2018 Fiscal Year Research-status Report
Phonotypic plasticity in Daphnia: responses to environmental cues and disturbance by anthropogenic toxic chemicals on them.
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17K00584
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
坂本 正樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (20580070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時下 進一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (60266898)
眞野 浩行 (真野) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (40462494)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 表現型可塑性 / ミジンコ / 環境ストレス / 人為汚染物質 / 攪乱影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
「様々な環境ストレスに対して生物が見せる表現型可塑性の優先性を明らかにすること」および,「表現型可塑性の攪乱を介した有害化学物質の生態影響の評価」を目的とし,ミジンコ(Daphnia pulex)を用いた研究を進めている.ミジンコは酸素欠乏,被食リスク,餌不足等の環境ストレスに対して,それぞれ特徴的な形態的・生化学的応答(体液中ヘモグロビン濃度の上昇,防御形態への変化,ろ過スクリーン面積の拡大)を見せる.一方で,農薬類や重金属類を始め,多くの化学物質がそれらの応答の発現を撹乱し,低濃度の汚染であっても生態系構造や機能に影響を及ぼし得ることが懸念されている.本研究では,複合的な環境ストレスに対して変化する表現型の発現パターンを精査するとともに,環境ストレスと化学物質による複合的な生態影響の評価を目指して研究を進めている. 上記の環境ストレスの単独もしくは複合的な曝露に対する表現型の応答パターンはH29年度に検証した.これに加え,H30年度は人為的汚染物質の影響を明らかにするため,(1)金属類(銅,ニッケル)がミジンコの繁殖率に影響する濃度を調べ,銅については表現型の発現パターンの解明も試みた.その結果,銅はミジンコのろ過スクリーン面積の変化には影響を及ぼさないことがわかった.体液中ヘモグロビン濃度については現在分析を進めている.また,(2)ミジンコの防御形態の発現を促進する有機リン系殺虫剤(ダイアジノン)と抑制する金属(銅)の個体群レベル影響影響をマイクロコズム実験により検証したところ,ダイアジノンによる防御形態の発現促進が捕食者(フサカ幼虫)による被食率を低下させた可能性が示唆された.さらに,(3)ミジンコが生息する2つの貯水池(古洞池と綿内池)で定期調査を行い,池の水質やプランクトン群集構造とミジンコの表現型の関係を調べた.(3)については現在サンプルの分析を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H30年度は,①人為汚染物質による表現型の発現撹乱パターンの解明(室内実験)および②野外個体を用いた環境評価に関する研究(野外調査とサンプル分析)を計画していた.どちらも十分に実験を進めることができた.ミジンコの体液中ヘモグロビン濃度の分析が一部完了していないが,データが揃い次第,解析を進める.また,H31年度に実施予定であった「表現型可塑性の撹乱による個体群動態への影響」についても,先行して実験を実施することができた.このように,当初の予定以上に順調に研究を進めることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度は当初の予定以上に研究を進めることができた.H31年度は最終年度にあたるため,これまでに得られた結果の精査(データ解析)を進めるとともに,必要に応じて再現性の確認と不足部分を補うための実験を行う.それらの結果をふまえ,生態学的知見に基づく化学物質の生態影響評価の必要性を検証する. 昨年末には,ミジンコの防御形態を誘導する情報化学物質(捕食者であるフサカが放出するカイロモン)の化学構造(N-Linoleoyl L-glutamine等の複数の物質)がドイツ・オランダの研究グループによって解明された(Weiss et al., 2018, Nature Chemical Biology 14: 1133-1139).カイロモンそのものは市販されていないが,同等の活性を持つと確かめられている物質(N-Linoleoyl glycine)は入手可能であるため,本研究でもこれを使ってこれまでに得られた結果の再現性を検証する予定である.
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Causes of Carryover |
水質分析(ICP-MS,イオンクロマトグラフィー,TOC計,TN-TP計)に必要なガス・試薬等の消耗品費が年度の後半まで必要になることを見越して1万円ほど残していたため,次年度使用額が生じた.H31年度も同様にガス・試薬等の消耗品を購入する必要があるため,消耗品費として支出する.
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Remarks |
代表者の研究室HP
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