2018 Fiscal Year Research-status Report
母体腸内細菌叢の変化を介した小児期肥満発症メカニズムの解明
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17K00577
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
櫻井 健一 千葉大学, 予防医学センター, 准教授 (80323434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江口 哲史 千葉大学, 予防医学センター, 助教 (70595826)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / DOHaD説 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎児期における子宮内環境が、成人期の健康障害に関与していることが示唆されている。これは、Developmental Origin of Health and Disease(DOHaD)説として知られている。そのような疾患の中で成人期の肥満においてもDOHaD説のように胎児期環境が関与していることが報告されており、胎児期からの肥満発症メカニズムの解明が必要とされている。成人の肥満は小児期の肥満と関連することが示されており、胎児期環境因子→小児期肥満→成人期肥満といった一連の流れとして解析あるいは対策を行なっていく必要がある。一方、腸内細菌叢の変化が肥満の発症に深く関与するとの報告もあり、肥満の環境因子としての腸内細菌叢にも注目が集まっている。 本研究は環境化学物質を含む母親の環境要因が妊娠中の腸内細菌叢に与える影響、さらにその変化が児の体重変化あるいは肥満発症に与える影響を明らかにすることを目指すものである。具体的には、コホート調査により得られた妊娠女性の血液中PCBを含めた環境要因、妊娠中の母体腸内細菌叢、出生体重や臍帯血レプチン・インスリンとの関連を明らかにするとともにコホートの追跡により、小児の肥満との関連を検討する。 本年度に昨年度に行なった母体の腸内細菌叢解析および本年度引き続き行なった糞便メタボローム解析の結果を用いた検討を行なった。本年度の解析では母親の妊娠中腸内細菌叢の多様性が男児では出生時の頭囲と相関することが示された。また、菌叢を属レベルで解析したところ、一部の属が出生時の頭囲や体重と関連することが見出された。この影響は男女差があり、胎児期環境に対する反応性の男女差が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、母体妊娠中腸内細菌叢および糞便メタボローム解析、母体および臍帯血PCBレベル、臍帯血アディポカイン濃度といった分析項目の取得を完了することができた。これらの分析結果を用いて出生時の体格との関連を検討したところ、母体腸内細菌叢が出生時の体格に影響すること、この影響には男女差があることが明らかとなった。この結果は国際誌に論文として投稿し、現在印刷中の状態にある。また、母体血中PCBレベルと関連する腸内細菌叢についても予備的な検討を行い、一部の属が関連している可能性が得られている。以上より、順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は母体の腸内細菌叢と出生時の体格との関連を解析し、論文化することができた。次年度は今年度までに取得が完了している分析データを用い、さらに解析を進める計画である。児の出生時体格に加え臍帯血インスリン、レプチンなどとの関連を解析する。また、母体環境要因と腸内細菌叢との関連についてもさらに検討を進める。一部はすでに予備的な検討を行なっており、次年度は結果を確定し論文化を目指す。次年度は3歳半の調査票データも取得できる予定であり、妊娠中の状況と3歳半における体重やBMIとの関連も検討を試みる計画である。
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Causes of Carryover |
本年度は各データ取得の際に再検が少なく順調に進行したため、予算に残額が生じた。次年度は今までの研究成果をさらに詳細に解析し、腸内細菌叢と化学物質あるいは子どものアウトカムとの関連を明らかにするために予算を使用する。収集された3歳半の調査票データを解析に使用できる状態に整理する必要がある。これに関しては、人による作業が必要になるため人件費としての予算が必要である。また、現在までのデータを補完する分析が必要となるため、実験試薬あるいは血液検査委託費としての予算が必要となる。 前記のように次年度においては、取得済みデータの統計学的な解析あるいは、3歳半の質問票データ整理などを行う人員の人件費として次年度予算を使用する。また、いくつかの分析結果は補完のための実験や測定が必要であり、次年度予算を必要な試薬の購入及び血液検査依託費として使用する。
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Research Products
(5 results)