2018 Fiscal Year Research-status Report
Information presentation for congestion avoidance based on real-time data
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17K00438
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠原 秀一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 特定講師 (00784191)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光情報学 / 機械学習 / 異常検知 / 迷子検知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,近年国内外の観光地で大きな問題になっているオーバーツーリズム問題に注目し,情報技術を用いてその解消に取り組んでいる.我々は,観光行動は「事前に入手した観光地の静的な情報をもとに設定された旅行計画におおむね従いつつ,観光地の実時間状況に応じてダイナミックに変化する行動である」と定義し,観光地の混雑は旅行者が不完全な情報しか入手できず,最適な行動を取れないために発生していると仮定し,情報の適切な提示によって旅行者が行動を変化させ,その結果として混雑が緩和され,地域における旅行者と住民の満足度を共に向上することを目指している. 本研究の最終目標は,実時間状況を入力として他の旅行者の行動を考慮しつつ,旅行者がその場で行動を修正できる情報を提示する方法を開発し,これにより混雑を緩和することで旅行者と住民の満足度を共に向上させることにある.しかし,近年は京都においてもオーバーツーリズムが急速に進み,ピークシーズンには嵐山などの主要観光地では全体が過密状態に陥っており,情報提示によって行動を多少変容させても混雑が緩和できない可能性が高い.そのため,観光客の中でも特に迷子状態の観光客に着目し,迷子の観光客を早期に検知して警告することで迷子による滞留を減少させ,全体としての混雑の緩和を図るというアプローチを併せて検討している. 上記の目標を踏まえ,平成30(2018)年度は,「観光地全体の実時間情報の選定」「観光行動モデルの構築」「実時間情報に基づいた混雑回避」「地域観光情報基盤のデザイン」の研究を行い,それぞれ進捗があった.また,研究成果は国内外の2つの研究会において発表し,研究コミュニティにおける議論を深めている.国際会議で議論した海外の研究者からは共同研究の申し入れがあり,協力の最初のステップとして移動軌跡データの提供を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30(2018)年度実施予定の4つの目標それぞれについて進捗があった.「1. 観光地全体の実時間情報の選定」については,旅行者のGPS移動軌跡を主な実時間データと定め,企業や自治体等と協力してデータの収集を進めている.具体的には,京都府,一般社団法人京都スマートシティ推進協議会,タクシー配車事業者,携帯通信事業者である.また,東京大学空間情報研究センターと連携して嵐山でデータ取得実験を2回行い,迷子状態の観光客の移動軌跡データや方向感覚データ等を収集した.「2. 観光行動モデルの構築」については,1.の実験で取得したデータを用いて,迷子行動のモデル化とその早期検知技術の開発を優先して進めている.また,イタリアのボルツァーノ大学Ricci教授から共同研究の打診があり,最初のステップとして移動軌跡データを提供した.「3. 実時間情報に基づいた混雑回避」については,観光地全域の観光スポットが観光客で飽和している状態において,どのような方法で混雑を回避すべきかについて検討している.「4. 地域観光情報基盤のデザイン」については,京都府,京都スマートシティ推進協議会が進めるスマートシティ構想における地域データ流通の議論に参加した.同構想に基づいて構築が進められている地域データプラットフォームは,本研究における地域観光情報基盤概念と近しいコンセプトであり,アドバイザーとして構築に協力した. 研究成果は2018年度人工知能学会全国大会及びキプロスで開催された観光情報学に関する国際学会であるENTER2019にて発表し,論文誌への投稿も準備している.また,嵐山で行った迷子のデータ取得実験は広く注目を集め,NHK京都放送局・大阪放送局やFNNプライム,ITMediaなどの媒体によって報道された.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度(平成31年/令和元年度)も当初の計画に従って計画を進めるが,オーバーツーリズムの実態は研究計画策定時の想定を超え,情報提示によって域内で訪問先を変更しても実効性のある混雑緩和が実現できない可能性が高いレベルに達しつつある.そのため,引き続き情報提示による行動変容の結果をシミュレートする枠組やその実装の検討を続けつつ,迷子行動のモデル化と早期検知技術の開発という異なるアプローチによる研究も並行して進める. オーバーツーリズムは多くの主要観光国が抱える国際的な問題であり,国際共同研究の対象にふさわしい.観光情報に関する国際会議ENTERの主催団体である国際観光情報学会IFITTからは日本における研究者・企業・行政とのネットワーキングを求めるリクエストも寄せられている.当初の計画には含まれていないが,京都大学経営管理大学院(観光MBA),同情報学研究科といった研究機関やITコンソーシアム京都などの地域団体などとも協力して,国際的な研究の枠組みを作る努力を行う.
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Causes of Carryover |
年度末に実施したデータ取得実験において消耗物品を購入予定だったが,東京大学との連携により借り受けることができたため.
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