2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00458
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
久野 和子 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (80635524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川崎 良孝 京都大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80149517)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公共空間 / 学校図書館 / 公共図書館 / 第三の場 / 場としての図書館 / 児童サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の日本社会において、図書館は地域再生・地域づくりの拠点として機能することを求められている。すなわち、地域の課題を解決し、次世代を育成するための教育・学習・文化活動の場として、そして、地域住民が直接顔を合わせ、地域や個々人の課題について話し合える「公共空間」として機能し、地域活性化を支えることが、これからの図書館の新たな使命であり、役割である。それを検証するため、久野は先進的とされる図書館についてフィールドワークをおこなった。ある程度の成果は得られたものの、十分な実証データを得るためには、さらに多くの図書館についての検証が今後必要である。 また、これからの地域社会の存続において、鍵となるのは次世代を担う子どもたちをいかに豊かな学習・生活環境と人間関係の中で育て、地域社会を支える主体的な市民とするかである。したがって、図書館における児童サービス、子育て支援サービスは地域社会にとって最も重要であり、さらにはその地域のまちづくりの理念がもっとも象徴的、具体的にあらわれるものと考える。久野は、学校図書館、公共図書館が、子どもたちにとって家のような良き居場所つまり「第三の場」となれば、多くの子どもたちを惹きつけるのみならず、困難や生きづらさを抱えた子どもたちの多様なニーズに応え、子どもの「生活権」「学習・教育権」「文化権」などの包括的な保障が可能となり、心豊かな生活や学びがもたらされることを複数の論文において論じた。 さらに、海外の研究協力者の論文を翻訳し、図書として刊行したため、海外の重要かつ先進的な場としての図書館研究を広く日本に紹介することができた。 研究分担者の川崎は、歴史的考察を分担し、開架性と児童サービスの空間構成に着目したアメリカ公共図書館思想史についての研究論文を複数発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国内の研究分担者や連携研究者との打ち合わせについては、2017年9月、2018年3月に実施し、各自の研究論文についての合評、そして研究の進捗状況についての確認を行なった。久野は、北海道図書館大会、図書館地区別研修において講演を行ない、研究成果を発表した。また、日本図書館協会の発行する雑誌からも依頼を受け、研究成果を論文として発表した。さらに、9月には学校図書館でのフィールドワークを実施し、その成果に基づいて、査読付き雑誌に研究論文を発表することができた。2018年3月には、国内の先進的な図書館を視察しフィールドワークを実施した。 しかしながら、夏季に予定していた海外の研究協力者との打ち合わせと、海外の先進的図書館の視察については、家族の急な介護・逝去と時期が重なったために、どうしても実施することができなかった。だが、電子メールで研究協力者と連絡を取り合い、協力を得ながら、研究協力者の代表的な論文の一つを翻訳することができた。翻訳された論文は、研究分担者や連携研究者らとの共著書に掲載され、海外の先進的な研究を日本の図書館界に紹介することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、多様な人々の集う良き「公共空間」=「第三の場」としての図書館についてのこれまでの研究をまとめ、単著で図書を刊行する予定である。また、近年、国内において地域活性化を担う先進的な図書館が次々に登場しており、そのフィールドワークを積極的におこない、実証データを収集する。特に、地域社会の存続において最も重要である児童サービス、子育て支援サービスに着目する。そうしたサービスの運営、空間においては、その地域のまちづくりの理念がもっとも象徴的、具体的にあらわれると考えるからである。それと共に理論的な研究をさらに深め、現在の日本の図書館状況について理論的、実証的分析をおこない、意義や課題などについて考察する。またさらに、これまで視察してきた海外の図書館との比較検討を行う。10月にはドイツの地方都市の図書館を視察し、地域活性化について調査する。 2019年度は、北欧を中心としたフィールドワークを実施する。2017年度に想定していた研究協力者との打ち合わせを行う。結果として、海外の研究協力者との共同研究が遅れているので、研究の最終段階が2020年度にずれ込む可能性があることは否めない状況である。
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Causes of Carryover |
2017年度は夏季に海外長期出張をする予定であった。その出張準備と情報収集・整理のため、iPadやスキャナーなどを購入した。しかし、急な家族の介護と逝去とが重なり、夏季に予定していた海外の研究協力者との打ち合わせ及び海外の先進的な図書館の視察が出来なくなったため、海外出張旅費がまったく発生しなかった。そのため、多額の海外出張旅費が未使用となり、次年度使用額が生じた。しかし、海外の研究協力者の論文の翻訳は、電子メールで連絡を取りながら遂行できたので、著作権料の支払いが発生した。 国内出張については、2017年9月, 2018年3月に研究分担者らとの打ち合わせ、講演、図書館視察を行ったため、国内旅費はほぼ予定通り使用した。図書についても、社会学、政治学など幅広い分野の図書が必要であったため、予定通り執行した。 2018年度については、これまでの研究成果をまとめた図書を刊行予定である。そのための資料費、情報・資料収集のための旅費、物品費などが必要となる。10月にはドイツの図書館視察、9月と2019年3月には国内やアジアの先進的な図書館を視察するため、相当額の旅費が必要となる。また、2019年3月には研究分担者らとの研究会が予定されているので、国内旅費が発生する予定である。
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Remarks |
久野和子「新しい図書館:出会いと交流の『広場』に」毎日新聞、2018.1.23、25面
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Research Products
(11 results)