2018 Fiscal Year Research-status Report
高親水性化学物質対応の新規パッシブサンプラーの構築とキャリブレーションの簡略化
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17K00543
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Research Institution | Research Institute of Environment, Agriculture and Fisheries, Osaka Prefecture |
Principal Investigator |
矢吹 芳教 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 主任研究員 (00360818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 智司 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30748934)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | パッシブサンプリング / 高親水性化合物 / 環境モニタリング / ネオニコチノイド / 1,4-ジオキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
高親水性であるネオニコチノイド系殺虫剤用に、POCIS(パッシブサンプラー)の受容相としてENVI-carbを、浸透膜としてPESを選定した。これらを組み合わせた新規PS の評価を行うため、Rs 算出のためのキャリブレーション実験を行った。実験はバッチ方式で行い、恒温槽内において20℃の条件下で実験を行った。攪拌はマグネチックスターラーで行い、400および1500 rpmとした。より環境条件に近かった1500 rpmの条件下において、ENVI-carbのニテンピラムを除くネオニコチノイド系殺虫剤についてのRsとして、0.101~0.182 L/dが得られた。これは従来の受容相であるHLBを用いた場合のRs(0.106~0.257 L/s)の同程度から7割程度の値であったが、受容相への吸着量が直線的に増加する期間はHLBの3~14 dからENVI-carbでは7~28 dに増加した。したがって、ENVI-carbを使用することにより、従来のPOCISよりも長期にわたり測定が可能となることが明らかとなった。 また、高親水性化合物として、1,4-ジオキサンの受容相の選定を実施した。まず、活性炭系、グラファイト系、樹脂系の吸着剤を検討の対象とし1,4-ジオキサンに対して高い吸着能を持つ吸着剤の探索を行った。ガラス遠沈管に吸着剤10 mgと1 mg/Lのジオキサン水溶液を入れ、24時間振とう後、物質の吸着の強さを表す吸着係数Kdを算出した。次に選定した吸着剤を用いて片面をふさいだPOCISを使用した水槽曝露実験を行った。Kdは活性炭系で比較的高かったが、最高でもSep-pak AC2の1000 L/kg程度であった。POCISの片面をふさぎ、シリコーン膜を貼ることで7日間、概ね直線的な濃度上昇を得ることができた。 また、フィールドでの実験を行い、POCISとグラブ法が近いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では、2年目に1年目に選定した受容相および浸透膜を各々組み合わせた新規PS の評価を行うため、それらを用いて随時Rs 算出のためのキャリブレーション実験を行うこととしており、今年度はこの計画を着実に進捗した。また、2年度には、ネオニコチノイド系殺虫剤に加えて、1,4-ジオキサンに適した吸着樹脂の選定を行うことを計画しており、これも計画通りに遂行している。また、フィールドでの実験も予定通りに遂行しているため、本研究は(2)おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目まで予定通りに進捗しているため、3 年目は計画通りの研究を実施する。ネオニコチノイド系殺虫剤および1,4-ジオキサンのRsを求めるキャリブレーション試験について、10℃および30℃を追加し、環境水中で想定される水温内での水温依存性を解析する。また、新規受容相および浸透膜における化学物質の透過・吸脱着速度を物質輸送モデルに入力し、これまでに算出したRsとの関係を解析する。この結果から、受容相および浸透膜と化学物質の物性からRsを導出する方法の開発を試みる。2年目と同様にフィールドワークにより、新規POCISにより算出される平均濃度とグラブサンプリングによる平均濃度の比較を行い、新規POCISの有用性を評価する。
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