2018 Fiscal Year Research-status Report
南北両極域のケイ質殻プランクトンがケイ素循環に果たす役割の解明
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17K00539
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Research Institution | Marine Ecology Research Institute |
Principal Investigator |
池上 隆仁 公益財団法人海洋生物環境研究所, 海生研中央研究所, 研究員 (70725051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木元 克典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任技術研究員 (40359162)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ケイ質殻プランクトン / 物質循環 / ケイ素安定同位体比 / SHRIMP / マイクロフォーカスX線CT / 北極海 / 南極海 / プランクトン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、放散虫群集による海洋深層へのシリカ輸送量を定量評価するため、マイクロフォーカスX線CT(MXCT)による放散虫骨格の体積と密度の計測を試みた。平成29年度は、放散虫骨格の3次元像を構築するにあたって、3次元像の見た目から任意で放散虫の骨格(シリカ)と空気の境界画素値を設定したため、境界値を明確に定義できなかった。境界画素値をどこに設定するかにより表現される3次元像は変わり、体積の計測に影響する。そのため、放散虫骨格の体積をより精確に計測するためには境界画素値に対する厳密な検討が必要であることがこれまでの実験から明らかになった。平成30年度は、この問題を解決するため、放散虫骨格と空気の間の境界画素値について更なる検討を行った。具体的には、放散虫骨格の材質に近い規格化された市販の石英球を用いて、境界画素値を推定し、放散虫骨格に適用可能であることを確認した。 放散虫骨格の密度は化石については浮沈法を用いて計測したHurd and Theyer (1977)の約1.7~2.0 g/立方cmの値が知られているが、現生の放散虫骨格の密度を正確に測定した例はこれまでになかった。北極海の放散虫群集の中ではSpongotrochus glacialisが唯一電子天秤で質量測定可能である。そこで、S. glacialisの体積をMXCTにより計測し、さらに電子天秤で質量を測定することで、現生放散虫の骨格の密度を推定した。 2013年と2015年の夏に太平洋側北極海で採集したプランクトン試料の群集解析を行い、ケイ質殻プランクトンである放散虫の水平・鉛直分布と分布を支配する環境要因についてまとめ、国際学術誌に掲載された。また、KH-19-1次白鳳丸南大洋航海(1/16~2/12)に参加し、セジメント・トラップの回収と設置を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放散虫骨格のシリカの定量化に関して、大型の放散虫骨格については骨格と空気の間の境界画素値を決定できたが、小型の放散虫骨格については解像度を上げるなど正確な測定に向けてまだ検討の余地がある。 放散虫骨格のSi同位体比分析に関しては、マルチコレクター型SHRIMP(SHRIMP-IIe/AMC)による分析手法の開発のため、試料調製及び一次イオン源等SHRIMPの分析条件等に関する試験を重ねた。2018年11月までに分析手法に関する方針が定まったが、その後2019年1月まで、SHRIMPの試料ステージの不調が続き、マシンタイムを確保することができなかった。2019年2月に石英粒子標準試料(NBS-28)を用いたテスト分析を行った。その後、放散虫を使ったSHRIMP分析のテストを行った。放散虫試料をSHRIMP分析で用いるために、従来とは異なる試料調製を行ったため、事前に行っていた石英粒子標準試料の分析結果と比較を行った。石英標準試料の標準偏差が従来の試料調製法と比較して大きかったため、再度、試料調製法を中心とした分析手法の改善を進めた。2019年3月からのSHRIMPの試料ステージ及び一次イオン系の故障により、分析不可能な状態が続いており、当初の計画通りには進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
小型放散虫骨格のシリカの定量方法を確立し、平成30年度に南大洋で得られた沈降粒子試料中の放散虫骨格についても今後MXCTによる計測を進めていく予定である。SHRIMPの修理が完了し次第、Si同位体比分析のための試験を再開し、分析手法の開発と実際の試料の測定を進める予定である。
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Causes of Carryover |
KH-19-1次白鳳丸南大洋航海に関して出港地と日程に若干の変更があったため、当初の計画よりも旅費の支出を抑えることができた。また、SHRIMPの故障によりSi同位体比分析が遅れたため、測定に使用する消耗品の購入を一部見送った。未使用分は、次年度の分析のための出張旅費や分析費用等に充てる予定である。
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Remarks |
池上隆仁, 2019. 海底に降り積もるプランクトンの骨格. 海の豆知識, 78. 池上隆仁, 2019. 微化石は過去の情報が詰まったタイムカプセル. 海の豆知識, 79. 池上隆仁, 2019. 白鳳丸南極航海記. 海生研ニュース, 142, 8-9.
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Research Products
(5 results)