2019 Fiscal Year Research-status Report
長距離移動マタニティの課題を起点にしたへき地の周産期・子育て環境支援システム構築
Project/Area Number |
17K00439
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
皆月 昭則 釧路公立大学, 経済学部, 教授 (90363712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 妊婦 / 陣痛 / 破水 / 見守り / 長距離移動 / スマートフォン / 深層学習 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究は,未解決であったマタニティの通院・買い物など移動時の見守りおよび破水の知識学習の支援機能を開発し検証した.見守り支援では非都市部・都市部のマタニティに限らず,1人ひとりの居住地域から店舗や病院までの移動経路が異なるため,移動中においては,各マタニティに合わせた移動における異常データを1つの正解データとして設定することが困難である.そこで深層学習の理論で移動時の異常データを導出し判定する機能を開発した.異常が判定された場合は,マタニティのスマートフォンに安否確認を促し(アプリのポップアップが表示),ポップアップに1分以内にタッチしなければ,あらかじめ登録しておいたマタニティ以外(家族)へ自動通知するように実装した. 検証方法は,医療者・妊娠経験者を対象としてアプリの機能の使用感検証・アンケート調査を実施した.使用感検証においては,アプリのデバイス使用者30人,アンケート調査は44人に対して実施した.デバイス使用者の使用感検証の質問では,長距離移動中のQ1.見守り機能についての評価,Q2陣痛の計測・記録機能について評価した.評価方法は【満足・ほぼ満足・普通・やや不満足・不満足】の5段階評価で回答を得た.結果は,Q1.およびQ2.に対して,肯定的な回答が74.9%と高い評価が得られた.次に,Q3.破水の知識,Q4.前駆陣痛・分娩陣痛の知識の認知を質問した.評価方法は【用語を説明できる・用語のみ認知・知らない】の3段階評価で回答を得た.結果は,「用語のみ認知」という回答が,Q3.で70.5%,Q4.で46.3%の結果であった.使用感検証の結果から,開発した見守り支援能が肯定的で高い評価であり,有用性が確認できた.アンケート調査の結果では,医療者および妊娠経験者を対象としても,半数近くが重要な用語に対して,用語の認知段階であることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「長距離移動マタニティの課題を起点にしたへき地の周産期・子育て環境支援システム構築」の研究において,最終年度であったが,深層学習理論を用いた移動時の見守り機能の実装に時間を要した.長距離移動中においては,マタニティそれぞれ状況に合わせた異常データを1つの正解データとして設定することが不可能である.よって開発では,深層学習のスパースオートエンコーダを用いることで,正解データから異常を検知する機能を実装した.実装の処理シーケンスⅠ.では,教師信号として,スマートフォンから位置情報データを誤差逆伝播学習させる.中間層においては,信号情報をできるだけ保存しつつ低次元化した表現を取得するため,ニューラルネットワークの出力値が入力値と一致するように学習させた.よって,結合の重みは,中間層の重みのL1ノルムの和を用いるL1正則化させることで,出力層での誤差を最小化した.以上の演算処理で,入力層のデータ数よりも中間層のデータ数が多い場合でも,過学習の計算負荷を低減させた.処理シーケンスⅡ.では,入力されたデータと正解データの結合の重みから平均二乗誤差を計算し,異常度を評価判定し導出した.異常が判定された場合は,マタニティ以外に自動通知するように実装した. 長距離移動マタニティの課題として破水の知識は重要であるが,医療者・妊娠経験者を対象にしたアンケートをして,破水や陣痛の用語が認知の段階で留まっていることが明らかにした.よって,適時破水・早期破水・前期破水についての知識が必要であり,破水の種別や対応処置については,アプリで詳細な知識が得られるようにした. 検証では,北海道の中標津町保健センターおよび羅臼町役場保健福祉課,釧路市東部子育て支援センター,釧路市西部子育て支援センターの協力で,医療者・妊娠経験者を対象として使用感検証・アンケート調査を実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究では,非都市部に居住する長距離移動マタニティに限定せず,都市部のマタニティも使えるような在宅時のリスク管理を想定した支援アプリケーションを開発する. 妊娠期間の体重におけるデータの記録・管理機能の開発では,妊娠中における体重変化の影響によって,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの病気にかかるリスクがあるため,体重の記録・管理を容易にする機能が必要である.そこでBMI(Body Mass Indexの略で世界共通の肥満度の指標)の概念理論に依拠・発展させて,マタニティの体重管理のための機能を実装する.機能は,妊娠期間における体重の増減量を管理し,可視化することで,妊娠の各周期における適正体重に応じた評価のコメント表示を可能にする.機能の判別・評価処理方法は,Ⅰ.適正体重を超える場合,Ⅱ.適正体重の範囲内の場合,Ⅲ.適正体重に満たない場合の三種類に分類する.さらに,記録した体重データに対して,可視化(データ推移のグラフ化),データの追記・編集機能(実時間入力・非実時間入力に対応)を実装することで,体重管理の利便性を高めた. アプリの陣痛計測したデータの追記・編集機能の開発では,強い痛みをともなう陣痛および唐突な陣痛が発生した場合,その場で正確な陣痛の記録が困難であることが明らかであり,陣痛計測後でも,陣痛の計測・記録データの追記・編集を可能にする機能が必要である.陣痛におけるデータの追記・編集機能の開発の目的としては,正確な陣痛の記録を問診時のデータとして使用できるようにするため,事後に陣痛データの追記・編集機能を実装する.この機能によって,陣痛データの記録・管理を正確に行うことが期待できる. 以上,非都市部に居住する長距離移動マタニティの在宅時・移動時におけるリスクを想定した周産期の見守り支援アプリケーション開発の研究成果として,情報処理学会の研究報告書で公刊する.
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Causes of Carryover |
2018年(平成30年)9月の北海道胆振東部地震の影響で,開発用PCの記憶装置が全損し,開発途中のプログラムコードや調査データが消失した. 2019年度においては,開発・検証の遅れを取り戻したが,新しく実装した機能の検証が不十分であり,また,アンケート調査データの整理が残っており,公刊論文にするため,次年度の使用額として生じた.
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Remarks |
"マタニティ・ライフ PROJECT"のホームページへようこそ。 私たちはマタニティ・妊産婦の人々そして地域・社会を見守る人々を応援するため、大学で学術研究しています。ここでは、日々の活動や研究開発の内容についてご紹介します。
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Research Products
(9 results)