2017 Fiscal Year Research-status Report
天然および人工由来の臭素化ビフェノールのヒト曝露と体内動態研究
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17K00574
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
原口 浩一 第一薬科大学, 薬学部, 教授 (00258500)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 海藻 / ヒト / 臭素化合物 / 残留 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 海藻食品中の臭素化ビフェノール(OH-PBDE)の分析法として、従来のGC-MS(ECNI)による分析に加えて、LC-MS/MS(ESI)による方法を確立した。すなわち、試料から脂肪分を除いた後、KOH/EtOH溶液とヘキサンで分配し、フェノール分画をLC-MS/MSのESI法でイオン化しMRMによる定量法を確立した。また、そのメチル化体(MeO-PBDE)および人工の残留性臭素化合物は、GC-MS(ECNI)により分析する系を確立した。 2. 海藻食品として日本産および韓国産ひじき(Sargassum fusiforme)、アカモク(S. horneri) 、アラメ(Eisenia bicyclis)、台湾産ヒイラギモク(S. ilicifolium)、カリフォルニア産(S. muticum)、フィリピン産(S. oligocystum)を分析した結果、OH-PBDE類の主成分として6-OH-BDE47などの成分が日本産および韓国産のS. fusiforme に最大2μg/g dryで生産されていた。台湾産やフィリピン産でもOH-PBDEおよびMeO-PBDEが検出された。この結果、日本人の食事によるOH-PBDE 曝露の一部は食用海藻 (S. fusiforme) の加工品に由来すると考えられた。 3. 京都大学ヒトサンプルバンクを用いて、OH-PBDEの食事曝露量とヒトの血液・母乳中のOH-PBDE量の実態を調べた。食事由来のOH-PBDEは主に海藻食品から、MeO-PBDEは魚介類に由来すると考えられた。日本ではS. fusforme の加工食品が流通しており、そのヒト曝露量は地域差が見られ摂取量に依存すると推測される。日本人の血液・母乳から人工PBDEと同レベルのPBDEが検出されており、現在そのデータを検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト血液・母乳試料中からOH-PBDEを検出し、その定量データを検証中で、追加試料による実験が残っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 海藻(乾燥ひじき)から抽出したOH-PBDEおよびそのメチル化体について、マウス肝およびヒト肝ミクロゾーム(P450)分子種による代謝反応を行なう。それぞれ代謝物をLC-MS/MSにて同定するとともに、その代謝に関与するP450分子種を特定する。同時に、マウス腸内細菌によるMeO-PBDEの代謝活性化機構を解明する。さらにCaco-2細胞を用いてOH-およびMeO-PBDEの腸管膜透過性を評価する。 2. 海藻成分として特定した6-OH-BDE47, 2-OH-BDE68, 2,2’-dihydroxy-BB80, 2’,6-dihydroxy-BDE68 およびそれらのメチル化体(合計8化合物)の抽出液および化学合成品について、(1) 抗酸化活性:①DPPHラジカル消去活性, ②ORAC法から抗酸化能を測定し、他のフラボノイド系の抗酸化能と比較評価する。(2) 抗菌活性:標準物質および海藻OH-PBDE抽出液に接種したグラム陽性菌およびグラム陰性菌の抗菌スペクトルを作成し、発育阻止濃度(MIC μg/mL)を求める。 (3)グルコシダーゼ阻害活性:OH-PBDE 関連物質について、パン酵母およびラット小腸α-グルコシダーゼとの反応阻害率を評価する。 3. ヒトOH-PBDE 摂取量、ヒト血中および母乳濃度をデータベース化するとともに、海藻由来OH-PBDE と類似する人工由来化学物質(トリクロサンおよびペンタクロロフェノール)および臭素系難燃剤(PBDE, HBCD)についてヒト血液、母乳の残留経年変化(2000-2015年のサンプル)を調べ、天然OH-PBDE 濃度と比較し、それらの長期残留トレンドを予測する。
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Causes of Carryover |
ヒト血液・母乳の分析結果の検証が遅れている。これにかかる追加実験の費用およびサンプル収集の旅費および分析費用を次年度に支出予定のため。
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