2018 Fiscal Year Research-status Report
筋疾患に関係したタンパク質のシミュレーションによる研究
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17K00418
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
高須 昌子 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (50202148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森河 良太 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (70266899)
宮川 毅 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (40287462)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋疾患 / 分子動力学法 / タンパク質 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで実行したLIM2ドメインだけの分子動力学シミュレーションでは、LIM1側のループの動きが大きかった。FHL1ではLIM1の影響で、ループはそれほど大きく動かないはずである。そのため、FHL1タンパク質全体から、LIM1およびLIM2ドメイン(LIM1 + LIM2)を抜き出し、全原子モデルを用いた野生型および変異型についてMDシミュレーションを行った。力場としてAMBER99SB-ILDNを適用した。ジンクフィンガーの原子に対してはZAFF(Zinc Amber Force Field)のCCCCおよびCCCH(C:システイン、H:ヒスチジン)の力場を使用した。 まず、solution NMRによって決定されたLIM2とLIM1の構造を用い、Modellerを使用して両者を結合した。 PdbViewerを用いてLIM2とLIM1の変異体構造を作成し、AmberToolsで溶媒とイオンをLIM1 + LIM2を含む系に追加した。GROMACS ver. 5を用いたエネルギー最小化、NVTおよびNPTアンサンブルによる緩和の後、600 nsのMDシミュレーションを実行した。 今年度は主に、亜鉛原子から亜鉛配位残基のCα原子までの距離(DZn-cα)と、亜鉛原子に配位している4つの残基のCα原子からなる四面体の2面の法線の内積(λ)を解析した。λにより、ジンクフィンガーの歪みを調べることが可能である。また、DZn-cαの変化がジンクフィンガーの構造の変化と関係があるのか解析するために、DZn-cαとλの相関係数を求めた。 解析結果から、ドメイン内のジンクフィンガーの構成残基に変異が導入されることで、ゆらぎの増大やDZn-cαの変化など、ドメインの構造安定性が低下する結果が得られた。特に、重症化する変異においてDZn-cαとλの相関の値が高くなる傾向にあることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜鉛原子から亜鉛配位残基のCα原子までの距離(DZn-cα)、および鉛原子に配位している4つの残基のCα原子からなる四面体の2面の法線の内積(λ)を分子動力学シミュレーションによって求め、相関係数を求めることができた。その結果、重症化する変異において、両者の相関が高くなることがわかった。これらの結果を、物理学会や分子シミュレーション討論会で発表して、他の研究グループの方々と議論をすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はLIM2ドメイン、およびLIM1+LIM2ドメインの結果が主である。LIM3ドメインの影響をどのように取り入れるか、今後の検討が必要である。LIM3ドメインを分子動力学シミュレーションに含めると、計算コストが大幅に増大する。一方で、もしLIM3ドメインの効果がLIM2ドメインの動きを制限するのであれば、何らかの方法でLIM2ドメインの端の動きを制限することによって、LIM3ドメイン全体のシミュレーションを不要にすることができる。この点を検討中である。
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Causes of Carryover |
次年度4月末から5月にかけて、ギリシャの国際会議で発表することになった。来年度の予定額だけでは、出張および他の費用に足りないと予想されるので、今年度の研究費の一部を繰り越すことになった。
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