2017 Fiscal Year Research-status Report
プライミング効果による土壌炭素分解:温暖化応答メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K00524
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
飯村 康夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (80599093)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉津 弘佑 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教 (20579263)
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50243332)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 土壌炭素 / 温暖化 / プライミング効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌は陸域最大の炭素プールである。そのため、土壌炭素の温暖化応答の解明に関する研究は重要な課題である。現在の温暖化に対する土壌炭素応答研究の大多数は、直接的な地温上昇に対する土壌炭素の分解速度変化に関するものであるが、植物由来有機物の土壌への供給量増大という間接的な影響も加味する必要がある。これらを解決する鍵となるのが植物由来有機物の供給に伴う土壌炭素分解速度変化反応“プライミング効果:PE”である。ただし、PEに関する研究の多くは“現象”そのものを捉える段階にあり、PEの温暖化応答や発現メカニズムについては詳細が不明である。本研究の目的はPEの温暖化応答とこれらを規定する要因を長期・短期的な室内・野外培養実験を通して明らかにし、日本の代表的な土壌におけるPEの温暖化応答メカニズムを解明することである。 本年度は基質の種類とPEの発現の関係に着目して、日本に分布する代表的な土壌タイプの一つである火山灰土壌(アロフェン質黒ボク土:δ13C = -24‰)を供試土壌として異なる温度条件(20℃および30℃)で13C標識セルロース粉末(δ13C = +100‰)とC4植物であるススキ粉末(δ13C = -13‰)を添加し、約3ヶ月間の室内培養実験を行った。その結果、温度依存性(Q10:温度が10℃上がった時にCO2放出量は何倍になるかを示したもの)は何も添加しなかった土壌のみとセルロース添加区で有意に高く、それぞれ2.1および1.9であった。一方、ススキ添加区のQ10は有意に低く1.5であった。以上の結果はアロフェン質黒ボク土における温暖化現象とPEの関係は土壌へ混入してくる基質によって大きく異なる可能性が高いことを示すものである。これらについては今後更なる検証(追試)や他の土壌を使用した実験による検証も必要だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた異なる基質の添加に伴うプライミング効果について比較的長期間の培養実験を含めて検証ができている。他の土壌についても現在検証中であり、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
温暖化に伴うプライミング効果の現象評価研究に合わせてメカニズム面の解明に向けた研究を展開していく予定である。具体的には土壌炭素のどの部分が最も影響を受けているのかについて微生物群集構造評価と土壌炭素の質的評価(化学構造特性解析)を分担者協力のもと進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた土壌試料採取調査のうち、沖縄への調査が実行できていないため旅費に多少の差額が生じた。また、消耗品の支出についても多少差額が生じた結果次年度への繰越し金が発生した。 予定していた沖縄への土壌採取調査は今年度の秋以降に実施する予定である。
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Research Products
(1 results)