2017 Fiscal Year Research-status Report
自動車運転者のドップラーセンサ計測信号データベース構築と運転者センシング法の研究
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17K00413
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
神谷 幸宏 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (10361742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小栗 宏次 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (00224676)
河中 治樹 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (90423847)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非接触生体計測 / ドップラーセンサ / ディジタル信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
【具体的な内容】 心拍や呼吸といったバイタルサインの計測は近年,様々な分野で注目されており,その自動車応用も大きなテーマとなっている。たとえば,心拍や呼吸を監視することで運転中の急病を検出し,自動車を安全に停止させるシステムが求められている。心拍や呼吸の計測を行うには体に電極やセンサを取り付ける必要があるが,運転のたびに装着するのは不便である。そこでドップラーセンサを用いた電波による非接触生体計測に注目する。ドップラーセンサは微弱な電波を放射し,人体に反射して戻った信号を受信する。そして放射した電波と受信した電波との周波数差に比例した電圧を出力するデバイスである。この電圧をサンプリングして信号処理を施すことにより,心拍,呼吸を検出することができる。 本研究の内容の第1は,自動車運転中のドップラーセンサ出力信号のデータを様々な環境において取得し,そのサンプルをデータベース化して同分野の研究者が研究に使用できる形態で公開することである。第2は,従来より高精度かつ簡単なドップラーセンサ信号処理アルゴリズムを提案することである。 【意義と重要性】 自動車へのドップラーセンサ応用を考えたとき,その条件は多様である。たとえば衣類は季節によって異なるし,被測定者の年齢も多様である。さらに運転中の動作の影響もあり,それらへの対応は実験によって確認するしかない。しかし,実車を用いてそうしたデータを取得するためには手間がかかり,すべての研究者が手軽に行えることではない。そこで,本研究において取得したデータを,各種のパラメータの記載とともにデータベースとして公開し,同分野の研究者が気軽に試すことができるように提供することは,この分野の研究全体を進展させるためにきわめて重要であると言える。また同時に,世界における日本の研究のプレゼンスを高める意味でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2017年度は2つのテーマ,すなわち(1)ドライバ異常検出アルゴリズムの研究,及び(2)データ取得の準備および実験,が当初の計画以上に進展した。以下,それぞれの項目について説明する。 【(1)ドライバ異常検出アルゴリズムの研究】 本研究ではまず,従来の高速フーリエ変換に基づく信号解析に比較して1/100まで計算量を減らせる可能性がある信号処理アルゴリズムARSを提案した。これについて理論検討,計算機シミュレーションのみならず,実験を行い,2017年6月にオーストリア・ウィーンにおいて開催された自動車安全技術に関する著名な国際会議2017 IEEE Int'l Conf. on Vehicular Electronics and Safety (ICVES2017)において最優秀論文賞(Best paper award)を受賞した。また,ARSの弱点を補う方法としてGMRSおよびCARSを新たに提案し,いずれも自動制御連合講演会および計測自動制御学会ライフエンジニアリング部門シンポジウム2017で発表した。これらはARSの弱点,すなわち(1)複数の対象を同時計測する際,それらの信号に電力差があると低電力の信号のパラメータ推定ができなくなること,および(2)測定対象者の体動があると正確な測定ができなくなること,の2点に対応したものである。さらにARSを発展させて信号の数,それぞれの信号の周期および基本波形の推定に加え,到来角度の推定も行う構成を明らかにし,著名な国際会議 IEEE EMBC2017で発表した。 【(2)データ取得の準備および実験】 実験に必要な倫理審査を受けるとともに機材の購入を終え,実験を進める枠組みを確立した。次に,実車を対象としたドップラーセンサ取り付けなどの付帯技術を確立して実験を行った。本実験は今年度も引き続き,サンプル数の拡充を目的として進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究計画にしたがって取得したドップラーセンサの計測データをとりまとめてデータベースとし,公開を目指す。また同時に,計測データ取得をさらに続け,内容を拡充する予定である。 これらの計測データを用いて提案アルゴリズムであるARS,GMRS,CARSのそれぞれの性能の限界を明らかにすることも併せて目標とする。現在,ドップラーセンサによる非接触生体計測における最大の問題は体動,すなわち運転時の動作による体の動きである。ドップラーセンサは電波によって,センサと人体表面の距離の微妙な変化を計測している。ここで,心拍と呼吸に起因する微妙な距離の変化だけを検出できればよいが,体が動いてしまうと距離が大きく変化してしまう。これが計測において雑音となる。CARSはこの問題への対策として考案された方法であり,計算機シミュレーション上では体動への耐性が高い。こうした特徴を持つCARSを中心に,計測データをベースとして検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
測定被験者への謝金として考えていた金額が,今期に実施した計測実験の分について不要となったために,この差額が生じた。この謝金については2018年度実施分の実験において使用する。
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Research Products
(16 results)