2018 Fiscal Year Research-status Report
N2O同位体アナライザを用いた発酵残渣の品質と土壌のN2O生成反応との関係解明
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17K00594
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
利谷 翔平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80725606)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 亜酸化窒素 / 炭化物 / 自然安定同位体 / 水田 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾式メタン発酵で生成する残渣は水分が少ないため、炭化による土壌改良材としての利用が期待されている。一方、炭化物には土壌から発生する亜酸化窒素放出を抑制する作用があることが知られている。そこで、水田土壌から放出される亜酸化窒素の炭化物の添加による削減効果および削減メカニズムの推定をアセチレン阻害法およびN2Oアナライザーにより行った。炭化温度400 ℃, 500 ℃, 600 ℃の3種類のもみ殻炭化物を添加した土壌に脱窒の基質である硝酸を添加し、湛水状態で培養した。 土壌に炭化物(400 ℃, 500 ℃, 600 ℃)を施用すると、正味のN2O生成量は減少した。炭化温度が高いほどその効果は高く、正味のN2O生成量は最大42%減少した。N2O消費量については、有意差は認めれらないものの、炭化物を添加した系の方が、対照系に比べて増加する傾向が見られた。したがって、炭化物の添加は亜酸化窒素放出の抑制に効果的であることが分かった。 嫌気的な条件下で培養を行っているため、N2O生成反応は、脱窒反応が起こると推定される。すべての系において、SP(N2O 分子N-N-Oの中央のN (α位) と末端のN (β位) の同位体比 (15Nおよび14Nの比) の差, Site Preference) は脱窒反応で生成したN2Oを示す約-10~0‰となっていた。炭化物を加えた系のほうが高いSP値を示し、炭化温度が高いほどその傾向が強まっていることから、炭化温度が高い炭化物であるほどN2O還元反応(N2O消費)が起こっていると考えられる。 炭化温度が高い炭化物では表面積やpHが高くなっており、N2Oの炭化物への吸着や脱窒細菌の活性への影響が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜酸化窒素放出の削減効果の確認に利用したアセチレン阻害法は、脱窒によるN2O生成量とN2OのN2への還元量(N2O消費量)を分けて評価するために利用される一般的な方法である。炭化物の添加によりN2O消費の増加がみられたが、同時に同位体を計測することにより、N2Oの生成経路推定と生成したN2Oの還元を起こっていることを確認でき、N2O削減における炭化物の有用性並びにN2O生成経路推定における同位体計測の有用性を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
実際に乾式メタン発酵で得られる炭化物を利用して削減効果を明らかにする。湿式メタン発酵で発生する消化液と組み合わせた場合の効果も調査し、メタン発酵残渣の低環境負荷利用方法を検討する。さらに、分子生物学的解析手法も組み合わせてメカニズムの検討を行う。
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Causes of Carryover |
もともと購入を計画していた機材の購入がなかったため次年度使用額が生じた。次年度はもともと購入する計画だった物品に加えて分子生物学試験関連の物品の購入に充てる計画である。
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