2018 Fiscal Year Research-status Report
Behavior of gas phase and particulate organic nitrates in the atmosphere, centering on the transboundary pollution from East Asia
Project/Area Number |
17K00525
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
定永 靖宗 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70391109)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 環境計測 / 有機硝酸 / 越境汚染 / PM2.5 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子状有機硝酸(PONs)は二次有機エアロゾル(SOA)の中で重要な側面を持つ可能性が指摘されているが、現在までの研究例は極めて少ない。本研究ではまずPONs連続測定装置を開発し、その後能登半島珠洲においてPONsとガス状有機硝酸(GONs)の同時連続観測を実施、特に大陸からの越境汚染による影響を中心としたPONsとGONsの動態を明らかにする。 平成30年度では引き続き、能登半島珠洲においてPONsの連続観測を行った。また、同時にGONs、O3、CO、NOx、総反応性窒素酸化物(NOy)、全硝酸(T.NO3)の連続観測も行った。これらの観測については大きなトラブルもなく、観測開始から平成30年度末まで概ね1年以上のデータを蓄積することができた。 平成29年11月から平成30年10月までに測定されたGONs、PONsの平均濃度はそれぞれ0.370、0.017 ppbvであり、PONs/GONs濃度比は4.6%であった。PONs濃度は全般的に非常に低く、多くの期間で検出下限前後の値であった。そのため、現時点で季節変動などの議論を行うことは困難である。一方、散発的にPONs濃度の上昇がみられ、特に平成30年3月下旬において最大0.3 ppbv程度のPONsが観測された。PONsの濃度上昇が見られた期間はGONsやNOy、T.NO3、O3、CO濃度も上昇した。一方、NOx濃度の上昇は見られなかったことから、この高濃度イベントは長距離輸送の影響によるものと考えられる。また、同時観測を行っていた長崎県福江島におけるNOy、T.NO3の濃度変動、後方流跡線解析や天気図の結果より、この高濃度イベントは、アジア大陸由来の汚染物質が移動性高気圧の周回流によって日本に越境輸送された結果であると考えられる。アジア大陸からPONsが越境輸送される事例を観測により明らかにしたのは本研究が初めてである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載していた平成30年度の実施計画は、能登半島珠洲におけるPONsおよびGONs濃度の連続観測を実施し、(1) PONs濃度レベルについての知見を得ること、(2) 有機硝酸のガス・粒子分配比についてのデータを得ること、(3) 大陸からの越境汚染が起こっているイベントを抽出し、その解析を行うことであった。(1)、(2) については、平成29年11月より1年以上のデータを蓄積しており、順調にデータ・知見を得ている。(3) についても、現在までの観測において大陸からの越境汚染が起こっているイベントが見られており、現在順調に解析を進めている。以上のことから、本申請研究は現時点でおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
PONs、GONs濃度の連続観測については、順調にデータを蓄積できているので、平成31年(令和元年)度においても継続する予定である。今年度が最終年度となるが、2年分のデータを蓄積することを目標とし、早くとも令和元年10月末までは観測を継続する予定である。研究実績の概要にも記載したが、PONs濃度は全般的に低く、今後データを積み重ねてもPONsの季節変動を議論することが困難である可能性がある。その場合は越境汚染など高濃度イベントに注目したデータ解析を中心に行う予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由) 計上していたNOx計コンバータカートリッジを平成30年度内に購入する必要がなくなったなど、予定よりも消耗品費の支出が少なく済んだこと、測定装置で用いているCAPS-NO2計の調子が良く、平成30年度内に保守点検を行う必要がなくなり、計上していた保守点検の費用がかからなかったことなどがあり、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度使用額分の一部は消耗品費の購入に充てる。また、装置のメンテナンスや、国内外の学会発表のために生じる旅費を中心に使用して研究を進める予定である。
|
Research Products
(24 results)
-
-
[Journal Article] NHM-Chem, the Japan Meteorological Agency’s regional meteorology - Chemistry model: Model evaluations toward the consistent predictions of the chemical, physical, and optical properties of aerosols2019
Author(s)
M. Kajino, M. Deushi, T. Sekiyama, N. Oshima, K. Yumimoto, T. Tanaka, J. Ching, A. Hashimoto, T. Yamamoto, M. Ikegami, A. Kamada, M. Miyashita, Y. Inomata, S.-I. Shima, A. Takami, A. Shimizu, S. Hatakeyama, Y. Sadanaga, H. Irie, K. Adachi, Y. Zaizen, Y. Igarashi, H. Ueda, T. Maki, and M. Mikami
