2019 Fiscal Year Research-status Report
新規修飾型D-ドーパクロムトートメラーゼ関与による傷害肝内ネットワークの解明
Project/Area Number |
17K00568
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
日吉 峰麗 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (30363162)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | D-ドーパクロムトートメラーゼ / 四塩化炭素 / 肝傷害 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に入り、これまで長期にわたり不明であった、D-ドーパクロムトートメラーゼ (DDT)に対する新規修飾物質の正体が明らかになり始めたことから、修飾物質の解明を中心に研究を展開した。 現在まで、四塩化炭素、エタノール、アセトアミノフェンを用いて、培養肝細胞に傷害を誘導してきた中で、明確に新規修飾を検出できたのは、四塩化炭素のみであった。そこでこの新規修飾が、四塩化炭素を含む有機塩素化合物で特徴的にみられるものであるかを明らかにする目的で、培養肝細胞に四塩化炭素以外の有機塩素化合物であるクロロホルムを添加したところ、同様の修飾が検出された。 有機塩素化合物が体内で代謝される際に生じる様々な産物がDDTに修飾しても、質量分析で検出されるサイズに合致しないことから、現在までの見解では、この物質は、四塩化炭素もしくはクロロホルム由来の代謝産物が直接修飾したものではないという考えが支配的であった。しかしながら、この修飾物質が結合したペプチドをさらに断片化して質量分析を行うタンデムマス分析の結果を詳細に読み進めていく中で、有機塩素化合物由来の代謝産物と生体内由来の低分子化合物Xが組合わさった状態でDDTに結合している可能性が、強く示唆された。 本課題を進める中で、ラット四塩化炭素傷害肝から、高純度のDDTを既に精製済みであったことから、精製した未修飾型のDDTと、修飾型のDDTを電気泳動法により分離後、低分子化合物Xに対するイムノブロッティング法による解析を試みた。その結果、修飾型のDDTにおいてのみ低分子化合物Xに対する反応が検出され、質量分析とは異なる原理による研究手法からも、修飾型DDT中に低分子化合物Xの存在を示す結果が獲得された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題にあるネットワークの解析という点において、十分なデータ獲得には至っていないことが理由ではあるが、同定困難と思われた新規修飾の正体に迫りつつある結果を獲得している点を考慮すれば、2019年度には大きな進展があった。
|
Strategy for Future Research Activity |
長期にわたり解明に至らなかった新規修飾について、現在では解決に迫りつつあり、かつ2020年度は最終年度に当たることから、新規修飾についてまとめたものを論文にするためのさらなるデータ獲得を中心に研究を進める。 具体的には、組織、もしくは細胞から抽出したすべてのタンパク質を二次元電気泳動により、単一のタンパク質としての分離を行った後で、低分子化合物XとDDTに対するイムノブロッティングを行い、同じスポットとして検出されるか明らかにする。さらに、エタノールやアセトアミノフェンによる傷害では、イムノブロッティングにより低分子化合物Xが検出されないものと推定されるが、この点についての確認も行う。 さらに本課題で提案しているように、DDTの活性がこの新規修飾によりどのように影響するか、培養細胞を用いて明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
2019年度は、新たに講義の一部を担当することとなり、研究計画の時点では想定していなかった講義の準備に費やす時間が増えたことで、十分に実験に時間を割くことができなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。 使用計画としては、論文に必要となる追加のデータ獲得のため、また、英文校閲等に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)