2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of new data utilization method of mass spectra of black carbon using laser-vaporization aerosol mass spectrometer
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17K00590
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
藤谷 雄二 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (20391154)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ブラックカーボン / スス粒子エアロゾル質量分析計 / 質量スペクトル / 発生源寄与解析 / オープンバーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
大気エアロゾルに含まれるブラックカーボン(BC)は吸入による健康影響を引き起こし、また、気候に直接間接的に影響をおよぼすため、エアロゾルの成分の中で重要な成分である。本研究ではレーザー誘起白熱法でBCを蒸発させたのちに、電子衝撃法でイオン化し、高分解能型飛行時間型質量分析計で測定するオンライン測定装置であるスス粒子エアロゾル質量分析計(SP-AMS)を活用し、各種のBC発生源および環境中において、SP-AMSでBCの質量スペクトルを測定し、大気中BCの発生源寄与推定手法を確立することを目的とする。また、工業ナノ材料の一つである、カーボンナノチューブ(CNT)の吸入による健康影響が懸念されている。SP-AMSは、これまでにないリアルタイムかつ高感度のCNT検出法として期待されるが、大気エアロゾルに含まれるBCとCNTの識別するための手法を確立することを目的とする。二年目はプロパンガスの不完全燃焼により発生するスス粒子の測定、A重油ボイラの燃焼固定発生源における測定の機会を得てBCの質量スペクトルデータを取得した。また、解析対象をC16であったものをC66まで拡張し、主に稲わらのオープンバーニング由来のブラックカーボンの識別を目的に、発生源のデータ解析および稲わらのオープンバーニングが卓越する時期に得られたデータ解析を行った。発生源測定として得られた稲わらのオープンバーニングではmidC (C6-29)の存在比が高まり、環境中の測定で稲わらのオープンバーニングの影響を受けた場合にもmidC (C6-29)の存在比が高まったことから、midC (C6-29)の存在比はオープンバーニングの指標になりうることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H30年度は測定・解析対象(7)その他の発生源の測定を進めた。すなわちボイラ蒸気を得る為にA重油を燃料として燃焼させている固定発生源を測定する機会を得た(H29年度とは別の発生源)。さらに、プロパンガスの不完全燃焼により発生するスス粒子を測定した。測定時には、SP-AMSに加えて他のBC測定装置も並行して稼働した。さらにエアロゾルを石英フィルターに捕集し、元素状炭素としての熱分離法による分析も行った。 H30年度以前のデータの再解析も含め取得されたデータはC66までの解析を行った。lowC (C1-C5)、midC (C6-29)、fullreneC (C30-)に分類し、それらの存在比をブラックカーボン種毎に比較したところ、稲わらのオープンバーニングの結果で顕著にmidC (C6-29)の存在比が高まることが明らかになった。一方他の環境でのブラックカーボンの発生源であるディーゼル粒子や重油燃焼由来のブラックカーボンではその比は非常に小さいことが分かった。そこで、つくばで稲わらのオープンバーニングが盛んな時期に得られたデータ(2015年10月)の環境測定データを改めてC36まで解析し、さらにH29年度に確立したBCスペクトルも含めたPMF解析を行い因子分析を行った。バイオマスバーニングに関連する因子が抽出された。これは指標物質であるレボグルコサンやカリウムとの時間変化の相関が高く、これらの質量数の物質が因子に多く含まれることから判断した。この因子において、他の因子よりもmidC (C6-29)の存在比が高まり、発生源と同様の結果となったことからmidC (C6-29)の存在比はオープンバーニングの指標になりうることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、計画通りに推進してきている。引き続き(7)のその他の測定例を増やしていき、より幅広い発生源情報を蓄積していく。またスペクトルの類似性を評価する方法を考えていきたい。質量スペクトルと共に、炭素分析による熱分離のプロファイル、光吸収性の波長依存性の情報を組み合わせて、精緻な分離を目指していく。また燃焼発生源については燃料以外にも燃焼温度や酸素濃度によっても違いがないか、質量スペクトルの違いは何に起因しているのか等、先行研究の調査や実験的に確認していきたい。また、環境中でのオープンバーニング由来のブラックカーボンの寄与推定法について論文化を進める。
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Causes of Carryover |
半年間の企画部への併任に伴い、実験を行う機会が減り予定よりも初年度の支出が鈍った。使用計画としては、エアロゾル質量分析計を活用した研究成果のための学会参加の旅費、エアロゾル質量分析計関連の会議、およびエアロゾル質量分析計の修理代金や消耗品に充てたい。
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Research Products
(9 results)