2017 Fiscal Year Research-status Report
文化財をやさしい日本語・英語・多言語で紹介するための作文法と執筆支援ツールの開発
Project/Area Number |
17K00466
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
立見 みどり 立教大学, 異文化コミュニケーション研究科, 特任准教授 (00794108)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 玲 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70804300)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | やさしい日本語 / やさしい英語 / 文化財の紹介 / 観光コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる目的は、①日本の文化財を紹介するための文章を読みやすくかつ英語に翻訳しやすいような日本語で執筆するための作文法(基本語彙リストと平易な構文のセット)を設計すること、②その日本語から英語への容易な翻訳方法を考案すること、③執筆・英訳支援ツールを開発することである。この目的達成のため、今年度は以下のことを実行した。 1) 文化財紹介文の収集・分析:日本各地の歴史的建造物の中でも民家や住宅に着目し、現地訪問およびウェブサイト調査を通じ、文化財説明文を収集した。その後、建物の紹介において最も重要かつ分量が多く、難解な語や表現が使われやすい「様式・特徴」に関するテキストについて、語単位と文単位で詳細な分析を進めた。語単位では、語を抽出してその難易度や種類の判別を行い、文単位では、内容をさらに詳細に分類した上で、説明文を短く簡単にするための不要情報の抽出と文型の単純化を部分的に行った。この分析の結果が、今後設計する作文法の基盤となる。 2) 文化財説明文の読み手に関する調査:都内の文化財運営団体の協力により、夏と秋の2回にわたって、のべ300名以上を対象にアンケートを実施。実際の説明文の通常版とやさしい版を読み比べてもらい、その読みやすさや好ましさについて質問した。このアンケートにより、文化財の訪問者がどのような情報を求めているか、訪問者にとって好ましい説明文とはどのようなものかについての知見を得た。 3) 講演会の開催:観光コミュニケーションの分野でやさしい日本語を研究・導入している研究者および企業経営者を招き、公開講演会「やさしい日本語でつくる観光コミュニケーション」を開催した。日本語教育、観光、コミュニケーションなどさまざまな分野から参加者があり、講演者の発表に加えて、聴講者を交えての活発な議論が行われた。やさしい日本語利用の必要性や意義が再確認・共有された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定していた規模の調査とデータ収集が完了し、分析が進んでいる。語レベルではツールによる用語の抽出と分析を開始し、文レベルではやさしい日本語作文の重要段階である情報選択の方法論構築に着手した。次年度以降の作文法設計の基盤ができつつある。 また当初の計画に含めたとおり複数の講師を招いての公開講演会を実施したことで、本研究の意義や状況を各方面に認知してもらい、さらにやさしい日本語普及の現状と今後の見通しを共有することができた。 さらにやさしい英語が広く使用されているWikipedia関連の勉強会への参加、やさしいフランス語を研究・導入するカナダの研究者および実践者との会合や情報交換も行っており、3年目に予定しているやさしい多言語化研究の基盤も徐々に作っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
30年度にはデータの分析から作文法の設計へと進める。語レベルでは、頻出語、重要語、難解語を中心とした用語集とその言い換え案を検討し、文レベルでは、難解表現の単純化を検討する。これにより、作文に利用できる語彙リストと構文集を作成するとともに、執筆・翻訳を支援するツールの開発にも繋げる。 既存の各種やさしい日本語の基準や日本語学習教材を基に本研究の目的に即したやさしい日本語のレベル(語彙・構文など)とその他の基準(削除・省略すべき情報の選択方法など)を現在検討中であるが、それらを完成させる。また、用語・表現・例文集に基づき、翻訳理論を応用して、難解語彙・表現に対する複数の言い換えパターンを定め、作文法を設計し、執筆ガイドラインを作成する。 30年度からは、各段階で得た知見を国内外の学会や雑誌などで発表し、最終年度には成果の全体を、応用言語学分野および自然言語処理分野で論文として発表し、ツールをウェブサイトで公開する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度において支出が 計画を大幅に下回ったのは人件費である。人件費が予想より少なかった理由としては、1) データ収集にかかった費用が予想より少なかったこと、および 2) 現在までの主要な分析作業がほぼ研究代表者と研究分担者によって進められているいることが挙げられる。30年度には分析作業のうち人手のかかるものについては積極的にリサーチアシスタントやアルバイトを活用し効率的に研究を進めたい。 使用目的:分析作業のためのリサーチアシスタントやアルバイトを雇用するための人件費 学会参加のための旅費、論文投稿等のためのその他費用
|