデルの発展的検討を行う。さらに、当初計画通りスパインの空間的性質を考慮に入れたシナプス可塑性の時空間シミュレーションを行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者が「光の特性を活用した生命機能の時空間制御技術の開発と応用(CREST, JST;河西春郎代表および渡辺大代表)」に関わることとなり、これらのプロジェクトにエフォートを割いた。また、研究代表者が研究組織を移転することとなり、業務に遅れが生じている。一方、D2可塑性モデルに新たな発展の可能性を見出している。そこで、延長最終年度はD2可塑性モデル化の発展的研究を行う。また、当初計画通りシナプスの空間的性質を考慮に入れたシナプス可塑性の時空間シミュレーションを行う。そのために必要なプログラム外注および機材の購入を行う。
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Research Products
(8 results)