-
Journal Title
J. Meteor. Soc. Jpn.
Volume: 97
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
[Journal Article] 山岳地域における NOx 酸化物質 (NOz) 計測手法の開発と実大気への応用2018
Author(s)
和田龍一, 定永靖宗, 加藤俊吾, 勝見尚也, 大河内博, 岩本洋子, 三浦和彦, 小林拓, 鴨川仁, 松本淳, 米村正一郎, 松見豊, 梶野瑞王, 畠山史郎
-
Journal Title
分析化学
Volume: 67
Pages: 333-340
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
[Presentation] Missing ozone-induced potential aerosol formation in a suburban deciduous forest near Tokyo2018
Author(s)
T. Nakayama, Y. Kuruma, Y. Matsumi, Y. Morino, K. Sato, H. Tsurumaru, S. Ramasamy, Y. Sakamoto, S. Kato, Y. Miyazaki, T. Mochizuki, K. Kawamura, Y. Sadanaga, Y. Nakashima, K. Matsuda, Y. Kajii
Organizer
The 10th International Aerosol Conference
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Regional air pollution reaching Fukue Island, western Japan: Highlights during EMeRGe-Asia/KORUS-AQ & long-term variations during 2009-20182018
Author(s)
Y. Kanaya, T. Miyakawa, Y. Sadanaga, A. Shimizu, A. Takami, A. Yoshino, C. Zhu, F. Taketani, M. Takigawa, K. Miyazaki, T. Sekiya, K. Sudo, K. Yamaji, M. D. Andres Hernandez, J. P. Burrows, EMeRGe team, KORUS-AQ team
Organizer
2018 joint 14th iCACGP Symposium and 15th IGAC Science Conference
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Observations of ozone-induced potential aerosol formation at deciduous forest and residential sites near Tokyo2018
Author(s)
T. Nakayama, Y. Kuruma, Y. Matsumi, Y. Morino, K. Sato, H. Tsurumaru, S. Ramasamy, Y. Sakamoto, S. Kato, Y. Miyazaki, T. Mochizuki, K. Kawamura, Y. Sadanaga, Y. Nakashima, K. Matsuda, Y. Kajii
Organizer
2018 joint 14th iCACGP Symposium and 15th IGAC Science Conference
Int'l Joint Research
-
-
[Presentation] Direct grand-based observation of lightning-induced nitrogen oxides in the free troposphere2018
Author(s)
R. Wada, Y. Sadanaga, S. Kato, N. Katsumi, H. Okochi, Y. Iwamoto, K. Miura, H. Kobayashi, H. Kamogawa, J. Matsumoto, S. Yonemura, Y. Matsumi, M. Kajino, S. Hatakeyama
Organizer
2018 joint 14th iCACGP Symposium and 15th IGAC Science Conference
Int'l Joint Research
-
[Presentation] Direct evaluation of photochemical ozone production regime2018
Author(s)
Y. Sadanaga, T. Moriya, N. Kohno, M. Nakagawa, Y. Sakamoto, T. Fujii, M. Takemura, K. Matsuoka, J. Li, K. Sato, R. Sathiyamurthi, A. Takami, A. Yoshino, T. Nakayama, Y. Nakashima, S. Kato, M. Matsuoka, Y. Kajii
Organizer
2018 joint 14th iCACGP Symposium and 15th IGAC Science Conference
Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Presentation] 都市近郊大気でのエアロゾル粒径分布測定比較: イソプレンが新粒子生成に与える影響2018
Author(s)
車裕輝, 中山智喜, 松見豊, 鶴丸央, Sathiyamurthi Ramasamy, 坂本陽介, 入江学, 井田明, 加藤俊吾, 宮﨑雄三, 望月智貴, 河村公隆, 定永靖宗, 中嶋吉弘, 松田和秀, 梶井克純
Organizer
第35回エアロゾル科学・技術研究討論会
-
-
[Presentation] つくば市における2017年夏季の総HOx 反応性測定2018
Author(s)
黎珈汝, 藤井富秀, 松岡航平, 竹村真莉奈, 坂本陽介, 河野七瀬, 中川真秀, 定永靖宗, Sathiyamurthi Ramasamy, 佐藤圭, 高見昭憲, 吉野彩子, 中山智喜, 中嶋吉弘, 加藤俊吾, 梶井克純
Organizer
第59回大気環境学会年会
-
[Presentation] 夏季つくば市における、ガス状グリオキサールの大気観測と生成源の検討2018
Author(s)
丸山佳希, 守屋強夫, 松岡雅也, 定永靖宗, 藤井富秀, 竹村真莉奈, 松岡航平, 黎珈汝, 河野七瀬, 中川真秀, 坂本陽介, ラマサミー サティアムルティ, 佐藤圭, 吉野彩子, 高見昭憲, 中山智喜, 加藤俊吾, 梶井克純, 中嶋吉弘
Organizer
第59回大気環境学会年会
-
[Presentation] 都市大気中におけるオゾン生成レジームの直接評価2018
Author(s)
定永靖宗, 守屋強夫, 河野七瀬, 中川真秀, 坂本陽介, 藤井富秀, 竹村真莉奈, 松岡航平, 黎珈汝, 佐藤圭, Ramasamy Sathiyamurthi, 高見昭憲, 吉野彩子, 中山智喜, 中嶋吉弘, 丸山佳希, 加藤俊吾, 松岡雅也, 梶井克純
Organizer
第59回大気環境学会年会
-
-
-
-
[Presentation] オゾン生成レジーム直接判定による夏季京都市内の大気質診断2018
Author(s)
山口諒, 定永靖宗, 向井智樹, 河野七瀬, 周俊, 竹村真莉奈, 坂本陽介, 佐藤圭, 中嶋吉弘, 加藤俊吾, 松岡雅也, 梶井克純
Organizer
2018年度大気環境学会近畿支部研究発表会
-
[Presentation] 京都市での夏季外気観測によるオゾン生成レジーム判定に関する研究2018
Author(s)
竹村真莉奈, 河野七瀬, 周俊, 村野健太郎, 小野夏樹, 向井智樹, 山口諒, 定永靖宗, 佐藤圭, 中嶋吉弘, 加藤俊吾, 坂本陽介, 梶井克純
Organizer
2018年度大気環境学会近畿支部研究発表会
-